国会議員にメタバース振興で提言
NPO法人バーチャルライツは8日、国政3政党の国会議員に対し、11月にオンラインコンテンツ文化の振興のための提言を行ったと発表した。
VR/メタバース文化の振興に向けて、政策議論を加速させていくことが狙いだという。
提言の内容は
バーチャルライツが提言を行ったのは、日本維新の会の音喜多議員、国民民主党の玉木議員、日本共産党の宮本議員の3名。以下の12項目について提言および意見交換を行った。
- 文化振興のための表現の自由について
- ネットゲーム依存症対策について
- 基礎研究含む科学技術予算の増額
- 産業競争力強化法の普及、改善
- 出会い系サイト規制法について
- VRに関係する政策の立案過程について
- 情報発信手段としてのバーチャルリアリティーについて
- VRに関係する公共事業について
- 男女共同参画について
- VR上での新しい権利について
- 匿名表現の権利について
- 福祉への活用について
提言の中では、ネットゲーム依存症対策を理由とした若者へのネット規制に警鐘を鳴らす記述や、法整備が追いつていないことによる法的リスクの指摘などが見られた。さらに、以下のようにVR・メタバース空間上における匿名表現の権利についても言及している。
匿名表現の自由が制限されインターネット実名制が標準となれば、アバターにも生まれながらの生物的性別や外見に紐付けが行われることになり、これはLGBTの人権問題としてしばしば言及されるアウティング(当事者の意に反する暴露)と同様の弊害をもたらすものとなり得る。
また、現実の社会的関係における障碍からの避難先としてのVR・メタバースの実効性・有効性であることを担保する為には、リアルコミュニティと紐づけられない権利も当然に認められるべきものであるから、今後の立法、また政策推進過程において匿名表現の権利を擁護するよう求めたい。
同提言の目的については、「オンラインコンテンツ文化、特にVR/メタバース文化の現状を俯瞰的に共有し、今後の議論の基礎とするため」と説明し、VR/メタバースなどおのオンラインコンテンツ文化に立法や行政が追いついていない現状を指摘している。
また、「本来のVR/メタバースとはかけ離れた業種の団体がメタバースを称して活動する事例が散見される」ため、議員に適切な理解や政策議論の推進を促す狙いもあるという。
各議員の意見
- 日本維新の会政調会長 音喜多議員
「表現の自由」について、多くの政党が公約に取り入れているものの「とりあえず入れておこう」と考えている政党が多く、別の権利などとのぶつかり合いによってはひっこめてしまう場合がある。深く表現の自由を理解した議員を増やしていくことが重要。
VR/メタバースはまだまだこれからの分野であり、まだまだ分からないところがある。拡散が容易な動画などがあればより仲間を増やすことができると思う
- 国民民主党代表 玉木議員
表現規制はやめたほうが良い、税金を使うからどうこうという話もあるが行政が善悪の判断をしないほうが良い。
(VRについて)これからの分野なので自主規制やガイドラインが望ましく、法規制で芽を摘むのは良くない。
- 日本共産党中央委員 宮本議員
(香川県ネットゲーム条例について)家庭での生活のあり方に関して公権力が介入することはあってはならない。
メタバース関連の国内動向
メタバースなどの市場において、行政などに適切な理解や法的枠組みの作成を促す動きが見られる。
7日、FXコインなど国内の暗号資産(仮想通貨)交換業者を中心としたメタバースの業界団体「一般社団法人日本メタバース協会」が発足することが明らかになった。
同協会の設立は、各国の動向を研究するほか、官公庁とのコミュニケーションを深め、日本企業がメタバース市場で活動しやすくなるよう地盤を固めていく狙いがあるとする。
関連:「メタバース先進国を目指す」、国内仮想通貨交換業者らが協会設立へ
Meta(旧称:フェイスブック)をはじめ、マイクロソフト、ナイキなど大企業が事業参入を進めるメタバース分野であるが、日本も例外でない。
ソフトバンクビジョンファンドが「The Sandbox」や「Zepeto」などに巨額の出資を行い、KDDIと一般社団法人渋谷未来デザインが「バーチャル渋谷」構想を発表したほか、JR東日本は今年3月に「Beyond Stations構想」を発表している。
規制の必要性を含め、喫緊の課題となっている。