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NFTの課税問題について(1)|寄稿 暗号資産税制の研究者が重要ポイントを解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

NFTの課税問題

NFTに関する課税問題について、千葉商科大学准教授である泉 絢也氏の寄稿コンテンツを二回に渡ってCoinPostで掲載。

第一回としての本稿では、「①NFTの譲渡による所得は譲渡所得に該当するか」、「②譲渡益は非課税、譲渡損はなかったものとされるか」について。

第二回では、「③NFTを譲渡して損失を計上した場合の課税リスク」、「④アーティストが創作したNFTをGiveawayする場合に、アーティストの側に課税が発生するか」に関するコンテンツの配信を予定している。

寄稿者:泉 絢也Junya IZUMI

千葉商科大学准教授・博士(会計学)

中央大学ビジネススクール非常勤講師

(一社)アコード租税総合研究所研究顧問

2018年より、暗号資産税制の研究を開始して以来、毎年、各国の税制との比較など、同税制に関する書籍や論文を立て続けに発表。AIと租税法、ロボット税の研究にも従事。

はじめに

NFT(ノンファンジブルトークン)の取引が徐々に活発になっています。NFTを製作・売買等する個人の方については、自身の税金がどのようになるのか、NFTを取引することでどのような課税関係が生じるのか、不安に感じることも多いでしょう。

不安を煽るつもりではないのですが、例えば、年末になって駆け込み的に、保有するNFTを他人に安く譲渡し、損失を計上する動きや、これを手助けするようなサービスを提供する行為もみられます。しかしながら、このような損失については、意図したとおりに、他の所得と通算したり、利益の調整に用いたりするような処理が認められるのか、議論の余地があります。税務署に否認されるリスクも十分あると考えます。

現在のところ、NFTの税金について個別に明記した税法の条文はなく、国税庁のガイダンスも発行されていないため、NFTという新しいものの課税関係について、税理士も、税務署も確定的な回答を提供するのが難しいと思います。正しい税額よりも少ない額の申告や納税を行うとペナルティが課されるというリスクがありますので、関係者は悩ましい問題に直面しているといえるでしょう。

そこで、この記事では、NFTの課税関係について、少し掘り下げて考察します。もちろん、この記事と異なる見解が存在することも考えられますし、実際に国税庁がどのように考え、税務調査等でどのような指摘を行うのかは明らかではありません。種々の法的見解があり、かつ、事案によって異なる事実関係が存在する中で、最終的には裁判所で決着されることもあるでしょうし、立法的に解決することが望ましい論点も存在するでしょう。

この記事で示した見解に従って申告することにも一定のリスクが存在します。しかしながら、この記事を読んでくださっている方々が申告するに当たって、あるいは、今後、国税庁がNFTのガイダンスを作成するに当たって、議論のたたき台となる見解を示すことには意味があると考えています。

税制がNFTの発展を阻害することを防ぐためには、関係者が協力して、早くから問題点を浮き彫りにし、解決のために動きだすことが重要ですので、この意味でも、議論のたたき台となる見解を早期に提供したいと考えています。

考察の前提

NFTについての一般的な説明や税法以外の民法・著作権法等の法律関係については説明を省略しますが、暗号資産や有価証券等には該当しないNFTを前提として、考察を進めることにします。

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また、この記事では、アートに紐づいたNFTの例をとりあげ、ブロックチェーン上でやりとりされる代替性のないデジタルトークンといわれるNFTは、次のいずれかの権利を表章するものであることを前提にしています。

  • 「NFTに紐づけられた実物絵画の所有権」
  • 「NFTに紐づけられたデジタル絵画を利用する権利(ただし、権利の移転ではなく、地位の移転と考えるべき場合もあるかもしれません)」

課税関係を考える場合に、NFTに紐づけられた資産や権利に着目すべきでしょうか。あるいは、これらを表章し、ブロックチェーン上でやりとりされるNFTに着目すべきでしょうか。

NFTには、その価値の裏付けともいうべき資産が存在し、例えば、NFTを売買するといった場合に、取引の当事者は、究極的にはその裏付け資産又はこれに係る権利を取引の対象又は売買の目的物として考えているともいえます。当事者の意思やNFTの価値の源を考慮すると、基本的には、NFTに紐づけられた資産や権利に着目して、課税関係が構築されるものと解されます。この辺りは、資金決済法上の暗号資産の課税関係と異なる要所ともいえるでしょう。

他方、収入や費用の計上時期など特定の課税関係を考える場面では、NFTというトークンそのものに着目することや、コンテンツのデータ等がオンチェーンであるか、オフチェーンであるかに着目することも考えられます。

NFTの譲渡による所得は譲渡所得に該当するか?

原則として、外部から経済的価値が流入すると所得課税が発生しますので、どんなものであるにせよNFTから収入が生じた場合には、個人であれば所得税の課税関係が生じると考えてよいでしょう。もっとも、所得税法に定められている10種類の所得のうちのいずれに該当するかによって、課税上の取扱いは異なります。以下では、NFTに関する取引の中でもポピュラーな売買取引を中心に個人の所得税の課税関係を考えてみましょう。

NFTの製作者が譲渡する場面ではなく、二次流通の場面を想定

(1)譲渡所得の要件

ある所得が譲渡所得に分類される場合、原則として、その資産の取得の日以後5年を超えて譲渡がなされたとき(長期譲渡所得に該当するとき)は、収入金額から取得費と譲渡費用を控除した後、最高50万円の特別控除額を控除できることに加えて、課税の対象となる金額が2分の1になります(所得税法22②二、33、同法施行令82)。よって、納税者から見れば、譲渡所得、しかも長期譲渡所得に該当すると税負担が抑えられるというメリットがあります。

ある所得が譲渡所得に該当するかどうかは、所得税法33条1項の「資産」該当性と「譲渡」該当性が重要な要件となります。この場合の「資産」とは「譲渡性のある財産権をすべて含む観念」であり、動産、不動産のほか、借地権、無体財産権、許認可によって得た権利や地位などが広く含まれます。「譲渡」とは、「有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む観念」であり、売買、交換、競売、公売、収用等が含まれます(金子宏『租税法〔第24版〕』265頁(弘文堂2021)参照)。

(2)譲渡所得該当性

まず、NFTとは無関係の実物絵画を個人が譲渡した場合の課税関係を確認します。

個人が他者の制作した実物絵画を譲渡した場合の譲渡益は、譲渡所得に該当します(所得税法33)。ただし、例えば、譲渡の経緯、期間、回数、数量、金額、相手方のほか、資金繰り、事業所等、広告・宣伝等の方法、保有目的、譲渡資産の取得及び保有の状況、譲渡者の職業などを総合考慮した場合に、当該個人が営利目的で継続的に売買していると認められるときは、譲渡所得ではなく、事業所得又は雑所得になります(同法27、35)

次に、「実物絵画と結びついているNFT」を譲渡する場合には、「NFTに紐づけられた実物絵画の所有権」を譲渡しているため、結局、上記のNFTを利用せずに実物絵画を譲渡した場合と同じ課税関係になると解されます。

所得税法33条1項の「資産」とは「譲渡性のある財産権をすべて含む観念」であり、「譲渡」とは、「有償であると無償であるとを問わず所有権その他の権利の移転を広く含む観念」であるという上記の理解を前提とすると、「デジタル絵画と結びついているNFT」を譲渡する場合も、「NFTに紐づけられたデジタル絵画を利用する権利」という資産を譲渡しているため、同じように譲渡所得になりうると解されます。

つまり、「実物絵画と結びついているNFT」を譲渡した場合も、「デジタル絵画と結びついているNFT」を譲渡した場合も、いずれも譲渡所得に該当しうるということになります。国税庁は、暗号資産については譲渡所得の基因となる資産とは考えていないようですが、NFTの場合は、その価値の裏付けともいうべき資産が存在するため、暗号資産と異なる課税関係になりうるのです。

なお、ここはもう少し検討が必要ですが、例えば、NFTの譲渡に際し、NFT保有者の有する権利が消滅し、製作者等が直接、新たに他の者に当該権利を設定する(デジタル絵画の利用を許諾する)ような仕組みがとられている場合には、所得税法33条の「資産の譲渡」該当性について、税務署と紛争が生じるかもしれません。権利の設定は所得税法33条の「資産の譲渡」に該当しないという論点になりますが、この点は、製作者等が最初にNFTを譲渡する場面にも当てはまる議論です。「資産の譲渡」に該当しない「地位の移転」であるという観点から、譲渡所得該当性が否定されるリスクも全くないとはいいきれません。

譲渡益は非課税、譲渡損はなかったものとされるか

NFTの譲渡は譲渡所得に該当すると述べましたが、話はここで終わりません。譲渡所得に該当する場合、譲渡所得の非課税規定の適用の有無と譲渡損がなかったものとされる規定の適用の有無を検討する必要があります。この先に分かれ道があり、NFTが実物絵画とデジタル絵画のどちらと結びついているかによって、課税関係が異なりうるのです。

譲渡所得の非課税規定について確認しましょう。譲渡した資産が、以下の要件のすべてを満たすと、譲渡益が非課税となります(所得税法9①九、同法施行令25)。

  • ①自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供するものであること
  • ②生活に通常必要な動産であること
  • ③貴金属等(※1)又は美術工芸品等(※2)に該当しないこと、あるいは、これらに該当する場合に1個又は1組の価額が30万円以下であること
  • (※1)貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べっこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
  • (※2)書画、骨董及び美術工芸品

実物絵画又は「実物絵画と結びついているNFT」を譲渡するケース

実物絵画の譲渡益は、譲渡時の時価が1つ30万円以内であれば非課税であると、少なくとも実務上は解されています。ここでは、絵画は、上記①の自己等が「生活の用に供する」ものであるという要件と②の「生活に通常必要な」動産であるという要件を満たすものであるという前提が存在している点が注目されます。

ただし、このように譲渡により利益がある場合は非課税である一方で、譲渡により損失がでる場合(資産の譲渡による収入金額がその資産の取得費及び譲渡費用の額の合計額に満たない場合)には、その損失相当額はないものとされます(所得税法9②一)。他の譲渡益や他の種類の所得との通算はできません。

他方、時価が1つ30万円を超える実物絵画の譲渡益については、通常どおり課税され、譲渡損については、他の譲渡益との通算はできますが他の種類の所得との通算はできません(所得税法69②、同法施行令178①三)。

「実物絵画と結びついているNFT」を譲渡する場合も上記と同じ課税関係になると解されます。

「デジタル絵画と結びついているNFT」を譲渡するケース

「デジタル絵画と結びついているNFT」を譲渡する場合、上記と異なる課税関係が生じる可能性があります。所有権の客体は物であり、不動産以外の物を動産といい、物とは有体物をいい(民法85、86②、206)、かつ動産は有体物に限定されるという理解を前提とするならば、有体物ではないデジタル絵画に対しては所有権を観念できませんし、デジタル絵画を含むデジタル絵画はデータですから、無体物であって動産に該当しません。この点でNFTが実物絵画と結びついている場合と状況が異なるのです。

さて、譲渡益が非課税となり、譲渡損がなかったものとされる規定の要件の中に、②の生活に通常必要な「動産」であることというものがありました。「デジタル絵画と結びついているNFT」の譲渡は、「NFTと結び付いているデジタル絵画を利用する権利」を譲渡していることになりますが、デジタル絵画、これを利用する権利、NFTのどれをとっても「動産」には該当しないので、上記の規定の適用はありません。

この先も考察は続くのですが、結論を簡単に述べますと、「デジタル絵画と結びついているNFT」の譲渡による所得については、所得税法9条1項9号の譲渡益非課税の適用はなく、時価が30万円を超えるか否かにかかわらず、その譲渡益は課税対象となり、その譲渡損は他の譲渡益との通算はできるものの他の種類の所得との通算の制限等がかかる可能性があります。

最後に

所得税法9条1項9号の非課税規定は、昭和25年の改正で創設された規定です。この規定は、戦後のインフレ期という経済情勢を踏まえて、家にある家財や衣類などを少しずつ売って、何とか食いつないで生活(筍生活)していくような場合を念頭に、そのような場合における家財や衣類等の譲渡から得た利得に対して課税するのは不穏当であるため、非課税とする趣旨で設けられたものです。

しかしながら、今日においてその趣旨はやや時代に合っておらず、同号の存在意義はむしろ、所得税法9条2項1号において、生活の用に供していた一定の動産を譲渡した場合に生じる譲渡損を課税上無視することにあるという説明が妥当かもしれません。

規定の趣旨からすれば、非課税の対象を生活用の「動産」に限定することにも理由があります。しかし、NFTの登場により、デジタル資産を保有し、譲渡する取引が広がりつつある中で、このような「動産」に限定する規定によって、実物資産とデジタル資産の課税上の取扱いを異にすることが妥当であるか否かについては、議論の余地があるでしょう。

今後、NFTの譲渡による所得を譲渡所得に該当するという見解を採用することはケースによってリスクがあると考え、安全のために雑所得で申告する納税者もでてくることが予想されます。国会や国税庁による早急な対応が待たれます。

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