「産業振興を進める議論を」
自民党の藤末健三議員は16日、参議院・財政金融委員会にて暗号資産(仮想通貨)やWeb3.0におけるNFT(非代替性トークン)の税制について質疑応答を行った。仮想通貨納税における分離課税の導入や、産業促進の観点から文化庁と経産省への協力を呼びかけた。
藤末健三議員(@fujisue)は、経済産業省や東京大学助教授を経て、2004年に政界進出した参議院議員。ハーバード在学中にはプロボクシングのライセンスも取得するなど独特な経歴を持つ。
また、暗号資産・ブロックチェーン業界に造詣の深い日本維新の会の政調会長である音喜多 駿議員(@otokita)とともにコミケで演説したり、クリエイター支援のための精力的な活動でも業界内外から高い支持を得ている。
このようにNHKで放映されない国会質疑でも「霞が関TV」で各省庁の課室で見られています。特に財務大臣の発言は注視され、この質疑は財務省だけでなく多くの省庁で見られており、#創作文化 や #同人誌文化 に対する役所の理解が深まます予算要求にも繋がります。#表現の自由を守る参院選2022 https://t.co/JqRrZQi70E
— 参議院議員 藤末健三(全国比例区)@3/20 ガタケット170 (@fujisue) February 27, 2022
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先週11日には、自民党の塩崎彰久議員が衆議院の財務金融委員会にて、Web3.0に関する政府の対応について質疑応答を行なった経緯がある。
Web3.0とは
現状の中央集権体制のウェブをWeb2.0と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。代表的な特徴は、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。
▶️仮想通貨用語集
自民党では22年1月、党内の「デジタル社会推進本部」がNFT(非代替性トークン)政策検討プロジェクトチームを設立。これを皮切りに国会における仮想通貨・ブロックチェーン及びNFT(非代替性トークン)の将来性について言及するなど、国の成長戦略の一環として取り入れようとする動きが増加している。
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財政金融委員会の質疑内容
本日開催された参議院・財政金融委員会では、藤末議員が暗号資産(仮想通貨)やNFTに関する質問を積極的に行なった。
NFT税制法整備について
藤末議員は、「ブロックチェーン技術により、GAFAなど米大手企業によるデータの独占が見られたWeb2.0から、情報の分散管理が可能なWeb3.0というシステムへの移行が可能になった」と評価。その反面、Web3.0領域の一部である「NFTの税制面が十分に追いついていない」と指摘した。
藤末議員は、「日本が、マンガやアニメ、ゲーム業界においてコンテンツ産業が世界に対して価値を提供している」と述べ、「日本のコミック(単行本など)の売り上げが海外市場で5,000億円を突破、アニメーションの売り上げは海外で1兆円規模を超えている」とコメント。
この点を踏まえ、NFTとしてイラストなどの絵をデジタルアートとして販売することで、イーサリアム(ETH)などの仮想通貨決済で世界中に販売することができると説明した。
しかし、NFTにおける煩雑な納税計算が、日本のクリエイターのボトルネックになっている点も指摘。税務署の職員ですら理解が追いついておらず混乱を招く事例もあるとして、税制の整備の必要性について財務省に見解を尋ねた。
これについて、財務省の住澤 整主税局長は、以下のように回答した。
議員がご指摘のNFTにつきましては、従来の暗号資産のように、取引業者が年間における「取引報告書」を納税者に提供して、それに基づいて納税者が申告するという仕組みが(現時点では)整備されていないのが現状でございます。
そのため、NFTを使っている納税者がご自身で納税金額を計算して納税するということで、この対応が難しいとのご指摘かと思います。こういった点については、暗号資産の例なども参考に、関係省庁において申告に関する情報の広報や周知を行なっていただき、納税者の方々が適正に申告できる環境を整備、というのが検討されることが必要と考えております。
国税庁におきましては、NFTの取引にかかる課税関係についてきちんとわかりやすく示そうと、丁寧にわかりやすく周知・広報を行なっていく方向で検討していることと承知いたしております。
仮想通貨の分離課税を提案
これについて藤末議員は、「制度そのものを変えるべき」と指摘。仮想通貨税制の「総合課税から分離課税」への変更と、米国の法案提出事例を参照した少額決済における仮想通貨決済の免税措置の導入を提案した。
住澤整 主税局長
まず、FT(ファンジブルトークン)の一種である暗号資産の取引に係る取引の取得につきましては、外国通貨の為替差益と同様、原則的に雑所得として総合課税の対象になるのが現在の扱いとなります。
上場株式等につきましては、税制の中立性や簡素性、そして執行の適正な確保や貯蓄から投資への政策的要請や機関投資家の投資しやすい税制の構築などの観点から、20%の分離課税が採用されています。
一方、暗号資産の取引による所得に20%の分離課税を採用することにつきましては、給与所得や事業所得などの他の所得とのバランスについて、ご理解を得られるかといったことや、株式のように家計が暗号資産を購入することについて、国として政策的にどういう風に考えていくかといった点について、所管省庁に考えていただいた上での検討が必要であると考えております。
また、米国で暗号資産の少額決済を免税する法案が提出された点についても、非課税措置を講じる必要性について、まず関係省庁においてご検討をいただいた上で、暗号資産から生じた所得と他の所得のバランスなど、課税の公平性との観点を踏まえた検討が必要であると考えております。
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経産省にも呼びかけ
この回答に応じる形で藤末議員は、「経済産業省でWeb3.0に関する議論を進めるべき」と発言。「財務省や財務省、金融庁では(規制官庁であるため)前向きな議論は難しい」と理解を示した上、産業振興の観点から、経済産業省内での検討を求めた。
経済産業省 龍崎孝嗣 大臣官房審議官
ブロックチェーン技術の進展により、暗号資産やNFTを活用した”トークンエコノミー”と称される新たな経済活動が生まれてきておりまして、その結果として、商取引や資金調達の在り方、それから企業組織、強いては産業構造自体が大きく変わり得るという見方もあります。
実際に、インターネット上で提供されるサービス分野では、分散型金融サービスを提供する韓国のスタートアップなど、GAFAMなどの既存プラットフォームを介さずに付加価値を生み出す様々な事業・スタートアップが生まれつつございます。
また、トークンの一部であるNFTは、アートやデジタルコンテンツの市場層図だけではなく、ファッションやスポーツ、地域の観光資源など、リアル資産の価値の顕在化、そして新たな収益分配実現の観点から実用が期待されております。代替性のあるトークンにつきましても、決済手段としてだけではなく、海外のスタートアップでは株式に変わる新たな資金調達手段としても利用され始めております。
一方で、これらの領域は世界的に見ても、非常に新しいものでございまして、その発展に向けて障害となり得る課題が様々あれば、経済産業省としてもしっかり対応する必要があると思ってます。
例えば、ファッションやスポーツの分野では、現在、実証事業を行っておりまして、正当的な課題を含め、整理をしているところでございます。今後とも、こうした新しい動きを”経済成長のチャンス”と捉えまして、民間からの様々な創意工夫を促進していけるよう、関係省庁と連携して取り組んで参りたいと思います。
コンテンツ領域におけるNFT活用
最後に、藤末議員は、コンテンツ分野において搾取されやすいクリエイターが、自身の創造物を直接世界に提供する機会を可能にする”NFT”などWeb3.0領域は「個人をGAFAの楔から解放」するとコメント。優秀な人材や企業の海外流出事例が危惧される中、クリエイター個人への支援の観点から文化庁の見解を伺った。
文化庁 中原裕彦 審議官
ご指摘の通り、近年我が国のコンテンツ分野において、NFTを活用した取り組みが増えており、デジタルアートの署名書を付して流通させ、高付加価値化する取り組みが展開されていると承知しております。
ブロックチェーンを活用することで、デジタルコンテンツの講評や取引機会の拡大などで意義があると考えられる一方で、権利関係が明らかでないコンテンツの流通など、「信頼性」における課題も認識されています。
文化庁としてはこのような課題を認識しつつ、NFTを活用したクリエイターへの収益還元や文化財を活用した地域活性策を含め、文化技術振興の観点から有効な活用策の促進について前向きに検討して参りたいと考えております。
マンガ、アニメ、ゲームは世界に誇る日本文化であるとともに、我が国のコンテンツ産業においても、重要な位置を占めております。
これを支えるクリエイターの支援はご指摘の通り、重要な課題だと認識しております。
なお、藤末議員は上述の平将明議員を座長とするNFT政策検討プロジェクトチームがレポートを策定中であると説明。完成した際には、経産省にも提出すると述べた。
また、経産省はアート・ブロックチェーン企業のスタートバーン株式会社に委託する形で目下NFTを利用した実証実験(ファッション展示会)「SIZELESS TWIN」を実施中。ファッション領域におけるNFT利用を販売する形で、メタバース内でも利用可能な「ユニークピース」を提供する。
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