1万人の小売ユーザーを選定予定
タイ中央銀行(BOT)は5日、小売業向けの中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発範囲を拡大する方針を発表。年内にも民間セクターと協力して、限定的な試験運用を実施する方針を明かした。
BOTは、2020年からCBDCの実証試験を行っており、この段階で試験としていくつかの大企業との金融取引に使用していると明らかにしていた。今回さらに一歩、開発を前進させる形だ。
小売業向けCBDCには、Giesecke+Devrient社が開発したシステムが採用され、2022年末から2023年中頃にかけて試験運用が行われる予定。BOTとアユタヤ銀行、サイアム商業銀行、2C2P(タイ)によって10,000人のユーザーが選定され、商品やサービスの支払いなど現金と同様の活動を行うために使用される。
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試験は「技術的な設計を含むシステムの効率と安全性を評価」することが目的で、CBDCのユースケース開発を促進し、顧客向けの新しい金融サービスをもたらすプログラマビリティに焦点を当てるイノベーショントラックも実施される計画だ。
BOTは、今回の試験運用は、あくまでも研究開発の一環であると強調。現時点では、小売業向けCBDCの正式発行計画は存在しないと説明している。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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なお今回の発表では、民間企業や一般人が参加できる「CBDC ハッカソン」の開催も告知された。
小売業向けCBDCのビジネスユースケースを発表する場になる予定で、選ばれた参加者またはチームは、Project Inthanonから金融機関の経験者による指導を受けることができる。
日本でも実証試験が進行中
2022年現在、CBDCの開発や研究は世界各国で盛んに行われており、国際決済銀行(BIS)は5月に発表したレポートで、2021年時点で、(調査に回答した銀行のうち)約90%の中央銀行が何らかの動きを行っていると報告した。
開発またはパイロットテスト(試験運用)している中央銀行は26%に達し、6割が試験や概念実証を行っているとBISは説明している。
CBDCに関する議論が特に活発なのが米国で、6月には同理事会ののジェローム・パウエル議長が、CBDCを「非常に重要な金融技術イノベーションだ」と述べ、今後数年間で、政策面と技術面の両方からCBDCについて検討し、その上で議会に推奨事項を提示する計画を明かした。
一方反対意見もあり、米議会では、プライバシーの懸念から個人向けのCBDCに反対する法案も、複数提出されている。
また日本でもCBDCに関する研究は進められており、4月には、実証試験の「フェーズ2」が開始された。
この試験は、フェーズ1で構築した実験環境に新たなCBDCの周辺機能を付け加え、実現可能性やシステムの処理能力等について実機検証などを行うというもの。並行して、パイロット実験に関する検討や要素技術の調査・研究、そして海外動向のフォローも行うことが公表されている。