シンガポール金融管理局(MAS)、仮想通貨の個人投資家に対する規制強化方針を示す

シンガポールで暗号資産取引規制案

シンガポール金融管理局(MAS)のラビ・メノン長官は29日、暗号資産(仮想通貨)規制の強化方針を示した。

「個人投資家が、仮想通貨取引リスクについて想定以上に無関心」だとして、個人投資家の仮想通貨取引に新たな規制を加える可能性があることを示唆した。レバレッジ(証拠金取引)・信用枠の利用制限も含まれる。

MAS(Monetary Authority of Singapore)は、シンガポールの中央銀行に相当する金融機関だ。

MASのマネージング・ディレクターであるラヴィ・メノン氏は19日、「シンガポールをデジタルアセットのハブにする」ための構想について言及。デジタル資産のイノベーションを支援する考えを示していた。

暗号資産(仮想通貨)業界の主要プレーヤーをシンガポールに引き付けたい思惑がある。MASはシンガポールをフィンテックの中心地として推進し、分散型台帳技術(DLT)に関する調査を進める過程で有望なユースケースにおける可能性を模索している。

すなわち、革新的かつ責任のあるデジタル資産のエコシステム(経済圏)をシンガポールに確立することだ。

この一環として、例えば国際決済分野では、米大手投資銀行のJPモルガン、シンガポール最大手DBS銀行、政府系の国有投資会社のテマセク・ホールディングスのジョイント・ベンチャー(合弁企業)である「Partior」の事例など、ブロックチェーンを基盤技術とする機関投資家を含む大口顧客向けの決済ネットワークを構築。

資本市場では、シンガポール証券取引所(SGX)とテマセク・ホールディングスのジョイントベンチャーである「Marketnode」が、ブロックチェーンを活用して資産をトークン化することを目指している。デジタル化した有価証券をブロックチェーン上で発行して資金調達を実施する「STO(Security Token Offering)」など、イノベーションの大きな可能性を秘めているからだ。

DBSは21年5月、12億円相当の「デジタル債権」発行を発表。同行初となるセキュリティートークンオファリング(STO)が実現した経緯がある。傘下の機関投資家向け取引所である「DBS デジタルエクスチェンジ(DDEx)」を通じて提供される。

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また、今年5月には、”プロジェクト ガーディアン(Project Guardian)”と呼ばれる、金融業界との共同イニシアチブの開始を発表。金融資産のトークン化の経済的可能性と付加価値のあるユースケースを探求することを目的に掲げた。

仮想通貨に係るリスクについて

一方、仮想通貨に係るリスク管理(リスクベースの資本や流動性要件)については、慎重な姿勢を強調してきた。今後より厳格な金融系ライセンス制度の整備を進めるほか、個人投資家の取引制限措置を強化する方針を示している。

背景には、今年5月に発生したアルゴリズム型ステーブルコインUST(TerraUSD)の暴落に端を発するTerraform Labsや大手ベンチャーキャピタル(VC)のThree Arrows Capital(3AC)の破綻がある。特に3ACについては、MASに虚偽情報を申告していたこと、規定の資産運用額(AUM)を超過していたことを糾弾の上、その他の違反について調査を進めていた。

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極端な投機需要を背景に市場の流動性危機をもたらし、伝統金融市場にも少なからず影響を与えたことは大きな教訓を残した。

MASは、市場操作(相場操縦)などの不正行為や運用上のリスクを軽減するため、DeFi(分散型金融)プロトコルへの規制セーフガードとコントロールの導入を検討を進めてきた。

ライセンスの付与については、シンガポールを拠点とする暗号通貨取引所運営会社の「Crypto.com」やDBS Bankのブローカー部門DBS Vickersなど10件の認可を行なってきたが、申請した企業はその20倍の約200社に及ぶとされる。

通貨庁のフィンテック分野責任者は今年6月、潜在的な金融安定性リスクやマネーロンダリング(資金洗浄)、及びテロ資金供与のリスクなどを念頭に、極めて厳格なデューデリジェンス(対象企業のリスク調査)を強化する方針を示している。

このようなシンガポール金融管理局(MAS)の対応について、一部オブザーバーからは、「イノベーション推進と顧客保護の観点(規制面)の狭間で矛盾が生じている」とする指摘や、「かつては支持を全面に押し出していたが、過度に慎重な姿勢に変わり、国際的な仮想通貨ハブとしての魅力を損なう結果となっている」と失望する声も挙がっている。

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