CoinPostで今最も読まれています

ブロックチェーン企業Nansen、マージ後イーサリアムの売り圧など考察

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

上海アップグレード後の売り圧力

ブロックチェーン分析会社Nansenは13日、マージ(The Merge)完了後の暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)に対して、投資家が懸念する2つの重要テーマ「売却圧力と検閲耐性」についてレポートした。

1つ目の懸念は、イーサリアムのステーキング参加者がステークしているETHや、報酬が出金可能になるタイミングで「市場に大規模な売却圧力が働くかどうか?」である。マージ完了後直ぐに出金が可能になる訳ではなく、ETHが出金解禁になるShanghaiアップグレードが焦点となる。

マージから6か月~1年後の実施が見込まれるShanghaiアップグレードについて、Nansenは「一部の人が考えているのとは対照的に、大規模なETH売りを引き起こしそうにない」との見解を示し、3つの根拠を挙げた。

第一に、ステーキングETHの大半(70%強)が(現在の水準で)含み損状態にあること。「赤字のETH保有者は資産を売却する可能性が低い」と述べている。なお、Nansenは実際にShanghaiアップグレードが近づけば、再考する必要があるとも注記している。

第二に、ステーキングETHの約65%がリキッド(流動的)ステーキングにあること。預けた投資家は今すぐstETHを現金化できる状態にあるため、stETH保有者にとってShanghaiアップグレード後だからといって売却する動機がないとした。

第三に、含み益のあるステーキングETHはステーキングETH全体の18%と影響力が軽微である点を挙げた。ETHのステーキング総量はETH総供給量の11.3%(2.8兆円相当)に過ぎない。アーリーアダプターには熱心な支持者も多く、売却しない者も一定数含まれる。

仮に、Shanghaiアップグレード後に含み益のあるステーキング参加者が売却を試みたとしても、イーサリアムでは一度に大量のバリデーターが離脱して不安定になることを防ぐため、出金制限が設けられていることも売り圧を軽減する要因とされる。

出典:Nansen

Nansenはまた、クジラ(大口投資家)が22年の弱気相場に継続してETHを蓄積し続けているデータを示し、プロジェクトが盤石な信頼を得ていると考察。ETHステーキング比率(11.3%)がPolygon(41%)やSolana(77%)と比較して低いことを根拠に、マージ完了後にリスクが解消されるとETHステーキング数が増加する可能性があると指摘した。

Shanghaiアップグレードが行われる2023年頃まで出金できないため、ステーキングETH量はそれまで上昇し続けるしかないことを意味する。市場の状況によっては、さらに山を作る可能性がある。

The Mergeとは

イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムを「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」から「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」へ移行する大型アップグレードのこと。アップグレード後もマイナーが採掘を続けることで、PoWとPoSをそれぞれ採用した2種類のイーサリアムが誕生する可能性があると注目が集まっている。

▶️仮想通貨用語集

関連:Coinbase Cloud「イーサリアム・マージに4つのリスク」

バリデーターの検閲耐性

出典:Nansen

2つ目の関心はPoS(プルーフオブステーク)移行後に、イーサリアムのトランザクションを検証する「バリデーターの検閲耐性」だ。

8月にコントラクトへのアクセスが禁止されたトルネードキャッシュ(Tornado Cash)の事例にあるように、規制当局がバリデーターに対してイーサリアムをプロトコルレベルで検閲するように要求する状況が懸念される。

関連:米コインベース、トルネードキャッシュ制裁に反対する訴訟を支援

Nansenによると、イーサリアムネットワークでステーキングに参加するユニークアドレス数こそ約8万件と多いが、ステーキングされたETHのうち約64%が5つのエンティティに集中している。(22年9月9日時点)

中でも米コインベース、米クラーケン、バイナンスといった仮想通貨取引所はステーキングされたETHの30%程のシェアを占めるが、これらの企業は管轄区域の規制に準拠する必要がある。

8月にコインベースのBrian Armstrong CEOは、そのような状況に直面した場合、制裁に準じてネットワークを検閲するよりも、イーサリアムのステーキング事業を停止する方を選択すると言及していた。

関連:制裁準拠かステーキング事業停止か、コインベースCEOがPoS版イーサリアムへの葛藤示す

一方、リキッド(流動的)ステーキングを提供するLidoは、ETHステーキング全体のシェア30%を占めている。しかし、Lidoは分散型プロトコルではあるが「一握りのエンティティまたは管理団体によって(間接的に)コントロールされている可能性がある」とNansenは指摘する。

Lidoのガバナンストークン(LDO)の45%がトレジャリーを除く9つのアドレスに集中しており、最大のトークン所有者はファンドやチームメンバーといった摘発可能な状態にあるため「間違いなく検閲リスクが伴う」と加えた。

ネットワークに対して悪意ある行動を取る、あるいは、規制当局に直接狙われる大手バリデータの存在は、安全、分散型、検閲に強いインフラというイーサリアムの価値提案を脅かす可能性がある。

Lidoを初めとするステーキング・エコシステムの寡占化によるイーサリアムの集権化リスクは、これまでも指摘されてきた。イーサリアム財団のDanny Ryanリサーチャーは6月、カルテル化を避けるため業界内で自主規制を行うべきと主張。投資家に対しても寡占化を助長しないよう要請した。

関連:流動的ステーキングがETHにもたらすリスク、イーサリアム財団が警告

イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、こうしたリキッドステーキングや仮想通貨取引所を初めとする中央管理型のステーキングサービスにETHのデポジットが偏る傾向について、「懸念はあるが、人々は誇張しすぎている」と指摘。「来年から出金が可能になれば状況が改善されるだろう」と述べていた。

リキッドステーキングとは

ステーキングの金利を受け取りながら、その代替資産(ステーキング証明トークン)を運用できるDeFiの仕組み。従来は、ステーキングした資産はロックされて併用して運用に利用することはできなかったが、リキッドステーキングの誕生で、ロックされた資産に流動性(=liquid:リキッド)を与えることができるようになった。

▶️仮想通貨用語集

関連:ヴィタリックが語る イーサリアムがPoSに移行する理由 

注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
11/30 木曜日
18:11
トークンブリッジ「Wormhole」 330億円を調達、Web3市場で今年最大規模
ブロックチェーン間互換性技術を手掛けるWormholeが330億円を調達。Web3エコシステムにおける今年最大級の動きとなり、ブレバン・ハワードやJump Tradingなど著名投資家が参加。ハッキング被害からの回復力も示し、新たな製品投入に期待が高まる。
16:03
「DOGE-1」月探査プロジェクト、SpaceXロケットで実現へ一歩前進
暗号資産(仮想通貨)ドージコインで資金調達した「Doge-1」月探査ミッションは、SpaceXロケットでの打ち上げを年明けに予定。プロジェクトを率いるジオメトリック・エナジー・コーポレーションが、規制承認の進捗を明かした。
14:30
Web3ゲーム「Big Time」、Bithumbに新規上場
暗号資産(仮想通貨)取引所BithumbがBIGTIMEとSTMXの新規取扱を発表。BIGTIMEはWeb3ゲームで、先月に米Coinbase(コインベース)に上場を果たした。韓国市場への進出が注目されている。
13:50
米フォーブス誌、24年版「30歳未満の30人」で仮想通貨関連で9名を金融リーダーに選出
米フォーブズ誌が選ぶ「30歳未満の30人」の2024年北米金融部門で、仮想通貨・ブロックチェーンに関連のある専門家9名が受賞することとなった。また、フォーブズは、13年の歴史で選出を後悔している10人を「恥の殿堂」として発表した。
13:20
ドイツ規制当局、ビットコイン・グループに資金洗浄対策を命令
ドイツ連邦金融監督庁は、ビットコイン・グループに対してマネロン対策の不備を是正することを命じた。
10:50
Web3ゲームの4分の3が失敗に=CoinGeckoレポート
仮想通貨データサイトCoinGeckoは、過去5年間でGameFiの4分の3が失敗に終わっているとのレポートを発表した。
10:10
フィリピンSEC、バイナンスの規制違反を指摘
フィリピンSECは、仮想通貨取引所バイナンスは同国で認可を取得せずに有価証券を販売していると国民に注意を促した。現地メディアはSECがバイナンスへのアクセスを遮断するなどと報じている。
08:15
FTX遺産、8.7億ドルの仮想通貨投資信託売却可能に
米デラウェア裁判所は29日、破綻した仮想通貨取引所FTXの債務者側が提出したグレースケールとBitwiseの仮想通貨投資信託の株式に関する売却提案を許可した。
07:45
米3Q実質GDP+5.2% 来年5月までのFRB利下げ観測高まる
米国株は月末で小幅安。第3四半期の米実質国内総生産改定値は前期比で年率5.2%増に速報値の4.9%から上方修正され、21年10─12月期以来の高い伸びとなった。
07:25
C・ロナウド選手、バイナンスとの契約巡り集団訴訟に直面
サッカーのクリスティアーノ・ロナウド選手は、仮想通貨取引所バイナンスのプロモーションに関わったとして、米国で集団訴訟に直面。原告は、同社の有価証券販売に関与したなどと主張している。
06:45
米SoFi、仮想通貨取引サービスを停止へ Blockchain.comへ移行
米オンライン融資仲介サービス大手SoFiは29日、仮想通貨取引サービスの閉鎖および移行計画を発表した。Blockchain.comへの移行が必要となる。
06:05
ブラックロックとInvesco、ビットコインETFの上場申請でSECと再び面談
米SECは現物型ビットコインETFの上場申請について、今週28日に申請側のブラックロック(2度目)・Invescoと会議を行ったことが判明した。ゲンスラー委員長は別のイベントでETF申請についてコメントをした。
05:30
米で13番目のビットコインETF上場申請に、スイスPando
スイスの資産管理会社Pando Assetは米国で、現物型仮想通貨ビットコイン(BTC)ETFの上場申請を行っていることが判明。
11/29 水曜日
21:01
IOTA財団がUAEアブダビ当局と提携、エコシステム成長を促進
仮想通貨IOTAの研究・開発を行うIOTA財団は、UAEアブダビで、金融センターADGMと協力し、プロジェクトを成長させていくと発表した。
18:00
預けるだけで仮想通貨が増える?|CoinTradeのステーキングを解説
2023年11月、ビットコイン(BTC)が年初来高値を更新したことをうけ、仮想通貨(暗号資産)業界は盛り上がりを見せています。 一方で「仮想通貨には投資してみたいけど、短期で売…

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア