PoS移行の動機
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、2日に公開されたインタビューで、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)に移行する理由について見解を語った。
また、PoSネットワークで大量保有者にさらに報酬が与えられる「富の集中化」や、ETHエコシステムで自身の存在が単一障害点とみなされる風潮について言及。
ブテリン氏の見解によると、PoS移行により51%攻撃にかかるコストが格段に上がるため、ネットワークのトランザクション検証者(バリデーター)に支払う報酬当たりのセキュリティ水準は遥かに向上する。
セキュリティを確保するためにブロック生成者に支払う報酬を「1ドル」に抽象化すると、採掘マシンと電気代を要するPoW(プルーフ・オブ・ワーク)のマイナーは、資本コスト(初期費用)に約 0.33 ドル、操業(ランニング)コストに0.67 ドル支払っている。
一方、PoSのバリデーターは最初に所定のトークンを購入してステーキングする必要があるため資本コストが0.9ドルで、維持費の負担が少ないので操業コストはせいぜい0.1ドル。
同じ1ドルの報酬でも、より資本(初期)コストがかかるPoSは、51%攻撃のリスクに対して「20倍以上のセキュリティを確保できる(GPUマイナーの場合)」と、ブテリン氏は独自の試算に基づいて主張した。
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PoWとの比較
不必要に大量の電力を消費する(PoW)コンセンサスシステムは環境に悪いだけでなく、毎年数十万のBTCまたはETHを発行する必要がある。もちろん、最終的には発行額がほぼゼロになり、その時点で問題はなくなるが、ビットコインは別の問題に直面する。
将来的にBTCの採掘報酬が無くなると、ビットコインのセキュリティは完全に手数料に依存することになる。しかし、ブテリン氏は「ビットコインの手数料は1日約4,200万円(30万ドル)で、直近5年間であまり伸びていない」として「ビットコインは数兆円規模のシステムを安全に運用するのに必要なレベルの手数料収入を生み出せていない」と指摘した。
また、イーサリアムのPoSでは、バリデーターの不正を検出するとそれらが保有するETHを自動的に没収する「スラッシュ(罰則)」メカニズムがある。
特定のブロック生成者がネットワークの過半数を占め、取引を改ざんする「51%攻撃」が起きた場合、PoWではフォークによるアルゴリズム変更とそれに伴うASICマシンの無力化によりチェーンが不安定化するリスクがある。一方、PoSは不正なバリデーターを排除してすぐに回復できる利点があるとブテリン氏は指摘した。
イーサリアムの単一障害点
ブテリン氏はまた、PoWとPoS(イーサリアム)の共通点としてマイナーやバリデーターのような存在が、ネットワークのガバナンスに大きな影響力を及ぼすことは無いと指摘。ガバナンスは改善提案(BIPやEIP)を通じて行われる独立したプロセスである。
コンセンサスメカニズムはネットワークの正当なチェーン形成を助ける取り決めにすぎず、「プロトコルに違反するブロックは結局は拒否される」として、より大量の資産保有者がPoSネットワークを制御できるかのような見解は誤りだと述べる。
分散型のリキッドステーキングサービスや、仮想通貨取引所を初めとする中央管理型のステーキングサービスにETHのデポジットが偏る傾向について、「懸念はあるが、人々は誇張しすぎている」と指摘。「来年から出金が可能になれば状況が改善されるだろう」と述べた。
自身が創業したSquare(現Block)の専門部門で、ビットコイン(BTC)のレイヤー2ネットワーク「ION」に分散型ID(DID)サービスを構築するなど、ビットコイン信者で知られるジャック・ドーシー氏は以前、イーサリアムには「単一障害点」があると指摘したことがある。
ドーシー氏は直接言及していないが、外から見れば2013年に若干19歳でイーサリアムを生み出したブテリン氏はイーサリアムの「顔」であり、ロードマップや開発関連において多大な影響力を示しているかのように見える。
こうした周囲が抱く印象についてプテリン氏は、過去2年間でコードはおろか高レベルなリサーチでさえ自身の手を離れていると指摘。多くの素晴らしいリーダーシップが育ち、自身の影響力を減らすことに成功したと語った。
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