BTCアドレスも対象
米財務省は14日、同省の外国資産管理局(OFAC)が、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)に関連する10名の個人と2つの組織を制裁対象にしたことを発表した。
今回の制裁対象者は、ランサムウェア攻撃を含む悪意あるサイバー行為を行ったと説明。発表にはどのように暗号資産(仮想通貨)が利用されたかは明記されていないが、制裁リストには対象者の名前と共に、ビットコイン(BTC)のアドレスも記されている。
ランサムウェアとは
ハッキングを仕掛けたうえで、元の状態に戻すことと引き換えに金銭を要求するマルウェアのこと。ランサムウェアに感染すると、重要文書や写真ファイルを勝手に暗号化されたり、PCをロックして使用を制限されたりした上で、金銭が要求される。
▶️仮想通貨用語集
財務省の発表によると今回の制裁対象者は、少なくとも2020年以降には米国や他国に対し、コンピューターに不正アクセスをしたり、データを盗んだりしてサイバー攻撃を実行していた。中にはイラン政府に関連するグループの活動に寄与しているとみられる攻撃も含まれていたという。
攻撃対象となったのは、ニュージャージー州の自治体のコンピューターネットワークや米拠点の小児病院など。今回の措置で、米国で保有されていたり、米国民が所有したりしている制裁対象者の財産や利益にはアクセスできなくなる等の措置がとられる。
ランサムウェア攻撃などのサイバー攻撃では、身代金の支払いに仮想通貨が利用されることも多い。匿名性が悪用され、身代金を受け取る際に身分を隠すために利用される事例が過去にもあった。今回の制裁対象者も身代金の受け取りに、ビットコインを利用していた可能性がある。
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サイバー犯罪対策を強化
米政府はサイバー犯罪への対策を強化している。今回の制裁も政府の取り組みの1つで、財務省に加え、国務省やFBI(連邦捜査局)など複数の組織が協力して調査等を実施した。
最近のOFACに関しては、仮想通貨ミキシングサービスの「Tornado Cash(トルネードキャッシュ)」を制裁対象に指定した事例がある。米財務省は、北朝鮮の国家を支援するハッキンググループ「ラザルス」もトルネードキャッシュを犯罪資金の洗浄に使用していると主張した。
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なお、トルネードキャッシュの制裁については、「人間ではなくツールを制裁対象にした」などと仮想通貨業界から批判の声が上がっている。制裁の影響は正当な目的でトルネードキャッシュを使っていた一般ユーザーにも及んでおり、米財務省は13日に質疑応答(Q&A)を公開して、ユーザーが凍結されている仮想通貨を引き出す方法についても回答した。
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