仮想通貨に対する追加制裁
EU(欧州連合)は、ロシア人がEU内で暗号資産(仮想通貨)保有する場合の制限を強化する意向であることがわかった。情報筋の話としてCoinDeskが29日に報じた。
今回の対応は、ウクライナの一部地域をロシアに編入させるために、親ロシア派勢力が一方的に行なった住民投票を受けてのもの。この行動を批判するEUは、これまでロシア人はEU内で140万円(1万ユーロ)相当までの仮想通貨を保有できるとしていたが、保有自体を禁止する意向だという。
プーチン政権が後援する親ロシア勢力は、ウクライナの4つの州をロシアに編入させるために一方的に住民投票を実施しており、編入に賛成する票の割合が反対を大きく上回っている模様。これによってプーチン政権は、ロシアへの併合に向けて手続きを進めると見られている。
今回の仮想通貨保有への制限強化は住民投票を受けてのものだが、この追加制裁案は仮想通貨に限ったものではなく、ロシアに対する輸出入の禁止拡大などの措置も含まれている。EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、28日の記者会見で以下のように語った。
EUは、嘘の住民投票も併合も受け入れることはできない。我々は、事態を悪化させたロシア政府に代償を払わせると決めた。
今回の制裁案は、EU加盟国の承認を得た上で実行する。追加規制案の全体の内容は、公式にはまだ発表されていない。
ロシアを巡る動向
EUは今年4月、ロシアへの新たな制裁措置を実行しており、その中で仮想通貨ウォレットへの送金や高価格の仮想通貨サービスを禁止。仮想通貨ウォレットへの送金の禁止は、「既存の措置を強化し、制裁の抜け穴をふさぐことを目的とした一連の経済的措置」の1つとして挙げられていた。以前よりEU関係者は、仮想通貨が制裁回避手段になり得ると指摘している。
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最近ロシアを巡っては、国際決済に仮想通貨を利用できるようにするため、法整備を進めている様子が伝えられていた。今月には、同国の財務省と中央銀行が、仮想通貨を国際決済に利用できるようにする法案に概ね合意したことが明らかになっている。
以前は、規制しつつも仮想通貨を認可したい財務省と、仮想通貨を禁止したい中央銀行とで意見が合わなかったが、現在は国際貿易に仮想通貨を合法的に利用できるようにすべきという認識で財務省と中銀が一致しているという。
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