- 台湾中央銀行総裁が仮想通貨に疑念
- 台湾中央銀行総裁の楊金龍氏は、「決済手段としての通貨の使用は、長い信頼の歴史に依拠している。仮想通貨は、伝統的な決済通貨や金融システムに見られる信用性に欠けており、その価値を維持できなくなる可能性がある。」と、疑念を示した。
台湾中央銀行総裁が仮想通貨に疑念
台湾メディアであるTaiwan Newsは、自国の中央銀行総裁の楊金龍(Yang Chin-long)氏が、仮想通貨は「法定通貨や既存金融システムと同様の”信頼性”を持ち合わせていない」と言及したことを明らかにしました。
同氏は、以下のように主張しています。
決済手段としての通貨の使用は、長い信頼の歴史に依拠している。通貨が”支払いの手段”として使用されるためには、信用性を持ち合わせていることが何よりも大切だ。信用性が欠けると通貨のその価値を維持できなくなり、最終的に価値がなくなる可能性もある。
仮想通貨は、価格の乱高下が多々見られるように、ボラティリティ(価格変動性)が高いため、日常の決済で使用するには非効率的であり、一度盗難が行われれば、その資金を取り戻すことはほぼ不可能だ。さらに国際的な規制も整備されていないことから、犯罪者にとって魅力的なツールとなっていることが否定できない。
楊金龍氏は、仮想通貨は元々支払いや決済を効率化、利便化させるために作成されたのに対し、現状ほとんどが投機目的で、リスクの高い投資プロジェクトに使用されてしまっている点についても指摘しました。
2014年に、Mt.Goxの大規模ハッキング事件があり、仮想通貨は一度大きく信頼を失いましたが、2017年に仮想通貨市場の総時価総額が急上昇したこともあり、世界中の人々が大挙して参入、半信半疑ながら”信頼性”は度外視されつつあるようにも見受けられました。
しかし、2018年に入って、仮想通貨取引所Coincheckや、BitGrail、Coinrailなどの大手が次々とハッキングされた上に、仮想通貨価格が大きく下落していることから、再び仮想通貨に対するイメージが悪化してしまっていることも否めません。
このような事件の数々は、取引所の不手際であり、仮想通貨自体に問題があるわけではありませんが、仮想通貨業界全体のイメージに影響を与えていることは間違いないでしょう。
ブロックチェーン技術に一定の評価
実際、仮想通貨の基盤にあるブロックチェーン技術は、トラストレス(Trustless)、非許可型(Permissionless)的な側面を持つため、論理的に投資家は、第三者の信用が無くても、技術を信頼することで「信用性」という部分は十分補うことができると考えられています。
しかし、仮想通貨業界の中で最も早く台頭したビットコインでも、現時点で、わずか10年ほどしか存続しておらず、国際通貨としての機能の評価はまだ固まっておらず、次の10年も問題なく存続していくか定かではないため、既存の金融システムと比較すると信頼性が劣っていると言わざるを得ません。
今回、批判的な見解を述べた楊金龍氏ですが、2018年2月には中央銀行総裁に就任時の就任式にて、「中央銀行は、ビッグデータや、人工知能、ブロックチェーン技術などの新しい技術に対し、柔軟な考えを持ち合わせておくべきだ」と主張。
ブロックチェーンを利用して、台湾の電子決済システムのセキュリティを高め、効率化させることに関心を持っていることを明らかにしていました。
また今年4月に同氏は、法務省に対し、既存のアンチマネーロンダリング(AML)規則をビットコインにも適用させるよう提案しており、3月下旬には、台湾の財務大臣であるSheu Yu-jer氏が、「仮想商品」として扱われている仮想通貨に対して、課税を行うべきであると主張しています。
さらに、5月には台湾で仮想通貨ブロックチェーン自己規制機関(TBSRO)と台湾台湾議会連合連合(TPCB)が設立されるなど、関心を持って取り組んでいます。
このようなことから、たとえ中央銀行総裁が仮想通貨を通貨として認めていなくとも、ブロックチェーン技術の可能性や、仮想通貨業界を適切に整備して行こうという考えが汲み取れると言えるでしょう。