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ビットコイン論文(ホワイトペーパー)、初公開から14周年 近年は行政・企業による採用が顕著

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

BTC論文公開14周年

10月31日、サトシ・ナカモトが暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)のホワイトペーパーを公開してから14周年を迎えた。

2008年10月31日にサトシ・ナカモト(匿名個人またはグループ)はサイファーパンクのメーリングリストに「ビットコイン:ピアツーピア電子マネーシステム(Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System)」という論文を公開。

論文では、新しいデジタル通貨が完全にピアツーピアであること、取引の実行に信頼すべき第三者を必要としないことが強調された。さらには、これまで電子キャッシュの問題点とされてきた二重支払い問題の解消、匿名性、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)の合意形成メカニズムなど、今日のビットコインを形作る要素が記述された。

発表された時期(2008年)はリーマンショック直後。世界の金融機関や政府など、巨大権力を握る中央集権的な機関への信頼が薄れる中で、信頼ではなく“証明”に重きを置き、非中央集権的な金融システムを提唱するビットコインの概念は、人々の間で徐々に浸透してきた。

2009年1月3日には、実際にネットワークが起動。サトシ・ナカモトが最初のビットコイン・トランザクションとして10BTCをプログラマーでデベロッパーであるHal Finney氏へ送った。サトシがビットコインの初めのブロック(Genesis Block)に「英タイムズ紙2009年1月3日:財務大臣 二度目の銀行救済措置へ」というメッセージを記したのは有名だ。

ビットコインの採用拡大

その後も着実にビットコインのメカニズムと価値に対する信頼が強まってきている。2013年末には、BTC価格が初めて1,000ドルを突破するなど高騰。2016年になると、仮想通貨を定義する改正資金決済法が日本で成立した。「仮想通貨元年」と呼ばれる2017年には、ビットコイン価格が日本円で1BTC=235万円に達するなど成長してきた。

各国で規制面が整うと2020年後期頃から米上場企業などの参入が相次ぎ、マイクロストラテジー社やテスラ社等がビットコインを購入した。

21年にはエルサルバドルが法定通貨としてビットコインを採用。22年には中央アフリカ共和国の国民議会が、仮想通貨の使用を合法化する法案を可決。トゥアデラ大統領が署名し、エルサルバドルに次いで、世界で2番目にビットコインを法定通貨として承認した国となった。

関連:中央アフリカ共和国、仮想通貨の使用を合法化か=報道

22年3月には、スイスの都市ルガーノが、ビットコイン(BTC)、テザー(USDT)、スイスフラン連動のステーブルコイン「LVGA」の3銘柄を事実上の法定通貨にすることを公表。200超の企業や店舗が支払い手段として受け入れるようにするほか、個人や企業の税金、公共サービスの利用料や授業料など幅広い支払いに、この3銘柄を利用できるようにするとした。

関連:スイスのルガーノ市、ビットコインやテザーを事実上の法定通貨へ

同年10月28日にスイスのルガーノ市で開催された会議「プランB」で、ルガーノ市長のミケーレ・フォレッティと共に登場したステーブルコイン発行会社Tetherのパオロ・アルドイーノ最高技術責任者は、40のマーチャントがすでにPOSシステムで仮想通貨を使用しており、その数は23年第1四半期に1,000に上ると述べている。

また、10月29日には、エルサルバドルとルガーノ市がビットコインの採用と教育の普及を支援する覚書を締結。ルガーノ市に「ビットコイン オフィス」を設置し、新たに名誉領事が置かれ、市内、イタリア、ヨーロッパでビットコインを宣伝するという。

関連:エルサルバドル政府 ビットコイン購入から1周年

寄付で利点を発揮

ビットコインの誕生により、国境を越えた寄付活動を迅速に、かつ当事者間で直接行うことが容易になった。ビットコインに代表される仮想通貨に対する注目がますます高まっている。

ビットコインが「善と金融包摂の力となる可能性がある」と述べるのは、世界的に有名な慈善団体Save the Children。2013年にビットコインを受け入れた最初のNGOと自負する米国部門によると、これまで延べ約75BTC(約10億円)を集めてきた。

Save the ChildrenのWeb3リード、アントニア・ルーペルl氏によると、アフガニスタンやウクライナなどの場所で紛争の影響を受けている子供たちや、フロリダのハリケーンなどの気候災害の影響を受けている家族を支援する救済活動への寄付に使用された。

一方、ウクライナではロシアによる軍事侵攻に先立って22年2月に仮想通貨を合法化する法案が可決。これにより、外国やウクライナの仮想通貨を合法的に取引できるようになるほか、仮想通貨交換業者はウクライナの銀行口座を開設することも可能に。

ロシアによる軍事侵攻を受け、ウクライナ政府は2月末からビットコインやイーサリアム(ETH)といった仮想通貨による寄付を受け入れ始めた。

日本の仮想通貨取引所ビットフライヤーもまた、2016年から運営しているビットコイン(BTC)専用寄付プラットフォーム「BITCOIN DONATIONS」で、ロシアにより侵攻に苦しむウクライナへの寄付を開始。寄付金を日本赤十字社へ全額寄付している。

関連:bitFlyer、ウクライナ支援プロジェクトを開始 ビットコインの寄付を募集

インフレヘッジ

ビットコインの採用は個人だけでなく、機関投資家の間でも広まっている。2020年前後、大規模金融緩和などの影響で米ドルのマネーサプライ(M2供給量)が急増したことから、デジタル・ゴールドとして代替資産性のあるインフレヘッジ需要が急速に高まり、機関投資家の資金流入が大幅に拡大した。

22年10月に米金融大手フィデリティの暗号資産(仮想通貨)事業部門フィデリティ・デジタルアセット(FDA)が、「ドル高とビットコイン(The Rising Dollar and Bitcoin)」というレポートを公開。

(最大供給量が2,100万BTCに制限されている)ビットコインは、世界各国の法定通貨が辿る供給量の増加、追加の通貨発行、中央銀行のバランスシート拡大の道とは対照的なものとして、注目される可能性があるとの見解を示した。

関連:金融大手フィデリティ「ビットコインはヘッジとして見直される」

採用活動の積み重ねにより、わずか14年間でビットコインのユーザー規模は加速度的に増加してきた。データ分析企業Glassnodeによると、ビットコインのアドレス総数は2022年7月に10億件を超えている。

出典:Glassnode

サトシナカモトの論文は、副次的に1万3000以上のアルトコイン(オルタナティブ:代替コイン)を生み、仮想通貨全体の市場規模は148兆円に拡大(執筆時点)。ビットコインは38.6%のシェアを占めている。

しかし、ビットコインと仮想通貨コミュニティの歴史は始まったばかり。直近では、ビットコインの普及拡大の妨げとなっている取引処理能力を、最大100倍向上できるプランが公開された。また、大手資産運用会社Stone Ridge Holdings GroupがビットコインのL2スケーリングソリューション「ライトニングネットワーク」上で構築する企業支援を目的とした「Wolf’s Clothing」を設立するなど、ユースケース拡大に取り組んでいる。

関連:ビットコインのDeFi利用拡大を図る 米資産運用会社大手が支援プログラム発足

米大手仮想通貨取引所コインベースのブライアン・アームストロング最高経営責任者(CEO)は以下のように述べている。

14年前に革命を起こしてくれたサトシ(誰だか知らないけど)と、#ビットコイン・コミュニティーの皆に感謝。まだ始まったばかりだ。ビットコインのインパクトはこれから数世紀にも渡り感じられることだろう。

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