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FTX破綻でソラナエコシステムに痛手、再起の見込みは

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FTXの影響力とソラナの今後

高速L1ブロックチェーンのソラナ(SOL)とその上で構築するプロジェクト群は、FTXの経営破綻によって最もダメージを受けたエコシステムの一つだと言える。

世界最大級の暗号資産(仮想通貨)デリバティブ・現物取引所として名を馳せたFTXは、11月11日に米連邦破産法11条(チャプターイレブン)にもとづいた破産申請を提出。申請書類によれば、資産と負債は共に100億ドル(約1.3兆円)から500億ドル(約6.9兆円)と推定される。しかし、資産の大半はロックアップされたソラナ(SOL)や独自トークンFTTなど流動性の低い資産だった。

以前からFTXから多額の出資を受けており、前CEOであるサム・バンクマン・フリード(SBF)氏の影響下ではDeFi(分散型金融)を初めとするユースケースが急激に発展を遂げてきた。

予期せぬFTXの破綻により、ソラナエコシステムのダメ―ジはとりわけ大きいものとなっている。仮想通貨ソラナ(SOL)の過去1週間の減少幅は51%、年間では94%下落している。

この記事では、ソラナとそのエコシステムにFTX破綻が及ぼした影響、そして今後どのようにして再起を図ることができるか、海外仮想通貨メディアWeb3 Pillsの分析に基づいて考察していく。

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ソラナへの影響

SBF氏がソラナ経済圏へのサポートを公言したのは2020年夏。その後、姉妹会社アラメダリサーチを含むFTXグループは、ソラナだけでなくエコシステム内のdApps(分散型アプリ)プロジェクトに多額の出資を行ってきた。

出典:Twitter

これにはソラナのトップNFTプロジェクト「DeGods」の開発会社Dust LabsやWeb3ソーシャルネットワーク「Solcial」などが含まれる。出資契約には、プロジェクトの発行するトークンではなく開発企業の株式を保有するケースも含まれているとされ、中には資産をFTXに預けていたプロジェクトもある。これらの全容が明らかになることが予想されるため、影響はしばらく拡大する見込みだ。

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また、FTX自ら、DEXインフラプロジェクト「Project Serum(セラム)」を2020年8月にローンチ。ソラナのDEXプロジェクトの流動性ハブとして機能する設計で、RaydiumやMango Marketなど他のDEXの基盤となった。

FTXとSBF氏のリーダーシップもあり、多くの開発者や投資家がソラナに引き寄せられた結果、ソラナのDeFiエコシステムにロックアップされた総資産価値(TVL)は急拡大。21年11月のピーク時には101億ドル(1.4兆円)規模まで急成長を遂げた。

出典:DeFiLlama

しかし、22年の仮想通貨の冬の時代の影響、そしてこの度のFTXの破綻によってソラナ経済圏のTVLは急減。執筆時点に約450億円(3億2,800万ドル)に縮小している(DeFiLlama調べ)。

Serumに至っては、実はFTXがコードのアップグレード権を制御する秘密鍵を保持していることが判明。FTXは直近で4.7億ドル規模の不正流出が発覚するなど信頼が失墜していることから、ソラナの創設者Anatoly Yakovenko氏はハッキング被害を防ぐためにSerumの緊急フォークを実施。

騒動を通してSerumの独自トークン(SRM)の価値は激しく変動し、CoinGeckoのデータでは執筆時点で前月比-60%となっている。

ソラナ(SOL)をサポートするソラナ財団が10日に発表したレポートによると、アラメダリサーチとFTXは2020年〜21年にかけた5回の投資で5,808万SOLを購入。この数量はSOL総供給量の約10%以上に相当する。

このうち20年8月の初回購入分400万SOLはロックアップ期間が設けられていない。また、20年9月の購入量は21年9月から、そして20年11月の購入分は22年1月から、毎月アンロックが開始している。

FTXが取得したSOLのうち、売却されずにどれだけ残されているかは不明だ。また破産手続きでどのように処理されるのかも分からない。リストラに精通した弁護士のwassielawyer氏によれば、FTXの資産と負債の中から有望な部門だけを選別して買収を試みるいわゆる「チェリーピッキング」の対象になる可能性も残る。

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ソラナ復活の道標

ソラナエコシステムはFTXの破綻によって甚大な被害を受けたが、Web3 Pillsの創設者Alex Valaitis氏は、今後立ち直る可能性があると楽観的だ。

Valaitis氏はソラナ復活の鍵を握るポイントは主に3つあると分析。ソラナ財団の豊富な資金力と、ソラナエコシステムがこれまで培ってきた強力なコミュニティ、そして既に多くのユーザーが創出するネットワーク使用量を挙げた。

出典:Twitter

まず、資金について、Yakovenko氏はソラナ財団が30か月運営するのに十分な費用を保有していると指摘。この間にプロジェクトの支出を切り詰めつつ、後述するファンダメンタルズを訴求することで、さらなる資金調達を図ることもできるだろう。

DeFiのdAppsは打撃を受けたが、ソラナには他にも魅力的なユースケースがある。FTX破綻後でさえ、ソラナのNFTエコシステムは、イーサリアム(ETH)に次ぐ取引量を維持している。データサイトCrypto Slamによれば、過去30日間のソラナNFT取引量の縮小幅は-18%に留まった。

ソラナウォレットの「Phantom」は一般ユーザーの取り込みに役立っている。米SNS大手インスタグラムとの提携で、Phantomで保持したNFTを投稿して、フォロワーに共有することも可能になった。

ソラナのアクティブユーザーは引き続き好調で、10月に1,150万のアクティブアカウントを計上。そのうち、ガス代(手数料)を支払ったユーザー数は170万件に上る。

ソラナコミュニティによれば、こうしたソラナのアクティブアカウント数は他のブロックチェーンよりも多い。また、これまでに処理してきたトランザクション数は、すべてのEVM(イーサリアム仮想マシン)互換チェーンの合計値よりも多い。

EVMとは

EVM(イーサリアム仮想マシン)とは、イーサリアムのスマートコントラクトのコントラクトコードを実行するための「翻訳機」として機能するもの。バイナンスのBNBチェーンやアバランチ(AVAX)を初め、複数のネットワークがEVM互換性を備え、安価で高速取引処理(TPS)の性能により、多くのプロダクトとユーザーを獲得してきた。

▶️仮想通貨用語集

強力なファンダメンタルズに対する自負は、ソラナ創業者、そしてソラナで最大のNFTマーケットプレイスMagic Edenも強調してきた点。界隈からは、ICOブーム後に売り叩かれたイーサリアムの2018年の低迷になぞらえて、今後の再生が期待されている。

ソラナラボの共同創設者であるRaj Gokal氏は、コミュニティを激励すべくツイッターで以下のように述べている。

ソラナエコシステムにとってこの試練は前回と同じくらい厳しいもの。しかし、今回は団結する人数が10倍多い。何度でも我々はより強くなる。ファンダメンタルズは以前より良くなっている。

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