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グアテマラのビットコイン・レイクに行ってみた|体験記寄稿1 草の根活動を通じてビットコインが広まった現場で見たこと・感じたこと

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

エルサルバドルを再訪

2021年9月にビットコインを法定通貨に採用した中米のエルサルバドルを2022年3月に訪れ、国内各地におけるビットコインの利用状況を見て周った体験記を「ビットコインが法定通貨になったエルサルバドルへ行ってみた」と題したシリーズにて、5回にわたり寄稿させていただきました。

それから8ヶ月後の2022年11月、首都サンサルバドルで開催されたAdopting Bitcoinという国際カンファレンスに参加するため、エルサルバドルを再訪しました。残念ながら現状を追跡調査する時間はなかったのですが、Diamond Hands Magazineで簡単にレポートしているので、良かったら読んでみてください。

ビットコイン価格に連動するように、国民だけでなく政府の関心も低迷中という厳しい現実にがっかりしつつも、世界中から集まったビットコイナーたちのマスアダプションに向けた取り組みに大いに刺激を受けました。

著者提供:カンファレンス最終日、ビットコインビーチで開催されたアフターパーティ

いざ、グアテマラへ

カンファレンス後、エルサルバドルで追跡調査をする代わりに向かったのが、隣国グアテマラのパナハッチェルです。ドイツの地理学者で探検家でもあったフンボルトが、19世紀初めに「世界一美しい湖」と評したと伝えられるアティトラン湖畔の街です。

湖の周りには、ヒッピータウンのサンマルコ、ヤッピータウンのサンタクルス、パーティタウンのサンペドロ、アーティタウンのサンティアゴなど個性豊かな街が数十点在しており、パナハッチェルはその中でも比較的大きく、交通の便がよいことから、ゲートウェイタウンとして知られています。先住民インディヘナの文化が色濃く残る、年間を通して温暖なリゾート地で、欧米からの旅行客が多いため、英語も割と通じます。

著者提供:アティトラン湖

グアテマラってどんな国?

パナハッチェル訪問の目的を説明する前に、グアテマラについて簡単にご紹介します。

基本情報

エルサルバドルの北に位置するグアテマラは、メキシコ、ベリーズ、ホンジュラスとも国境を接し、太平洋とカリブ海の両方に面しています。国土は約11万平方キロメートルと北海道と四国を合わせたよりやや大きいくらいで、首都グアテマラシティは中央アメリカ最大都市です。

日本と同じく火山国のため、地震が多く温泉もあります。

中央アメリカ最多の人口1,660万人を擁し、うち約4割がマヤ系先住民、5割強が先住民と欧州系の混血メスティソです。公用語はスペイン語ですが、他にも22のマヤ系言語も使われています(日本の外務省統計)。

先住民を大量虐殺し、伝統文化も抹消したエルサルバドルとは対照的です。

歴史

紀元前900年ごろからマヤ文明の中心地域として栄えましたが、9世紀に入ると急速に衰退しました。16世紀にスペイン人による侵略がはじまり、1524年にスペインの支配下に入ります。

1821年にスペインから独立を宣言しますが、すぐに第一次メキシコ帝国に併合され、ようやく1839年に独立を勝ち取りました。

しかし、20世紀に入るとバナナ戦争(アメリカによる中央アメリカ諸国における自国企業の利権を守るための軍事介入)が勃発、アメリカ政府の支援を受けた独裁者が次々と登場、軍事クーデターや革命を経て、1960年からはアメリカが後ろ盾の政府と左翼反乱軍の間で内戦が始まり、1996年の終結まで36年間で最大20万人が犠牲ととなりました(ウィキペディア)。

スペインとアメリカに翻弄された、血なまぐさい残酷な歴史はエルサルバドルと同じですね。

経済

主な産業は繊維産業と農業です。世界的に有名な特産のコーヒー(普段はバランスの良いエルサルバドル産を中濃度で淹れて1日中飲んでいますが、グアテマラのは朝一番に濃いショットで飲むのに向いているとの印象)は、国際市場価格動向に左右され不安定な面もありますが、繊維産業は概ね好調です。

近年はマヤ文明の遺跡やインディヘナの文化、温泉などの資源を活かして観光産業が大きく成長しています(日本の外務省統計)。

一人当たりのGDPは5,000ドル以下で、国民の半数以上が1日5ドル以下で生活する貧困層です。経済成長率は3~4%と低水準で雇用が十分に創出できないため、国民の1割、200万人以上がアメリカに移住し、GDPの14%に相当する彼らからの仕送りが家計を支えています(日本の外務省統計)。この辺りの状況もエルサルバドルに通じます。

自国通貨を持たず米ドルを法定通貨として使うエルサルバドルとは違い、グアテマラにはケツァルという通貨があります。ここ10年くらいのチャートを見る限り、米ドルに対して安定的に推移しています。

インフレ率は2~6%くらいで推移していましたが、今年に入り10%近くまで上昇しました。物価上昇で生活を脅かされる国民の怒りを、エルサルバドルからグアテマラに入る国境で目の当たりにしました。

日本同様、グアテマラ政府は急伸するガソリン価格の悪影響を補助金で緩和していましたが、その補助金の打ち切りに抗議するトラック運転手がデモを行っていたのです。

グアテマラ(青線)と日本(黒線)のガソリン価格の推移(出典: TradingEconomics

国境の入国管理局付近にトラックがめちゃくちゃに停められ、エルサルバドルとの人とモノの往来を妨害していました。小1時間ほどトラックの間を縫うように徐行して何とか入国した後も、数十キロにわたって2車線の幹線道路の1車線が塞がれており、大渋滞に巻き込まれます。

しかも、デモの影響で入国管理業務も混乱しており、パスポートに入国スタンプを押してもらえませんでした。先行きの不安、暑さ、喉の渇き、空腹で、この時はこれが原因で出国時にトラブルになることに気づく余裕はありませんでした。

著者提供:行く手を塞ぐトラックのバリケードと、どこまでも続くトラックの列

ビットコイン・レイクの拠点、パナハッチェル

本題に入ります。今回、パナハッチェルを訪問した目的は、ビットコイン・レイクというプロジェクトを視察するためです。ビットコイン・レイクは、エルサルバドルのビットコインビーチに触発され、世界各地で雨後の筍のように次々と始まったビットコイン循環経済の実証実験の1つです。

プロジェクトごとにフォーカスやアプローチに多少違いはありますが、概して以下を共通のゴールに掲げています。

  1. 教育を通して、ビットコインだけでなく、金融経済全般に対する理解を高める
  2. 商店、事業者、自治体などにビットコイン決済の導入を促す
  3. 既存金融サービスから排除された人たちに、ビットコインという貯蓄手段、電子決済手段を提供することで、金融主権回復と経済エンパワーメントを支援する
  4. ビットコインフレンドリーな環境にビジネスチャンスを見出す起業家や高スキル人材の誘致、ビットコイナー向けの観光需要喚起を介して地域経済を活性化する

ビットコイン・レイクは2022年1月に始まったばかりですが、ホテル、レストラン、商店など60以上の施設にライトニングネットワークを使ったビットコイン決済を導入したり、小中高校生向けの教育プログラムを運営したり、電源に廃棄物を利用してマイニングを行ったりと、わずか10ヶ月でさまざまなイニシアチブを始動し、すでに一定の成果を上げています。

著者提供:ビットコインサインがあふれるビットコイン・レイク

次回以降、ビットコイン・レイクの活動詳細のほか、50回超のライトニング決済をしてみて痛感した課題と見えてきた理想のウォレットの要件などをご紹介します。

寄稿者:練木照子(Teruko Neriki)練木照子(Teruko Neriki)
ビットコインとライトニング関連スタートアップへの投資に特化したVCフルグルベンチャーズ所属。「ビットコインスタンダード」「ビットコイン、強気にならずにはいられない理由」「ビットコインの歩き方」翻訳出版。ビットコイン研究所について詳細はこちらからご覧いただけます。
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