AIの進歩と技術間の融合
米大手ヘッジファンドARK Invest(以下、ARKと表記)は23日、2023年の市場の見通しについて、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利政策を転換し、金利を下げる可能性を示唆。また、技術分野の急速な進展により、暗号資産(仮想通貨)の希少性が高まり差別化が進み、技術系銘柄が上昇するとの予測を展開した。
ARKのブレット・ウィントン主任未来学者は、テクノロジー分野では今年、人工知能(AI)の進歩が加速し、技術間の融合が進むことを期待していると述べ、以下のような例を挙げた。
- AIによる癌判定用血液検査の改善
- ロボットの能力向上
- 自律走行タクシーの商業化の拡大
パブリックブロックチェーンや仮想通貨に関して同氏は、「現在トラブルの多い時期にあるが、豊かな時代においては、その希少性によってさらに差別化が進む」と見ている。
技術の”フライホイール”が加速している。それは、米FRBが立場を変更するなど、マクロ的な転換が起こった場合、ベンチャーや公開市場における拡大や価値実現のチャンスは、2年前よりもさらに大きくなることを意味する。
ウィントン氏は、そのような状況下では株価が上昇するチャンスは「爆発的」だと表現した。
また、ARKの創設者でCEOのキャシー・ウッド氏は、技術革新は「良いデフレ」に貢献するものであり、「インフレの見通しを低下させ、このような技術革新に関連した製品やサービスのブームを引き起こすだろう」と付け加えた。
「破壊的イノベーション」に投資
2023年の市場見通しを語る際に、ウッド氏が最も強調しているのがFRBの政策に対する予測だ。
我々は、インフレ率の低下を示すあらゆるシグナルが出てきていると考えており、それはFRBが程なく「旋回(ピボット/路線変更)」すべきことを示唆している
ウッド氏は債券投資家の動きに言及し、長期金利が短期金利を下回っていると指摘。このような場合景気後退の可能性が考えられるが、FRBが政策金利に対する姿勢を変えていないことを批判した。
またARKは今後インフレ率が、FRBのターゲットとする2%まで低下すると考えており、今年政策金利が引き下げられる可能性があると指摘。もしこの予想が正しく、インフレと金利が予想を下回るようであれば、同社のポートフォリオは非常にうまくいくはずだと主張した。
ARKは、この数年で目覚ましいパフォーマンスを上げ、ウォール街で注目されたヘッジファンド。ハイテク、フィンテック、ロボット工学、ヘルスケア、ブロックチェーンなどの分野でイノベーションを推進する企業に投資する複数のETFを運用している。
創設者のウッド氏は敏腕投資家として知られ、「女性版ウォーレン・バフェット」とも称されているが、米金融当局による金融引き締めの影響もあり、ARKのポートフォリオも大きく影響を受け、主力商品であるイノベーション銘柄に重点を置くETFもピーク時から大きく下落した。最近では仮想通貨相場の地合い改善を受け、コインベース株を買い増ししていた。
AI分野への投資
米マイクロソフトは23日、チャットボット(自動応答システム)「ChatGPT」を開発した米OpenAIに、今後数年にわたって数十億ドル規模の投資を行う方針を発表。マイクロソフトは2019年と21年にもOpenAIに投資をしており、今回は追加投資となる。
ARKが指摘するように、AIへの投資が強化され、開発が加速する流れは既に動き始めている。
ARKは11日のVC投資に関するニュースレターで、「OpenAI」のビジネスモデルは、数兆ドルの価値があると評価。また、米航空宇宙企業スペースX社のスターリンクについて、低軌道衛星通信市場はまだ発展途上だが「重要なグローバル通信ネットワークであり、長期的には数十億ドルの収益を得ることが可能だ」と高く評価した。