ビットコインのもたらすリスクを懸念
国際通貨基金(IMF)は10日、エルサルバドルの財政状況に関する報告書を発表。昨年のエルサルバドル経済成長について評価しつつ、同国が発行準備を進める「ビットコイン債」を念頭に、採用拡大を見直すべきと論じた。
貧困国でありながらも積極的な投資を行うエルサルバドルは、2022年に推定2.8%の経済成長を実現しており、犯罪件数が激減。一方、昨年のインフレ率は7.2%に達した。
なお、この報告書はIMF職員がエルサルバドルなどの加盟国を直接訪問して得た知見を記したものである。IMF理事会で議論するために提出される予定だが、現段階では担当職員の意見を表わすもので、IMF理事会自体の見解ではない。
報告書は、ビットコインのもたらすリスクへ対応する必要があるとして、次のように指摘した。
調査や送金データから示唆されるように、これまでのところビットコインの利用は限定的であり、リスクは顕在化していない。
しかし、ビットコインが法定通貨としての地位にあることや、トークン債(デジタル資産法)を含む暗号資産(仮想通貨)の利用を奨励する新たな法改正により、その採用が拡大することへの懸念がある。
このような状況下で、金融や財政の安定性、消費者保護に対するリスクは依然として残っていると続けた。特に、リスク評価のために、エルサルバドル政府のビットコイン取引と、国営ビットコインウォレット「Chivo」の財務状況に対する透明性を高めることが不可欠だと指摘した。
Chivoウォレットでは、導入の初期段階で、顧客身元確認(KYC)プロセスが厳密でなかったためにID盗難が起きたことや、ウォレットと外部取引所の間で裁定取引を行うユーザーがいたことなどの問題が報告されている。
ビットコイン担保債権に向けた法整備
エルサルバドルは21年9月、世界で初めてビットコインを国の“法定通貨”として採用しており、23年1月には新たに「Digital Securities Law(デジタル証券法)」を可決したところだ。今回、IMFが言及したのは、この法案のことである。
同法案はエルサルバドル政府がビットコインを担保とした債権を発行できるようにするためのルールを盛り込んでいる。
エルサルバドルは、約1,300億円(10億ドル)分のビットコイン債を発行して資金調達し、課税を免除する租税回避地の「ビットコイン・シティ」建設や大量保有するビットコインの買い増しを計画しているが、ビットコイン・シティの実現性については懐疑的な見方も少なくない。
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報告書は、ビットコイン債によりビットコインをさらに買い増し資金を調達することには、財政リスクが大きく避けるべきだと意見した。
仮想通貨市場に法的リスクがあることや、仮想通貨市場のボラティリティ(価格変動性)などを考慮して、エルサルバドルは、ビットコインに対するエクスポージャー(ポートフォリオが、ある資産の値動きの影響を受けること)を拡大する計画を考え直すべきだとしている。
また、「2021年の勧告は引き続き有効」だとも述べた。IMFは、エルサルバドルに対して再三ビットコインのリスクを指摘してきた。ビットコイン法案が成立した後の2021年11月には、価格変動が激しいことを理由に、ビットコインを法定通貨から外すよう促している。
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エルサルバドルのビットコイン法とは
米ドルと並行する形で、ビットコインを法定通貨として認め、市民がビットコインを全ての決済シーンで利用できることを定めている。エルサルバドルのブケレ大統領が推進した法案で、2021年6月9日に議会によって可決された。ビットコインが国の法定通貨として正式に認められる初の事例となった。
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ビットコイン継続購入を宣言
一方で、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は22年11月、同国財務省がビットコインを毎日1BTCずつ購入していくと宣言している。
「Nayib Bukele Portfolio Tracker」によれば、ビットコインを大量保有する同国の投資パフォーマンスは、現時点でおよそ-50%の含み損状態にある。
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