TwelveFoldのオークション
「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」などのNFT(非代替性トークン)を手掛けるYuga Labsは7日、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)上でリリースするNFTコレクション「TwelveFold」のオークションを完了した。
7日午前7時頃(日本時間)に終了した24時間のオークションを通して、上位288の入社者がTwelveFoldを落札。最高入札額は7.1159BTC(約2150万円)、最低落札額は2.25BTC(約680万円)となった。
The TwelveFold auction has ended. Congratulations to the top 288 bidders – you will receive your inscription within one week. Valid bids that did not rank in the top 288 will have their bid amount returned to their receiving address within 24 hours.
— Yuga Labs (@yugalabs) March 6, 2023
「TwelveFold」は、300個のジェネレーティブアートコレクションであり、12×12グリッドを使用してデータを表現する数学に基づいている。コンピューターで作成された3D要素と手描きのエリアで構成され、アニメ・イラストを中心としてきたYuga Labsの現行プロジェクトと趣きが異なっている。
このコレクションは、23年1月にビットコイン上でローンチしたOrdinals Protocolで発行される。これまでイーサリアム(ETH)上でBAYCやCryptpunks、Meebitsといった人気NFTコレクションを展開してきたYuga Labsにとって実験的なプロダクトとなる。
Ordinalはビットコインコアの元開発者Casey Rodarmor氏が設計したプロトコルで、サイドチェーンやレイヤー2などを介さずNFT(デジタル・アーティファクト)をビットコインのブロックチェーンに直接保存する。
具体的には、ビットコインにおける1億分の1を表す最小単位“satoshi”(0.00000001 BTC =1 Satoshi)に通し番号をつけ、1satoshiに動画や画像データを含めることで、satoshi単位の検索、転送、受信を実現した。
Ordinalsは誕生したばかりで統計サイトやマーケットプレイスなどの基本的インフラが整っていないが、「履歴の保全、セルフカストディ、および所有権の基本原則」は抑えており、BTCネットワークのセキュリティ性能の高さを考慮しても今後の発展可能性は高いとYuga Labsは評価している。
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Ordinalsの課題
今後、Yuga Labsは落札者に対して1週間以内にTwelveFoldを配布予定。一方、オークションで落札できなくなった入札に使用されたBTCは24時間以内にアドレスに返却される。
なお、Yuga Labs側が入札分のBTCを預かっている状況について、セキュリティに関連する批判が生じている。主な主張は、大手プロジェクトが行った方法として前例が残ることで、詐欺師が悪用するリスクがあることから、「主要なプレイヤーはより良い模範を示す必要がある」というもの。
これらの批判に対して、Yuga Labsの共同設立者Greg Solano氏は機能が制限されているビットコインでNFTを発行する上で最低限必要なプロセスを取ったと説明。同氏は海外仮想通貨メディアThe Blockに対して以下のように述べている。
この分野は信じられないほど発展途上であり、TwelveFoldは当初から実験的プロジェクトと位置づけてきた。イーサリアムが当然のように備えるスマートコントラクト、それを使った中央管理者不要な取引など、多くのものはOrdinalsではまだ存在しない。
この市場は、Googleスプレッドシートで入札状況を管理し、ディスコードで相対取引(OTC)を行っている状況だ。既存のマーケットプレイスの多くはマルチシグエスクローを使っている。
Solano氏はまた、Ordinalsの今後の課題として、トラストレスな交換を可能にする新たなツールやマーケットプレイスの必要性を指摘。TwelveFoldのリリースが、Ordinalsに多くの開発者が集まる後押しになれば望ましいと加えた。
Coming soon: bitcoin NFT marketplace based on partially signed bitcoin transactions
— Oren Yomtov (@orenyomtov) February 13, 2023
Hopefully this will replace the current risky practice of trustful OTC ordinals swaps where one side has to take counterparty risk, or both sides trust a centralized escrow pic.twitter.com/G3juYl34Bk
仮想通貨関連開発企業Fireblocksは、Ordinalsのトラストレスな電子市場を構築している企業の一つ。同社リサーチャーOren Yomtov氏は、ビットコイン取引に基づくNFTマーケットプレイスについて近日公開予定と表明していた。「カウンターパーティリスクを伴うエスクロー取引や、OTCスワップといった現在の危険な慣習を代替するものになる」と期待を寄せた。
エスクローとは
エスクローとは、物品などの売買の際に第三者に仲介者になってもらうことによって、取引の安全を保障すること。「お金を払ったのに商品が送られてこない」などの問題を防ぐために行う第三者預託を指す。仮想通貨ではマルチシグ等の技術を活用することで、お金の持ち逃げなどの問題が発生しないように、エスクローを行うことができる。
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