損失保護機能をめぐる集団訴訟
DeFi(分散型金融)流動性ソリューションを提供するBancor(バンコール) の共同創設者らやDAO(自律分散型組織)は11日、投資家より集団訴訟を起こされた。
原告らは、米国テキサス州の地方裁判所に提出した訴状において、バンコールが「永続損失保護」という機能について投資家を欺いて損害を与えたとして、賠償金などを請求している。
また、バンコールは、表面上は自律分散型組織である「Bancor DAO」が運営しているとされているものの、実際には被告が資本、従業員、コードの管理など、バンコールのほとんどをコントロールしている状況だとも述べた。
被告としては、バンコールのGuy Benartzi共同創設者ら個人の他、BProtocol FoundationおよびBancor DAOを相手取っている。
自律分散型組織(DAO)とは
自律的に機能する分散型組織を指す。「Decentralized Autonomous Organization」の略。一般的な企業などとは違い、経営者のような中央管理者が存在しない。参加メンバーやアルゴリズムによって運営管理が行われる。
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申し立て内容
今回特に問題とされている「永続損失保護」は、仮想通貨を流動性プールに預け入れた際に発生しうる損失を補償する保険機能だった。
2つのトークンをペアで流動性提供(ステーキング)する際、片方のトークンが高騰(急落)した際に、プール内のバランスを取るために保有割合が変動することがある。このため、ユーザー資産の額が預入時よりも低くなるリスクが生じる。
バンコールは、このリスクを補償する機能を2020年のバージョン2より打ち出しており、投資を引き寄せた。
さらに、2022年5月に立ち上げたバージョン3では損失に対する即時「100%の保護」や「どこよりも競争力のあるリターン」を約束していた。しかし6月には、引き出しの急増によりリスクが現実化。バンコールは損失保護を「一時停止」としている。
原告はこれにより、原告と同じ状況に置かれた他の投資家は、合計数千万ドル規模の損失を被ったと申し立てる格好だ。
バンコールは当時、損失保護を停止した背景について、「2つの大規模な中央集権的組織」の破綻が影響したと述べていた。
この時期には、旧テラエコシステムの崩壊をきっかけとして仮想通貨業界で債務不履行の連鎖が起き始めていた。仮想通貨レンディングプラットフォームのセルシウスや仮想通貨VCスリーアローズキャピタル(3AC)が財政上の危機に直面していた。
このため、バンコールからも急激な資金引き出しがあり、そのことで損失保護が不可能になったとみられる。
証券法違反でも提訴
以上に加えて、原告はバンコールの流動性プロバイダープログラムは「拘束力のある投資契約」だったとも主張している。このため、証券法違反や証券取引法違反についても提訴し、損害賠償を求めた。
原告は、次のように主張している。
証券法は、バンコールやその流動性プログラムで起きたような危険について投資家に警告することを目的としている。
バンコールの流動性供給プログラムは拘束力のある投資契約であり、米国法に基づく証券だ。
被告が証券として登録し、開示要件を遵守していれば、原告およびその他の投資家はバンコールのプログラムに投資せず、投資額の50%に近い損失を回避できただろう。