捜査官を世界4大陸に派遣
米内国歳入庁(IRS)犯罪捜査局は18日、6月より暗号資産(仮想通貨)、分散型金融(DeFi)を利用した租税回避やサイバー犯罪と戦うために、世界の様々な地域に駐在官を派遣すると発表した。
ピアツーピア取引やミキシングサービスを使った犯罪や脱税などにも対処する。
派遣される四人の駐在官はサイバー犯罪捜査に関する高度な専門知識を持っており、それぞれオーストラリア、コロンビア、ドイツ、シンガポールに赴く。アジア、ヨーロッパ、南米、オーストラリアと世界四大陸で業務を行うことになる。
IRS犯罪捜査局のジム・リー長官は、次のように意義を説明した。
サイバー犯罪と効果的に闘うためには、IRSと協力する外国の機関も、米国と同じツールや専門知識を確実に使えるようにする必要がある。
この夏、熟練した特殊捜査官4名を4大陸の戦略的拠点に派遣し、現地のパートナーと関係を引き続き構築し、世界規模で効果的にサイバー犯罪と戦うことができるようにする。
なお、今回の派遣は一時的なものであり、プログラムは6月から9月までの120日間を予定している。
コロンビアに派遣される捜査官は、マネロンや個人情報盗難などの捜査で経験がある。ドイツに赴く捜査官は、コンピュータを使った捜査のスペシャリストだ。オーストラリアを担当する捜査官は、仮想通貨の脱税、マネロンなどの犯罪捜査を監督してきた。
シンガポールに派遣される捜査官は、マネロン、ダークネット、金融犯罪や仮想通貨取引所関連の詐欺などで捜査を実施してきた人物だ。
仮想通貨は国境を超える性質を持つため、これまでにも犯罪捜査における国際協力の必要性が唱えられてきた。
IRSは、2021年に「サイバー犯罪鑑識サービス室」を設立するなど、仮想通貨に対する捜査体制を強化しているところである。
ウクライナにも訓練を提供
IRSの犯罪捜査部門は、ウクライナの当局にもブロックチェーン分析ツールやサイバートレーニングを提供しているところだ。主に、経済制裁の対象となっているロシアの新興財閥が、制裁回避のために仮想通貨を使用することを阻止する目的がある。
IRSはこのトレーニングでブロックチェーン分析企業チェイナリシスと協力している。チェイナリシスのマイケル・グロナガーCEOは、次のようにコメントした。
寄付金の受付から、ランサムウェア攻撃や制裁回避に至るまで、仮想通貨はウクライナにおいて、良い意味でも悪い意味でも前例のない役割を果たしている。
当社は、違法なブロックチェーン活動を発見し捜査するためのデータ、ツール、トレーニングをウクライナの法執行機関に提供するIRSの取り組みに賛同する。
ウクライナ政府は、ロシアによる侵攻開始以来、仮想通貨やNFT(非代替性トークン)などで寄付金を受け取ってきたことでも知られている。