半導体開発に向けた日米共同声明
半導体や先端・重要技術について、日米両国が共同声明を26日にも発表する見通しであることが明らかになった。中国が国際舞台での影響力を高める中、技術開発で中国に対抗するための動きと見られている。
読売新聞が確認した共同声明の原案によれば、日本と米国は共に、次世代半導体開発のロードマップを策定する方針を示している。半導体のサプライチェーンを強化するだけでなく、次世代半導体の技術開発と人材育成に関する具体的な工程表を作成することを目指している。
この共同声明の詳細は、西村経済産業相とレモンド商務長官が26日に米デトロイトで行う会談で確定する予定だ。
日米が次世代半導体開発の共同策定を図る背景には、安全保障の観点から見た米中対立の激化があると見られる。米国は過去1年間に中国への警戒態勢を強化してきた。
9月にバイデン政権は、米国の技術や個人情報を狙った対米投資を抑制する狙いで投資審査を強化すると、10月には半導体や半導体製造装置を対象とした対中輸出規制を課した。その一方で中国のインターネット規制当局は今年5月に米国のマイクロンテクノロジー社(MU.O)の製品使用を禁じている。
この輸出規制は仮想通貨市場にも影響している。米GPUメーカーNVIDIAは、イーサリアム(ETH)がPoS(プルーフオブステーク)に移行してマイニングが終了したことで、仮想通貨市場でのGPU販売機会を失った。しかしながら、メタバース(仮想空間)やAI(人工知能市場)の成長に伴い、GPUの需要が高まることが予想され、同社はその技術領域に注力している。
特に、OpenAIのチャットボットChatGPTを始めとする人工知能ブームは、GPUの需要を急増させました。さらに、米国が中国へのAIチップ販売を禁止したこともあり、中国の大手企業(例:Baidu)は現在、市場で入手可能なNVIDIAのAI GPUを買い占めていると、DigiTimesは報じている。
また、米国内のサプライチェーン強化を目指すインテルは、「IDM 2.0」戦略の下で半導体製造の内製化を加速している。これに伴い、4月18日のロイターの報道によれば、インテルはビットコイン採掘チップ「Blockscale 1000 Series ASIC」の受注を、10月20日までに停止する方針を明らかにした。
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日米の協調体制
共同声明の草案では、「経済的繁栄と経済安全保障の強化、さらに地域の経済秩序の維持・強化には、日米間の協力の深化が必要不可欠である」と記載されている。また、アメリカ政府が近く設立する「国立半導体技術センター」と、日本政府が昨年設立した「技術研究組合最先端半導体技術センター」が連携することも予定されている。
5月18日には、岸田総理と西村経済産業相がインテル、サムスン電子、IBMなどのグローバル半導体企業のトップを総理大臣官邸に招いて、AIをはじめとした最先端技術を支える半導体の重要性についての意見交換会を開催したばかり。
21日に日米両政府は、量子コンピューターや半導体研究の推進を目指し、教育分野での協力覚書を締結した。その一環として、米企業が東京大学などに対し、計2億1千万ドル(約290億円)の投資を行うことが決定している。
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