はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習 WebX
CoinPostで今最も読まれています

メタバース関連法規を「未成年取引やなりすまし」を例に解説|法律事務所ZeLo寄稿 連載:メタバースx法律②

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

メタバースの可能性と法規制

1980年代頃から始まったコンピューター上に仮想空間を作る試みは、SNS、オンラインゲーム、Eコマースなどの要素を取り入れたものとなり、近年「メタバース」と呼ばれるようになりました。メタバースのプラットフォーム上では、アバターを操作して他者と交流したり、仮想空間上で商品購入などの消費行動をしたりと、独自の経済圏が拡大しています。NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)の普及も後押しし、市場はさらに拡大傾向にあり、メディアやエンターテインメントのほか、教育、小売りなど様々な領域でのメタバース活用が期待されています。

一方で、メタバース事業に関わる法規制は非常に幅広く、取引や金融規制、知的財産、データなど、様々な法規制への留意が必要です。そのため、連載としてメタバースに関わる法規制について、幅広くご紹介します。

今回は、前回に引き続き、「メタバース×取引に関する法律」に焦点を当て、メタバース上で行われる取引が非対面で行われることが通常であることに着目し、未成年取引やなりすましに関わる法規制について解説します。

メタバース×法律の特徴

メタバースについては、現状具体的な法制度が十分に整備されていません。そのため、事業者がメタバースビジネスに参入するにあたっては、

  • 取引の観点
  • 権利保護の観点

に分けて、主に以下のような規制や法的課題の検討が必要です。

取引の観点での規制・法的課題

  1. デジタルコンテンツが取引の対象:民法上の所有権との関係の整理など
  2. 越境取引が行われる:準拠法や裁判管轄の整理など
  3. 非対面プラットフォーム上の取引
    (1)未成年者による取引やなりすましへの対処
    (2)消費者保護への対処など
  4. 暗号資産等のデジタル通貨が決済の主流:金融規制との関係の整理など

権利保護の観点での規制・法的課題

  1. メタバース内で様々な企業・個人が創造したデジタルコンテンツの権利侵害の可能性:著作権その他の知的財産権との関係の整理など
  2. プライバシー、名誉、人格権に対する侵害の可能性:権利侵害に対する救済の確保など

前回の記事では、取引の観点での規制・法的課題のうちの1・2について解説しましたので、本記事では3(1)の法的課題について、仮想事例を用いて解説します。

メタバース×取引に関する法律(そのうち、非対面プラットフォーム上の取引に関する法律)

未成年者取引の民法上との関係について

事例:
未成年者であるBさんは、嘘の生年月日を入力してメタバース空間X内で使用できるアイテムYを購入した

民法上、未成年者が、法定代理人(代表例は両親)の同意を得ずにした取引は原則として取消可能(民法第5条第2項)とされ、例外的に「詐術」による申込みを行った場合などには未成年者の取消が制限(民法第21条)されています。

この点、経済産業省が公開する「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和4年4月)」の中では、事業者が設定する「未成年者か否かの確認のための画面上の表示が未成年者に対して、警告の意味を認識させる内容の表示か、取引の程度などに応じて取引を困難にする年齢確認の仕組みとなっているかなど、個別具体的な事情を総合考慮した上で実質的な観点から判断されるものと解される」とされており、実際のサービスの仕様なども考慮要素になると考えられます。

対応方針としては、実際のサービスの提供にあたり、年齢の申告に加えて、利用規約、各取引時のポップアップなどにおける年齢確認などの表示のほか、未成年者による利用を認める場合にはアバターなどへのフラグ表示などの技術的対応も考えられます。

なりすまし取引の民法との関係について

事例:
Cさんは、友達のDさんのIDとパスワード、そしてアバターを利用してメタバース空間X内で使用できるアイテムYを購入した。

なりすましにより取引が行われていた場合、原則として本人(仮想事例のDさん)との間では契約は成立しません。

ただし、例外的に、たとえば、
①DさんがCさんに事前に何らかの代理権を与えており、
②CさんがDさんの名義で、
③①の代理権の範囲を超えた行為を行った場合に、
④Cさんの取引相手がDさんの行為であると信じたことに善意無過失(=実際にはCさんが行為を行っていないと知らず、かつ、知らないことに過失がない場合)
である場合には本人(Dさん)との間で表見代理法理が適用され契約が成立する可能性があります(民法第110条)。

このように、なりすましによるメタバース上の取引を防ぐためには、その対応方針として、利用規約などで、IDやパスワードなどの基本情報の貸出しを禁じる、本人確認や二段階認証などの技術的対応を採ることが考えられます。

最後に

以上のとおり、今回は、メタバース空間で経済的取引が行われることに着目して、メタバース×取引に関する法律のうち、非対面プラットフォーム上の取引に関わる規制、特に未成年取引やなりすましについて解説しました。次回は、非対面のプラットフォーム上の取引のうち、消費者保護への対処について解説します。

また、次々回以降はそのほかの取引に関する法律や、メタバース×金融規制に関する法律、メタバース×知的財産に関する法律などについて解説します。特に知的財産のパートでは、メタバース上でやりとりされるNFTやトークンにまつわる法規制、デジタルツインやアバターに装着可能なスキンなどのメタバース上のコンテンツと知的財産権との関係を解説していきます。

法律事務所ZeLoでは、ブロックチェーン・暗号資産の流行前からその潜在性に注目して研究・実務を進めてきた知見を活かし、メタバースビジネスに関しても多数のクライアントへ法的アドバイスを提供しています。2022年には、ブロックチェーン・暗号資産・NFT・メタバースなどのweb3分野を専門的に取り扱うチームを立ち上げ、より専門的なサービスを提供できる体制を整えています。スポットでの相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

関連:法律事務所ZeLo・外国法共同事業 公式サイト

寄稿者:弁護士 澤田 雄介 (第二東京弁護士会所属) 法律事務所ZeLo・外国法共同事業
2011年京都大学法学部卒業、2013年慶應義塾大学法科大学院修了、同年司法試験合格。2014年検事任官。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2019年佐藤総合法律事務所入所。2021年法律事務所ZeLo参画。主な取扱分野は、web3(ブロックチェーン・NFT・暗号資産・メタバースなど)、訴訟・紛争解決、危機管理、M&A、ジェネラル・コーポレート、人事労務、ベンチャー・スタートアップ法務など。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
11:05
「ビットコイン・アフターダークETF」申請 夜間取引時間の高パフォーマンスに着目
ニコラス・ウェルスが米国夜間取引時間のみ仮想通貨ビットコインを保有する新たなETFを申請した。夜間の高リターン傾向に注目したものだ。ヘッジ型ETFも同時申請した。
09:50
プライバシー重視のステーブルコイン「USDCx」、Aleoのテストネットでローンチ
仮想通貨のステーブルコインUSDCを発行するサークルは、プライバシー機能を持つL1ブロックチェーンAleoのテストネットでUSDCxがローンチされたことを発表。ユースケースなどを説明した。
09:48
仮想通貨市場は政策待ち姿勢 ビットコインとイーサリアムに資金集中=Wintermute分析
Wintermuteの最新市場分析によると、仮想通貨市場は米FRBや日銀の政策決定を前に様子見姿勢を強めている。資金はビットコインとイーサリアムに集中し、レバレッジ水平は低位。先週金曜の急落後も市場は底堅さを保ち、質への選別が進む。レンジ相場継続の見通し。
09:05
プライバシー重視ブロックチェーン「Octra」、30億円規模のICO実施へ
完全準同型暗号技術を採用する仮想通貨プロジェクト「Octra」が2000万ドル規模のトークンセールを実施する。これまでも分散化重視で資金調達を行ってきた。
08:40
コインチェック、NACの新規取扱いを検討 NOT A HOTELとRWA領域で協業強化へ
コインチェックがNOT A HOTEL DAOの暗号資産NACの取扱い検討とRWA領域の協業強化を発表。NACの活用や共同サービスの開発方針について解説します。
08:20
「仮想通貨市場は次の10年間で最大20倍成長する可能性」Bitwise幹部
Bitwiseの最高投資責任者は、仮想通貨市場は次の10年間で10倍から20倍まで容易に成長する可能性があるとの見方を示した。ビットコインなどを例に挙げ、根拠を説明している。
12/09 火曜日
17:40
リミックスポイント、エネルギー事業の中期経営計画を発表 3年で営業利益3.7倍目指す
リミックスポイントが2027-2029年度の中期経営計画を発表。エネルギー・蓄電事業で売上高692億円、営業利益91億円を目指す。日本蓄電池と提携し系統用蓄電所7カ所を共同運営。同社は242億円超の仮想通貨も保有し、多角的な事業展開を推進。
15:52
補正予算の国会質疑で仮想通貨税制が議題に 国民民主党が質問、高市首相は「与党税調で検討中」と答弁
補正予算の国会質疑で暗号資産(仮想通貨)税制が議題に。国民民主党は雑所得として最高税率55%が適用される現行制度を見直し、分離課税化を要求。高市首相は税制改正大綱に基づき与党税調で検討を進めていると答弁した。
13:35
米XRP現物ETF、全期間で純流入を記録 約1459億円に到達
米XRP現物ETFが上場以来全期間で純流入を記録し、約1,459億円に到達。仮想通貨ETF史上2番目の速さで8億ドルを突破し、機関投資家の継続的な買いが続いている
13:20
カナダ税務当局、仮想通貨利用者の4割が未申告と推定
カナダ歳入庁が過去3年間で仮想通貨関連監査により1億カナダドル以上を徴収したが、2020年以降刑事告発は行われていない。同庁は仮想通貨プラットフォーム利用者の40%が未申告または高リスクだと推定している。
12:50
『ガス先物市場』、ヴィタリックがイーサリアム手数料を安定させるアイデアを披露
仮想通貨イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏がガス代先物市場を提案した。将来の手数料をヘッジ可能にする構想であり、コミュニティ内で議論が活発化している。
12:00
XRPの買い方|おすすめ取引所と購入手順を図解【初心者向け】
暗号資産(仮想通貨)XRPの特徴から買い方、将来性、リップル社の最新動向や取引所の選び方も紹介します。ドナルド・トランプ次期米大統領の思惑やSECゲンスラー委員長交代による規制環境の変化、価格への影響を分析。
11:45
米大手銀行CEO、上院議員と仮想通貨市場構造法案を協議予定 ステーブルコインの利息付与に反対表明へ=報道
バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴのCEOが9日、上院議員と会談し仮想通貨市場法案を協議する。銀行側はステーブルコインへの利息付与に反対し、仮想通貨分野での競争能力確保を求める姿勢だ。
11:23
テザーのUSDT、アブダビで「法定通貨参照トークン」認定範囲が拡大 9チェーン追加
テザーのUSDT、アブダビで法定通貨参照トークンの認定範囲を拡大。新たに9つのブロックチェーンで規制業務が可能に。USDC、USD1、RLUSDも承認済み。UAEがステーブルコイン規制拠点として台頭。
10:43
スイ(SUI)の買い方|元Meta開発者が手掛ける仮想通貨の将来性、おすすめ取引所
仮想通貨(暗号資産)スイ(SUI)の特徴や将来性、国内取引所での購入方法を初心者向けに詳しく解説します。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧