FRB議長の講演
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日、経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」の講演で、インフレ率が目標の2%に向けて持続的に下がっているとの確信を深めたとし、利下げを行う時が来たとの見解を示した。
金融政策を調整する段階に来たとし、方向性は明確であると説明。利下げの時期やペースについては、今後のデータや見通し、リスクバランスに依存すると語った。
8月は金融政策を決定する「FOMC(連邦公開市場委員会)」の会合がなく、その代わりにジャクソンホール会議でのFRB議長の講演は注目度が高い。今回のパウエル氏の講演では、利下げに関するコメントに加え、米国の雇用や景気についてどのような発言があるかにも関心が集まっていた。
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利下げについては、9月のFOMCの会合までに8月の雇用統計やCPI(消費者物価指数)などの発表があるため今回は踏み込んだ発言は行われないとの見方が上がっていたが、その見方の通りにパウエル氏は今後のデータなどを見ていく考えを示した。9月の利下げ開始自体は、市場はすでに織り込んでいる。
また、8月5日前後の金融市場の急落を招いた雇用についてパウエル氏は「さらなる労働市場の冷え込みは求めも歓迎もしない」と発言。そして、「強い労働市場を支えるためにできることは何でもする」と話した。
21日に公開された米労働統計局の年次ベンチマーク改定によると、2024年3月までの1年間の米雇用者数の増加は、従来の発表より約81万8,000人下方修正される見込みで、月平均で約6万8,000人減となる可能性があり、データは雇用環境がもっと前から冷え込んでいることを示唆している。
今回の講演については、今後の政策方針を明確には示さなかったとの声も上がっている。まだ次のFOMCまでには日にちがあったり、政策を間違えば再度インフレを招いたり、経済の軟着陸(ソフトランディング)ができなくなったりするため、パウエル氏は慎重な姿勢を示した。
仮想通貨相場
パウエル氏の講演では今後の政策方針が明確に示されなかったものの、FRBが9月に利下げを開始するとの見通しを裏付ける声が多い。利下げは一般的に、暗号資産(仮想通貨)などのリスク資産にとって追い風となる。
ビットコインの価格は、パウエル氏の講演を受けて本記事執筆時点で6万4,000ドル(約923万円)台で推移しており、前日比で6%以上の上昇となっている。
また、利下げ期待を受けてNYダウをはじめとする米国のハイテク・IT株が買われ、金利差縮小によりドル円は急落し145円を割り込み、144.3円となった。
これまでも9月にFRBが利下げをするとの期待は高まっていたが、仮想通貨相場は株式市場に比べて反応が鈍かった。この状況についてアナリストは「資金流入の順番待ち」と指摘している。
今後の焦点は、利下げの実施そのものではなく、その幅にある。9月のFOMCで通常の倍のペースとなる0.5ポイントの利下げが行われる可能性は、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedWatchツールによれば34.5%であり、これは22日時点の24.0%から上昇している。
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