「仮想通貨は法的保護の対象外」
中国深センの裁判所は、暗号資産(仮想通貨)は賃金の支払い手段として使用できないとの判決を下した。法定通貨とは異なり、労働法の保護の対象外であるとしている。地元メディアが28日に報じた。
一方で上海では、仮想通貨の個人的所有は合法と明言する判例が出ており、中国で仮想通貨が法的に複雑な位置にあることを窺わせる。
深センの事件は、原告がある企業を訴えたものだ。原告は2021年6月にこの企業に入社し2か月の試用期間付きでエンジニアとして勤務することを規定した「労働契約」に署名。その後解雇された。
原告は、入社時に月給4万5,000元(約94万円)で会社と合意し、そのうち2万元は銀行振込、残りの2万5,000元はステーブルコインUSDTで支払われるものとの取り決めがあったと主張した。このうち、仮想通貨部分は在任中に支払われなかったとしている。
原告は、会社との交渉が決裂した後、入社時に合意した賃金基準に基づく滞納賃金の返還と違法行為の補償を求めて裁判所に訴訟を起こした格好だ。
裁判所は判断の上で、2021年9月に中国当局が発行した、本土で仮想通貨取引活動を禁止する通知を参照している。この通知は、仮想通貨は当局が発行したものではなく非合法だという内容を盛り込むものだ。
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裁判所は、このためUSDTは「通貨として市場に流通すべきではないし、流通させることもできない」としている。
さらに、現存する証拠は会社が2万5,000元の追加給与を支払うことに同意したことを証明するには不十分だとも指摘した。
このため、労働契約の不法終了に対する補償金の支払いは認めつつも、USDTによる追加給与は「法令の規定に違反し、公序良俗に反する」として認めなかった。
裁判所は、労働者には仮想通貨による賃金の支払いを拒否する権利があり、そうでなければ法的保護を受けることができなくなると注意喚起している。
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仮想通貨は「財産的属性」持つとの判例
一方、上海の裁判所は11月18日、デジタル資産は中国法の下で「財産的属性」を持ち個人が所有することは違法ではないとしている。
この裁判はICOに関するものであり、裁判官は、仮想通貨による資金調達は禁止されていると明言した。また、仮想通貨の違法な取引で生じた損失について法的保護を受けることはできず、犯罪を疑われることもあると続けた。
仮想通貨をビジネスで使ってはならない理由としては、犯罪行為、マネロン、詐欺に使われる可能性や、仮想通貨の匿名性などによる金融秩序の混乱を改めて挙げた。
その一方で、仮想通貨は「仮想商品の一種であり、財産的属性を有していて」個人が所有すること自体が「法律で禁止されているわけではない」と述べている。
この判決について、仮想通貨コミュニティの一部からは、中国が仮想通貨に対する姿勢を軟化していることの徴ではないかとの声も上がった。
6月にBybitが在外中国人ユーザーにサービスを解放した際にも、同様の憶測が浮上したところだ。
米国で仮想通貨を支持するドナルド・トランプ氏が再選するなど、仮想通貨に追い風が吹く中、仮想通貨コミュニティは中国の方針転換にも期待している。ただ、現在のところ中国政府の仮想通貨に対する厳しい姿勢が取り下げられたわけではない。
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