2025年に期待される「大きな構想」とは
米大手ベンチャーキャピタル企業アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)は4日、2025年の暗号資産(仮想通貨)分野で期待できる展開について予想を発表した。同社の「大きな構想」リストは、AIエージェントの自律的活動から、各国による国債のオンチェーン化まで多岐にわたるが、a16zは1年を通して仮想通貨市場が活発化し、主流での採用が進むというトレンドが基盤にあると見ている。
A few of the things we’re excited about in crypto (2025)
— a16z crypto (@a16zcrypto) December 4, 2024
→ An AI needs a wallet of one's own to act agentically
→ Enter ‘decentralized autonomous chatbots’
→ As more people use AI, we’ll need unique proof of personhood
→ Going from prediction markets… to better information… pic.twitter.com/eT6kCGBZDf
まず、AI関連では、AIボット「Truth Terminal」が独自のウォレットを付与されたことで、同ボットが関与したミームコイン「GOAT」が暴騰した例に見られるように、 AIエージェントとして活動する可能性に注目している。
同社パートナーのCara Wu氏は、AIエージェントの独自ウォレットの保有により、「クリエイティブコンテンツの新たな機会」が生まれると指摘。AIエージェントのネットワークが独自のウォレット、署名鍵、仮想通貨の保管を始めると、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)内のノード運営や検証など、新たなユースケースが出現すると予測している。
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分散型自律AIチャットボットの台頭
a16zは、信頼できる実行環境(TEE)を活用した分散型自律AIチャットボットの可能性も示唆した。これらのAIチャットボットは、ソーシャルメディアコンテンツの運営や関連資産の管理を行う。またパーミッションレスのノードで実行され、コンセンサスプロトコルで調整されることから、完全に自律的な10億ドル規模の存在になる可能性もあるとa16zは予測した。
同社CTOのEddy Lazarin氏は、AIの普及に伴い、オンライン上のなりすまし、ディープフェイク、詐欺などを防止するために、個々人の「人間性の証明」も必要になると指摘した。
「人間性の証明」はデジタルIDを確立するための重要な構成要素であり、プライバシーを保護する「ユニークさ」という特性が、信頼できるWebを構築するための、次の「大きな構想」となると同氏は主張した。
ステーブルコインの採用
a16zクリプトの投資パートナー、Sam Boner氏は、2025年には企業によるステーブルコインの採用が進むと見ている。
特に、カフェやレストラン、コンビニなど、ブランド力を持ち、固定客を抱えた決済コストに敏感な中小企業が、クレジットカードからステーブルコイン決済に切り替えることになるだろうと同氏は指摘。これらの企業は、対面によるビジネスを展開しているため、クレジットカード詐欺防止の恩恵よりも、取引手数料の影響が大きいからだ。
また、より規模の大きい企業も、仲介者を省いてコスト削減に繋げるため、ステーブルコインを採用すると予測。詐欺防止や身元確認など問題については新たな解決策を模索するだろうと付け加えた。
国債のオンチェーン化
ステーブルコイン発行者は米国短期国債を主な担保として追加しているが、a16zクリプトの政策責任者であるBrian Quintenz氏は、政府自体が国債をブロックチェーン上で発行する可能性を示唆した。
同氏は、国債をオンチェーン化することで中央銀行デジタル通貨(CBDC)による監視の懸念なしに、政府が支援する利子付きのデジタル資産が誕生すると指摘する。例えばイギリスでは、金融行為規制機構(FCA)が、サンドボックスを通じてデジタル証券を検討していると説明した。
民間では、すでに国債トークン化の取り組みが進んでいる。トークン化資産の分析プラットフォームrwa.xyzによると、米大手資産運用会社ブラックロックの米国債トークン化ファンド「BUIDL」を含むトークン化された国債市場は、2023年初めから今年7月までの1年半で、1億ドル(160億円)から18億ドル(2,898億円)と急成長を遂げた。
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仮想通貨インフラの進化
a16zは2025年、インフラの面でも仮想通貨ユーザーにとって使いやすい環境が充実すると予測している。
- 既存インフラの再利用による開発効率の向上:製品・サービスの差別化に集中
- ユーザー目線のインフラ設計と開発:プログラム可能なブロックスペースや成熟した開発者ツール、チェーンの抽象化で可能に
- 「直感的」で分かりやすいユーザーインターフェイスに焦点:複雑な技術的要素は舞台裏へ、「シンプルなデザインと明確なコミュニケーション」
- 仮想通貨に特化したアプリストアやマーケットプレイスの拡大:World Appマーケットプレイス(Worldcoin)、ソラナのスマホユーザー向けのアプリストアなど
現在、仮想通貨保有者のうち積極的な利用者は5%~10%に過ぎないが、インフラ改善とユーザー体験の向上、また手数料の低下により、この状況が変化する可能性がある。a16zは「すでに仮想通貨を保有している6億1,700万人」を惹きつけ、新たな利用へと導くことで、仮想通貨市場はさらなる発展が期待できると予測している。
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