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アービトラム・スタイラスがもたらすWeb3開発の新時代

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

暗号資産(仮想通貨)アービトラムは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決し、トランザクション速度を向上させるレイヤー2プロジェクトです。

レイヤー2プロジェクトのマーケットシェアでトップを誇り、Web3業界を牽引しています。

2024年9月4日、アービトラムネットワーク開発元のオフチェーンラボ(Offchain Labs)は、多言語でスマートコントラクトを開発できるプロダクト「アービトラム・スタイラス(Arbitrum Stylus)」のメインネット稼働開始を発表しました。

本記事では、アービトラムの次世代の技術ツールであるアービトラム・スタイラス(Arbitrum Stylus)の主な概要とWeb3ゲームなどの開発にどのようなメリットがあるのかを紹介します。

公式X(旧Twitter)https://x.com/Arbitrum_jpn

目次

  1. 暗号資産領域における開発者数の現状
  2. アービトラム・スタイラス(Arbitrum Stylus)とは
  3. アービトラム・スタイラスを活用できるフレームワークの紹介
  4. アービトラム・スタイラスとEVMの比較
  5. アービトラム・スタイラスを使ってWeb3ゲームを開発するメリット
  6. アービトラムで構築されたネットワーク
  7. アービトラムで構築されたWeb3ゲーム
  8. 今後の予定(アービトラム・スタイラス)
  9. まとめ

暗号資産領域における開発者数の現状

出典:Electric Capital

Electric Capitalが発表しているレポートによると暗号資産領域における月間開発者数は2024年7月時点で2万6千人ほどです。一方でRustやC++などの主要言語を使用する開発者数は数百万人規模に及ぶと言われています。よって、暗号資産領域における開発者数は依然として少なく、エンジニア数を増やしていくことがブロックチェーン分野の今後の成長と密接に関係しています。

ブロックチェーン分野におけるエンジニア数を増やしていくのに重要なのは既存の主流言語でスマートコントラクトの構築が可能であることです。ブロックチェーンエンジニアはエンジニア業界において比較的新しく、学習コストも高いために数が少ないです。そこで、既存の主流言語を使って開発できることはエコシステム成長のために重要な要素となります。しかし、スマートコントラクトの開発においてEVM独自の言語であるSolidity言語が主流でありRustやC++などの言語を使って開発をすることが困難でした。

その点においてアービトラム・スタイラスはEVM互換性を持ちながらRustなどの主流言語でスマートコントラクトを開発することが可能であり、ブロックチェーン領域への参入障壁を減らすことに成功しています。

アービトラム・スタイラス(Arbitrum Stylus)とは

オフチェーンラボ(Offchain Labs)が開発を先導する技術ツールです。アービトラム・スタイラスはアービトラムのレイヤー2であるアービトラム・ワン(Arbitrum One)やアービトラム・ノヴァ(Arbitrum Nova)、ブロックチェーン開発用フレームワークのアービトラム・オービット(Arbitrum Orbit)にも使用することが可能です。

マルチVM

EVM(イーサリアム仮想マシン)とWASM(ウェブアセンブリ)を統合しているためアービトラムはマルチVMと表現しています。EVMとWASMが相互運用性を持っているため例えばRustコントラクトをEVMコントラクトから呼び出し、ZigコントラクトからC++コントラクトを呼び出すことができます。

EVM互換性を持つので既にEVM上に存在するユーザーやウォレット、トークンなども引き続き利用することが可能です。例えばOpenSeaなどのNFTマーケットプレイスと直接連携し、ゲームアイテムの取引を容易に行うことができます。開発者はSolidityで開発していたプロジェクトの移行が簡単です。

複数のプログラミング言語が使用可能

アービトラム・スタイラスの最大の特徴は一つのチェーン上で複数のプログラミング言語で開発を行える点です。複数のプログラミング言語を1つのチェーンで利用できるため、エンジニアリング業界において主要なプログラミング言語でWeb3開発に参入できるため多くの開発者の参入も見込めます。

高速なトランザクション処理と低いガス代

アービトラム・スタイラスはEVMと比較して非常に高速です。WASMで実行することで73倍高い処理速度を誇り、高度な計算レベルが要求されるほどアービトラム・スタイラスの優位性が高まります。ガス代に関しても3分の1に削減され、EVMよりもガス効率が非常に高いです。これらを実現できた理由としては3つあります。

  • EVMよりもWASMの方がフォーマットレベルで効率性が高い
  • Web2開発者が開発を進めるWASMは巨大な開発コミュニティがあり、設計時に高度なパフォーマンスプロファイリングが行われている
  • Rustコンパイラのパフォーマンスが非常に高い

さらに、メモリに関してもアービトラム・スタイラスが優位です。WASM VMがメモリ管理を行うプロセスにより計算集約的なタスクを可能にし、EVMと比較してトランザクション内で使用するメモリを約100〜500倍も節約することが可能になります。

アービトラム・スタイラスを活用できるフレームワークの紹介

アービトラム・オービット(Arbitrum Orbit)

アービトラム・オービット(Arbitrum Orbit)は、独自チェーンをレイヤー2、レイヤー3として構築することができるフレームワークです。このフレームワークは拡張性と柔軟性に優れており、開発者の多様なユースケースに対応することができます。ゲーム業界において主要な開発言語のC++などをサポートしているため開発者に採用されるケースが増大しています。アービトラム・オービットやその他スケーリングソリューションに関する解説は以下の記事が参考になります。

関連記事: 初心者でも分かるアービトラム:次世代スケーリングソリューション

アービトラム・オービットの最新アップデート情報

2024年8月7日にアービトラム・オービットチェーンのカスタムガストークンとしてUSDCを追加し、インフラストラクチャをアップグレードすると発表しました。これによって開発者はアービトラム・オービットチェーン上に構築をする際にガス代のオプションとしてUSDCを選択できるようになりました。USDCはステーブルコインであり、米ドルにペグされているため価格変動が穏やかです。コスト予測が容易になるなど利便性が大幅に向上します。

総額1000万ドルの助成金プログラム

2024年11月27日からアービトラム・オービットの開発者向けに総額1000万ドルの助成金プログラムが開始されました。助成金はブロックチェーン開発者プラットフォーム「Alchemy」を通して申請できます。

助成金申請ページ: https://www.alchemy.com/arbitrum-grant

アービトラム・スタイラスとEVMの比較

EVMとWASMのガス代から実行効率を検討します。計算量によって変動しますが、アービトラム・スタイラスはEVMと比較し、約10〜100倍ほどガス効率が高いです。主にWASMのランタイム効率が高く、Rust、C、C++コンパイラによって生成されるコードが高度に最適化されているためです。

a+bなどの算術演算(ADD命令)における流れの比較

EVM

  1. ガス料金を支払うため、メモリ内テーブルを複数回参照
  2. 無効になっている場合でもトレースを検討
  3. シミュレートされたスタックから2つのアイテム(a,b)をポップ
  4. それらを加算する
  5. 結果を出力

アービトラム・スタイラス

  1. 単一のx86またはARM ADD命令を実行する

上記のようにアービトラム・スタイラスでは工程が短縮化されているためガス代が非常に安くなっていることがわかります。

アービトラム・スタイラスを使ってWeb3ゲームを開発するメリット

アービトラム・スタイラスではEVMチェーンで提供される全ての機能を保持し、更にプラスで追加機能を活用して開発することが可能です。以下に挙げる3つのメリットは他のEVMチェーンのメリットに’追加’のものとなります。

  • Solidityと比較し複雑な計算が安価になる
  • プログラミング言語選択の柔軟性が高い
  • 従来にはない新しいプロダクトを開発できる

Solidityと比較し複雑な計算が安価になる

Solidityと比較してトランザクションを安価に処理することが可能となり、開発者やユーザーにとってコストを大幅に削減することに成功しました。その結果、多くのゲームロジックやアクション、インベントリやマップなどのゲーム資産をオンチェーン上で処理することが可能となり、オンチェーンゲームの経済性が大幅に向上しました。

プログラミング言語選択の柔軟性が高い

ゲーム業界において主要な開発言語はC++言語であり、C++などのゲーム開発言語を採用しているアービトラム・スタイラスは移行性、学習コストにおいてリソース最適化が見込めます。C++やRustなどの言語で開発をしていたエンジニアが慣れ親しんだ言語のロジックや型、テストを共有してSolidityコントラクトを統合することが可能になりました。結果、Web3ゲームの開発への参入障壁を小さく、開発プロセスをシンプルにできます。

従来にはない新しいプロダクトを開発できる

ゲーム資産や各ロジックに加え、例えばプライバシーを保護するトランザクションやゼロ知識証明を用いたアイテムの公正な配布など新しい試みを実践することが可能となりました。今後はアイデア溢れる最新技術のWeb3ゲームを開発・体験することができます。

アービトラムで構築されたネットワーク

エイプチェーン(Apechain)

エイプチェーンとはNFT分野で大活躍中のYuga Labsがローンチしたレイヤー3ブロックチェーン。2024年10月20日にメインネットがローンチされました。DEGEN(ハイリスク暗号資産投資家)カルチャーに特化したブロックチェーンで自動利回りが導入されている点が特徴的です。

エイプチェーンはアービトラムのフレームワークであるアービトラム・オービットで構築され、アービトラム・スタイラスが組み込まれています。

エイプチェーンで発行されるエイプコイン(ApeCoin)の規格はERC-20。2024年10月20日〜21日までの24時間で大幅上昇し前日比2倍に急騰しました。12月6日時点の時価総額は約13.5億ドルでCoinGeckoのWeb3ゲーム(GameFi)カテゴリで8位まで浮上しています。

関連:ApeChainメインネット立ち上げ、クロスチェーンブリッジ発表  エイプコイン急騰

出典:ApeCTRL

Total Value Locked(TVL)は、プロトコルの価値を評価するための重要な指標の一つです。エイプチェーンのローンチから約1ヶ月半でTVLが1億ドルを突破、2024年12月6日時点でTVLは約1.4億ドルとなっていています。直近1週間で39%増となっており、ローンチから短期間でエコシステムが急成長していることがわかります。

アービトラムで構築されたWeb3ゲーム

Riftstorm

シンガポールを拠点とするゲーム開発会社のConfiction Labsのタイトル「Riftstorm」がXai Foundationとの提携によりアービトラムのレイヤー3ブロックチェーンであるXaiネットワークを搭載してリリースすると発表されました。

Riftstormは宇宙を舞台に協力プレイのトップダウン・アクション・シューティングゲームでエリート秘密工作員としてチームの指揮をとります。アクション性が非常に高いゲームでオンラインロビーを通じて最大3人のプレイヤー協力プレイ(PvE)で仲間と団結して戦利品を手に入れます。操作する工作員は異なるスキル、パワーアップ、武器を使用することができ、プレイスタイルに合わせたユニークなビルドを作成して楽しむことができます。

2024年3月にSteamで公開されたプレアルファプレイテストでは世界110カ国で800人を超えるライブストリーマーやコンテンツクリエイターを含む22,000人のプレイヤーを魅了しました。

Steamから体験版をダウンロードしてプレイすることができます。

King Of Destiny

アメリカを拠点とするモバイルゲーム開発会社のInfiniGodsが提供するモバイルアプリの「King of Destiny」が9月17日に100万ダウンロードを達成しました。

King of Destinyではプレイヤーは世界を旅しながらジャックポットを獲得し、都市を建設してモンスターを倒すことを目指します。アービトラムネットワークを活用した複数のブロックチェーン製品をInfiniGodsエコシステムに導入しています。ゲームプレイの進行によってプレイヤーは貯金箱に貯めることができる特別な通貨「Fate」を獲得することが可能です。プレイヤーはFateを使ってキャラクターの限定アバターを購入し収集することができます。また、貯金箱はNFT(非代替性トークン)としてマーケットプレイスで他のユーザーと自由に取引することが可能です。

King Of Destinyはアービトラムネットワークを活用しておりその理由は「低い取引コスト、高速な取引速度、活気のあるモバイルマーケットプレイスである」と述べています。アービトラムの低コストで高速なトランザクションの提供がUX(ユーザーの利便性)の向上に繋がると考えられます。

iOSアプリ、Androidアプリとしてリリースされています。それぞれAppStoreまたはGoogle Playからダウンロードしてプレイすることができます。

今後の予定(アービトラム・スタイラス)

2024年9月13日にDAOフォーラムで承認されたアービトラム・スタイラスの開発コミュニティ拡大を目指したプログラム「Stylus Sprint プログラム」が同年2024年11月11日からQuestbookで開始されました。

本プログラムではアービトラム・スタイラスでの開発者向けに500万ARB(2024年12月時点で約8億円)相当の助成金が提供されます。資金は主に人材の雇用、人材教育、新しいツールの採用、インフラストラクチャの費用、監査などの開発コストをカバーすることを想定されています。

申請プロセス

  1. Questbookでアカウントを作成
  2. Arbitrum Stylus Sprintのダッシュボードに移動
  3. ページの左上にある「Submit new」ボタンをクリック
  4. テンプレートに基づいた回答をフォームに入力

申請するとArbitrum DAOの評価委員会からフィードバックが提供されます。

スケジュール

応募開始: 2024年11月11日

応募終了: 2025年1月6日

審査完了: 2025年1月20日

2024年12月時点で61件のプロジェクトが提案されているのを確認できます。本プログラムを通してアービトラム・スタイラスの開発コミュニティのさらなる拡大が期待されます。

まとめ

ここまでアービトラム・スタイラスのメリットを中心にお伝えしてきました。

まとめると、

  • 1つのチェーンで複数の開発言語に対応
  • ガス、メモリ効率が非常に高い
  • EVM互換性がある

今まではスマートコントラクト開発においてSolidityなどの極少数な言語に限られていました。しかし、アービトラム・スタイラスによってRust、C++などの主要な開発言語を扱うことが可能になり、今後のブロックチェーン分野におけるエンジニアの流入を増加するための鍵になると考えられます。さらに、ガスやメモリ効率が非常に高くEVM互換性があるため既存のWeb3エンジニアにとっても開発において多くのメリットがあります。アービトラムは現在Web3ゲームエコシステムの強化にも力を入れているので、アービトラム・スタイラスを使用しWeb3ゲームの開発が活発化するとも予想され、今後も動向が注目されます。

アービトラムに関する主な概要は下記の紹介記事をご覧ください。

関連:初心者でも分かるアービトラム:次世代スケーリングソリューション

さらに、アービトラム財団のリソース2億2500万ARBトークン(2024年12月時点で約350億円)を使用してゲームエコシステムに資金を提供する提案が2024年6月7日に承認されました。プロジェクト名は「Gaming Catalyst Program(GCP)」でWeb3ゲームのエコシステム強化にも力を入れており、詳細は下記の記事をチェックしてください。

関連:アービトラムがWeb3ゲーム市場で存在感を高める理由

12月18日(水)に渋谷で「TOKYO GAME NIGHT」が開催されます。Web3ゲームを体験できる素晴らしい機会が提供されているのでお見逃しなく。

イベント名 Tokyo Game Night Holiday Hangout
日時 2024/12/18(水)19:15 ~ 22:00
登録 https://lu.ma/1xwbqgtg
会場 CENTRUM – MAGNET 4階、東京都渋谷区神南1-23-10
アクセス https://x.com/0xCentrum/status/1727260620326891814
主催者 Aavegotchi、Arbitrum、Alchemy
タイムスケジュール 19:15 開場
19:30 プロジェクトの紹介
20:00 ゲームプレイ/ネットワーキング/フード&ドリンク
22:00 終了

アービトラムの公式Xで最新情報を公開しています。下のリンクからチェックして最新の動向を確認しましょう。

公式X(旧Twitter)https://x.com/Arbitrum_jpn

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