
生体認証について警鐘鳴らす
中国の国家安全部は6日、暗号資産(仮想通貨)ワールドコイン(WLD)のような生体認証について注意を呼びかける記事を発表した。
外国企業による生体認証データの悪用について警告する内容であり、ワールドコインを直接的に名指しているわけではないものの、これに言及しているとみられる。
国家安全部は、虹彩の特徴は複製が困難で、各々の独自性を備えているとして、次のように述べた。
これらの特徴は重要なセキュリティ領域で利用されており、犯罪者の標的となることが多く、様々な口実で収集・盗難される可能性がある。
公表された事例では、ある海外企業が仮想通貨トークンの発行を口実に、世界中のユーザーから虹彩情報をスキャン・収集し、そのデータソースを転送していたことが明らかになっており、個人情報のセキュリティ、ひいては国家安全保障への脅威となっている。
顔、指紋、虹彩などの生体認証技術を利用する際は、データ収集者またはサービス提供者に、データの保存、処理、目的を明確にするよう求め、プライバシーポリシーについても詳細に問い合わせるなど注意する必要があると続けた。
ワールドコインはベーシックインカムとして全世界の人々への仮想通貨の配布を目指すプロジェクト。OpenAIの共同創業者サム・アルトマン氏が、物理学者アレックス・ブラニア氏とともに立ち上げた。
生体認証装置「オーブ」を使って目の網膜をスキャンし、各人特有の虹彩で個人を識別し、IDを付与している。公式サイトによると世界160か国でWorld IDが利用されている。
なお、中国本土ではワールドコインアプリへの登録はできないが、Web3メディア「BlockBeats」によると、中国の仮想通貨ユーザーは、カンボジアやアフリカでスキャンされた虹彩を30ドル以下の安価で購入し、アプリ登録しているとされるところだ。
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透明性強化の姿勢も、各国が懸念
これまでも、ドイツ、フランス、韓国、香港など各国の当局が、ワールドコインの生体認証について懸念を表明してきた。
最近ではケニアがワールドコインが収集したデータの利用方法を調査するため、国内での活動を停止している。一般市民へのリスクがないことを証明するまで、すべての関連団体の活動を禁止する格好だ。
インドネシアも5月、ワールドコインの運営許可を停止している。同プロジェクトの現地法人が電子システム運用事業者として登録されておらず、法律で義務付けられている有効な営業許可を取得していなかったことを受けたものだ。
ワールドコインは、個人データ保護に関する懸念を緩和しようとする姿勢を示しており、昨年には個人情報収集について第三者機関による監査結果を報告したり、生体認証データ保護システムのオープンソース化を発表するなどの取り組みを行っている。
また、2023年末にもIDシステムアップデートを行い、虹彩データを提供しなくてもIDを作れるようにした。
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