- 機関投資家は仮想通貨投資に前向きな傾向
- 米大手資産運用会社Fidelityが、ヘッジファンドやファミリーオフィスなど441の機関投資家を対象に行なった調査結果を発表。機関投資家の仮想通貨参入は良好な見通しであることが示された。同調査は、フィデリティという信頼性の高い金融機関が調査した結果である点に大きな意味がある。
機関投資家は仮想通貨投資に前向きな傾向
米大手資産運用会社Fidelityが、ヘッジファンドやファミリーオフィスなど441の機関投資家を対象に行なった調査結果を発表した。 機関投資家の22%がすでにデジタル資産(仮想通貨)を保有、およそ40%が今後仮想通貨をポートフォリオに加えることを検討しているという。また、多くの機関投資家が、仮想通貨を保有する上でカストディアン(投資家に代わって有価証券など資産の管理を行う機関)を必要としていることも同調査からわかった。
Institutional investments likely to increase over next 5 years. New #digitalassets research: https://t.co/3Lq5h5ITbT pic.twitter.com/9FTypatN8b
— Fidelity Digital Assets (@DigitalAssets) 2019年5月2日
調査期間は昨年11月から今年2月までと最新のもので、2018年の弱気相場後の最新動向を知る上で重要な資料となる。また、機関投資家向けの仮想通貨調査はこれまでにも行われてきたが、フィデリティという信頼性の高い金融機関が調査した結果である点に大きな意味がある。
仮想通貨を保有する機関投資家がおよそ5社に1社の割合で存在することが判明したが、その他にも、機関投資家による仮想通貨への関心の高まりを示すデータが次のように明らかになっている。
- ファミリーオフィス(80%)とのフィナンシャル・アドバイザー(74%)が仮想通貨の特性を最も好意的に捉える
- 47%が仮想通貨は革新的なテクノロジーと認識
- 46%が仮想通貨はその他の資産との相関性が最も低いと評価
およそ半数が仮想通貨を革新的と認識、特にファミリーオフィスからの評価が最も高い形となったが、一方で仮想通貨投資における障害も調査によって指摘されたことがわかった。それは、価格の不安定さや規制に関する明確性の欠如、資産としての歴史の浅さなどといった要素である。
派生商品であるデリバティブ商品が今後多様化や、カストディや指数提供などの環境整備が徐々に進んでいることが、現状不安要素に挙げられるなかでも、将来的な期待感を示している結果につながっていると見られる。
機関投資家が好む仮想通貨への投資方法
機関投資家が好む仮想通貨への投資手段に関しては次のように意見が分かれた。
- 仮想通貨を含む投資商品の購入(72%)
- 仮想通貨の直接購入(57%)
- 仮想通貨企業(株)を含む投資商品の購入(57%)
「仮想通貨を含む投資商品の購入」が最も機関投資家に好まれる手段となったが、その結果からは、仮想通貨ETFなどのより分散的な投資商品の需要がうかがえる。仮想通貨を含んだ投資商品の概要には触れられていないが、指数連動した金融商品のほか、バスケット型などのETF商品もこれらに該当するのではないかと推察できる。
それら今回の調査の結果を受けて、Fidelity Digital Assetsの代表を務めるTom Jessop氏は、機関投資家の感情が仮想通貨に対して前向きとなっていることを指摘。また、STOの増加やここ最近でのビットコインのトランザクション数増加などが示す、仮想通貨を中心としたエコシステムの成長を強調した。
仮想通貨管理におけるカストディアンの必要性
仮想通貨の管理方法は、仮想通貨投資において非常に重要なテーマとなる。これは、76%の機関投資家が、仮想通貨の管理者を検討する際に「セキュリティと安全性」が最も重要な考慮事項となると回答していることからも、今後の最重要課題になることが示されている。
なお、現時点で機関投資家によって選ばれているデジタル資産の管理方法も調査によって判明。現状では、18%が第三者のカストディアンを利用、13%が自己管理、6%がカストディサービスを提供していない取引所を利用しているという。
しかし、そのようにカストディアンを利用するといった回答は18%に留まる一方で、多くの機関投資家がデジタル資産投資におけるカストディアンの重要性を強調。今後のデジタル資産投資を検討する上で、まずはカストディアンが必要であるとする意見が多くみられた。
これまでの資産とは大きく異なる保有方法やサイバーセキュリティの問題から、仮想通貨の保有リスクは、投資におけるリスク面で大きな障害となり得ている。また、株式市場などとは異なり、従来の仮想通貨取引所では、取引機能にとどまらず、カストディ機構や決済機構の役割も一括でになっており、取引を行う取引所にもセキュリティ面の問題が指摘されているのが現状である。
そのような背景も踏まえると、ICEが取り組むBakktの現物先渡し取引を行うビットコイン先物が実現することは、2019年のもっとも重要な動きとなるだろう。