仮想通貨税制の資料
参議院の調査室は3日、暗号資産(仮想通貨)取引における税制の現状と動向について資料を公開した。
調査室とは、議員活動全般を調査面で補佐するために設置されている組織。今回の資料は「経済のプリズム」という名称で、参議院議員向けに発行している調査情報誌という位置付けである。特に、参議院の経済関係委員会・調査会委員への情報提供の機能を強化することを目的にしているという。
今回の資料のタイトルは「暗号資産取引に係る所得税制の現状と動向」で、谷合正成氏という予算委員会調査室のメンバーが執筆。なお、注意書きとして、意見にわたる部分は執筆者個人の見解であると最初に説明している。
谷合氏はまず、冒頭の要旨の項目で、日本で口座数が1,000万を超えるなど、世界的に暗号資産取引が広がっていることに言及。そして、こういった広がりの中で、「他の金融所得との整合性や主要国との比較の観点から、20%の申告分離課税を求める声も上がっている」と指摘した。
その上で「政府は、これまで申告分離課税の導入について慎重な姿勢を示していたものの、金融庁の令和7年度税制改正要望において暗号資産取引に係る課税上の取扱いについて言及がなされるなど、変化も見られる」とし、「暗号資産取引に係る所得税制に動きがあるのか、今後の動向を注視したい」と要旨をまとめた。
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税制改正の論点
所得区分の扱い
要旨を記載した後の項目では、暗号資産自体の概要や日本の法制度、市場の拡大に言及。そして、暗号資産の税制の現状と、見直しを要望するどのような声が上がっているのかを説明した。
谷合氏は、最大55%の税率が課されて暗号資産の利益が雑所得に分類される現在の法律について、政府の見解を記載した上で、「政府は暗号資産について抜本的な性格を吟味することなく、資金決済法の取扱いをそのまま税制に当てはめたに過ぎない」などの指摘が上がっていることを紹介。
他にも「課税の在り方を定める上で資金決済法の借用だけでは不十分であり、金融商品取引法も考慮すべきである」旨の意見が出ていることも指摘している。
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他の金融商品との整合性
また、谷合氏は米国でビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)の現物ETFが認可されたことに触れた上で、日本でも暗号資産を原資産にした金融商品が普及していく可能性に言及した。
この場合、現在の法制度のままである場合、ETFの税率は20%で、暗号資産は最大55%であるため、大きな差が生まれることを指摘。この場合、ETFの需要が高まり、既存の交換業者での取引が減少することを懸念する声があることも紹介した。
また、今回の資料では、主要国との税制の比較も掲載。現在の日本の税制が、Web3人材や資金の海外流出などを招いているという声も紹介している。
そして「とりわけ、他の金融商品との整合性や海外主要国との比較の観点から20%の申告分離課税の導入を求める声が上がっている」と説明した。
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税制改正の課題
谷合氏は、政府は慎重な姿勢を示しつつも、金融庁の税制改正要望には動きも見られると前向きな面も示したが、暗号資産の課題にも言及した。
まずは、以前から政府が「暗号資産取引による所得は20%の税率とすることについて国民の理解を得られるかどうか、株式のように、家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当なのかなど、様々な論点を踏まえて、丁寧な検討をする必要がある」と改正に慎重な姿勢を示していると説明。
その上で、以下の課題を挙げている。
- 依然として投機的な動きが強い
- 価値の裏付けがなく、価格変動が非常に激しい
- 世界で不正流出が発生しており、利用者保護の制度整備が道半ばである
- 詐欺に利用されることがある
- まだ懐疑的な見方も多い
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そして、「こういった課題から国民の資産として推奨されるべきか否か更なる議論が求められよう。今後、暗号資産取引に係る所得税制について動きがあるのか、その動向を注視したい」と結んだ。
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