
ブロックチェーン投資へ強い意欲
米リップル社が、データ分析企業CB Insightsおよび英国ブロックチェーン技術センター(UKCBT)と共同で実施した調査レポートによると、銀行業界は2020年以降、世界のブロックチェーン企業へ積極的に投資しており、1万件以上の取引を通じて、その総額は1,000億ドル(約14.8兆円)を超えた。
3社は、2020年から2024年にかけて、ブロックチェーン企業8,000社と銀行1,800行の投資活動を調査し、伝統的な金融機関がブロックチェーン企業に対し、どのように投資を行ってきたかの実態を明らかにした。
調査によると、グローバル銀行は同期間中に345件の投資に参加し、その大半はスタートアップへの「シード」や「シリーズA」などの初期段階の投資だった。保守的とされる銀行がスタートアップへ投資することは、銀行の長期戦略とブロックチェーンのユースケースが一致していることを示唆しているとレポートは指摘している。
また、これら投資案件のうち33件は「メガラウンド」と呼ばれる大型投資で、主に米国と日本の銀行が参加し、次にシンガポール、フランス、英国が続いた。特に積極的な投資を行ったのは、米国のゴールドマン・サックスと日本のSBIグループ、タイのSCB 10X(SCBXグループの投資部門)だった。
33件のメガラウンド案件のうち、以下のユースケースが注目を集めた。
- 取引、ステーキング、トークン化のインフラ(27%)
- 決済(24%)
- デジタル資産のカストディサービス(21%)
グローバル銀行の投資動向
レポートでは、「グローバルなシステム上重要な銀行」(G-SIB)によるブロックチェーン投資活動を分析し、これらの機関が単独投資よりパートナーシップや共同投資を好む傾向があることが明らかになった。また、ほとんどのG-SIBは完全な買収ではなく、暗号資産(仮想通貨)取引所やブロックチェーン企業との提携や投資を重視していることも確認された。
2008年の金融危機以降、G-SIBの活動は厳しい監視下に置かれており、投資の決定は慎重に行われなくてはならない。そのため、G-SIBによるブロックチェーン分野への進出は、この技術の正当性を確立する役割を果たすとレポートは主張している。現実社会で実用化が可能な段階に達しているとともに、特定のユースケースでは拡張性があり商業的にも実行可能なことを示していると述べた。
そして、仮想通貨規制の進展もG-SIBによるブロックチェーン分野への投資を後押ししている。
米国では連邦預金保険公社(FDIC)と証券取引委員会(SEC)は、金融機関向けに仮想通貨を扱う新たなガイダンスを発表。7月18日にはトランプ大統領が署名し、ステーブルコインに対する包括的な規制の枠組みであるジーニアス法が成立した。
EUの国家当局(NCAs)やドバイの仮想資産規制機関(VARA)、シンガポール金融管理局も規制の明確化に向けた取り組みを進めている。
レポートは、金融分野にブロックチェーン技術を統合するメリットは、銀行にとってもはや無視できなくなってきていると指摘。「適者生存の時代に突入している」今、銀行が積極的な投資と戦略的な提携を通じて、この変革の波に乗ることで競争力を維持しようと努力する姿勢が浮かび上がってきた。
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市場の期待と将来性
ボストン・コンサルティング・グループは、トークン化資産の市場規模は2033年までに18兆ドル(約2,660兆円)を超え、年平均成長率(CAGR)53%で成長すると予測している。
また、リップル社が1,800人以上のグローバル金融リーダーを対象に実施した調査では、90%がブロックチェーンと仮想通貨が今後3年間で金融業界に大きな影響を与えると考えているという結果が明らかになった。
Citiのレポートによると、2025年第1四半期の世界のステーブルコイン取引量は月間6,500~7,000億ドル(96〜103兆円)に達した。ステーブルコインの採用は、取引の高速化、グローバルなアクセス、低コスト、24時間365日の利用可能性など、金融分野全体において効率性の向上が実現されるにつれて、さらに増加すると予想されている。ステーブルコイン企業への投資は、2025年には前年の10倍に増加するとCB Insightsは予測している。
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