日銀が実証実験を本格開始へ
日本銀行がデジタル通貨(CBDC)の実証実験を本格開始する。朝日新聞が報じた。
日銀はCBDCの検討を最優先事項の1つとして取り組む。これまで抽象的な政策調査などの取り組みは行なってきたが、準備のステージから一段引き上げて検討を行う。現時点でCBDCを発行する計画はないが、社会のニーズが急激に高まった場合に備え、調査・研究を進める。
CBDCを巡る日銀の最新の動きについては、決済機構局に専門組織「デジタル通貨グループ」を新設したことが20日に発表された。決済システム全体のデジタル化やCBDCの検討を推進することが新設の目的だ。
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また日本政府も「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にCBDCの検討を盛り込んだ。日銀が技術面での調査のために実証実験を開始することや、政府と日銀が米欧との協議を本格的に開始することを記載している。
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決済機構局長へのインタビュー
朝日新聞はCBDCについて、木村決済機構局長にインタビューを実施。主なやりとりを報じた。
今後の取り組みについて木村決済機構局長は、「CBDCに求められる機能の要件を具体的に整理し、要件を実装する際の技術面での実現可能性を、実証実験などを通して検討していくことが課題だ」と説明。CBDCに関する技術的な知見を、より効果的かつ効率的に組織に蓄積することが実証実験の目的であると述べた。
CBDCの要件については以前から報じられている通り、現金と同等の機能を備えられるようにすることだと説明。誰もがどこででも使えるという「ユニバーサルアクセス」や、災害を初めとしてどんな状況でもCBDCを決済手段として使えるという「強靱性」は、重要な基本機能だと説明している。
具体的な実証実験の開始時期については今後検討していくと説明。「実験の成功の鍵は入念な準備。拙速を避けながら、技術革新や民間の動きに遅れないようタイムラインを考えていく」と述べた。新型コロナウイルスの影響でデジタル決済の需要が高まっているため、準備は怠れないと説明している。
今後については日銀単独ではなく、技術に詳しい民間の知恵を借りたいと語った。プライバシー保護やセキュリティ対策、マネーロンダリング対策や利用残高の仕組みの研究も進める。
導入する場合の時期については、現金流通の減少が1つの目安になると主張。キャッシュレス決済がどのくらい普及したが導入時期のシグナルになるとの見解を示した。民間のキャッシュレス決済サービスが乱立する中で、CBDCが事業者の橋渡し役になれる可能性があると期待も示している。
また実際にCBDCが発行された場合について、現金に対する需要がある限りは供給を続けることが大原則と説明。日本は現金流通高の国内総生産(GDP)比が2割と世界的に見ても非常に高いため、需要がある限り現金がなくなることはないとの見解を示した。
CBDCについては中国のデジタル人民元の開発が先行しており、日本で準備が加速したことに対して通貨覇権争いとみる向きがあることについては明確に否定。
「国の決済システムの効率性・安全性を改善することは中央銀行の重要な責務だ。国によって決済システムの発展形態や制度環境も異なるため、デジタル社会における決済システムの未来像も各国が望ましい姿を考えるべきである。どの国がこうだから我々もということではない」と説明している。
参考:朝日新聞