欧州議会調査局が暗号資産についての報告書発表
欧州議会調査局が18日、「デジタル金融:暗号資産におけるリスク―金融サービス、機関、市場における規制・監督の課題」という題名のレポートを発表。
暗号資産(仮想通貨)の役割と、規制上の課題についてまとめた。
レポートによると、デジタル金融は、EU圏の経済全体に利益をもたらす可能性がある。また仮想通貨市場の拡大はデジタル金融革新を促進し、高度なスキルの雇用を増加させ、より多くの革新と投資を促進し、企業と新興企業により多くの機会を開くという。
同時に、金融の不安定性など、イノベーターや投資家が直面する可能性のあるリスクを考慮に入れて、市場の「フレームワーク」を確立することが重要であると論じている。
暗号資産に関して重要な課題は、それらが何であるかを明確に判断し、どのルールが適用されるかを明確に判断できるようにすることだ。
ほとんどの仮想通貨は、既存のEU法の枠組みでカバーされず、投資家や消費者に大きなリスクを与える可能性がある。
暗号資産の複雑さと急速に進化する性質を考えると、既存の法律を継続的に評価して、このタイプの資産に効果的に適用できるかどうか、または修正やガイダンスが必要かどうかを確認する必要がある。
一連の立法措置を提案
レポートによると、欧州における暗号資産やデジタル金融の発展にとって、3つの分野が特に重要であるという。
- 暗号資産に関する共通の枠組みの定義
- サイバー耐性
- 包括的なデータ戦略の確立
定義に関しては、ステーブルコインや仮想通貨を含む暗号資産の市場に関する枠組みを確立することが非常に重要で、市場の誠実性、分断化、金融不安のリスクに対処するものでなければならず、また進化に合わせて見直せるような、柔軟でオープンなものでなければならないとする。
また、金融セクターにおけるデジタル改革の進展により、サイバー・レジリエンス(攻撃に対する耐性や回復力)の問題や包括的なデータ戦略の実施の必要性がますます注目されているという。
レポートは結論部分で、欧州委員会が既存の金融サービス法を改正し、さらに暗号資産へ適用できるものにすること、暗号資産の発行者およびサービス・ プロバイダーを対象とした一連の立法措置と、ステーブルコイン発行者を対象とした個別の立法措置を行うことを提案している。
一連の立法は、既存の規則を合理化し、情報通信技術(ICT)のセキュリティを含め、EU金融セクターのデジタル分野の障害耐性を強化するとした。
また国際レベルでの協力を強化することも付け加えている。
EU全域で包括的な仮想通貨規制へ
議会調査局のレポートは、EUが実際に全域での仮想通貨規制について大きく動き始めるという報道がなされているタイミングで発表された。
18日には、ロイターの報道で、欧州連合(EU)が仮想通貨に関連する包括的な規制を「2024年」までに実施する方向性であることが判明した。
EU地域内におけるキャッシュレス決済の促進に重点が置かれ、リスクに対処しつつも、分散型台帳技術を含めデジタル決済の領域を積極的に推進することを目指すという。
また、11日のEU会合では、「ステーブルコインを厳格に規制すべき」との共同声明が発表されている。
声明では、ステーブルコインがEU圏内で運用される場合、ユーロまたは他のEU諸国が発行する法定通貨に1:1の比率で固定すること、ステーブルコインの裏付け資産をEU政府が承認した金融機関に預けるようにすることが提案された。
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