アントグループもDCEP参入
中国が各国に先駆け実証実験を続けるデジタル人民元(DCEP)で、アリババグループの金融関連会社アントグループが中国人民銀行(中央銀行)と連携し、DCEPに対応するプラットフォームを構築することがわかった。中華系メディアVOAなどが報じた。
現在、中国人民銀行は北京や上海など複数の都市でDCEPの大規模な実証実験を繰り返しており、飲食店などでの決済活用が確認されている。
アントグループは中国最大手のQRコード決済サービスプロバイダーで、AliPayアプリなどの金融アプリを運営している。昨年12月にも、上海でDCEPのテスト利用キャンペーンに協力した経緯があり、DCEPの二次流通の協力企業として度々関連する動きが報じられてきた。
今回の戦略提携では、アントグループの金融プラットフォームをモデルに、DCEPに対応するプラットフォームが構築されるといった内容がある。まずは中国国内での商業利用から普及が開始した後、海外での利用もあり得ると中国当局は発表している。
また最近公開された資料によれば、アントとテンセントが過去3年間にわたり中国人民銀行のデジタル人民元(DCEP)開発に協力していたことがわかった。
政治的な圧力
アントグループが中国人民銀行と連携関係を続けている理由には、中国政府による圧力が背後にあると懸念される。
アントグループおよびアリババはDCEPにおいては中国人民銀行のパートナー企業でありながらも、顧客データなどの開示問題を巡って、必ずしも中国政府の立場と一致しているわけではない。
特に今年に入って、中国当局はアントグループへの規制を強化し、ユーザーから収集する大量のデータを用いて大きな利益をあげ、独占状況を作り出しているとする批判も浮上。その結果、4月10日には独占禁止法違反で約182億元(3050億円)に上る過去最大の罰金を科されていた。
このため、一部の有識者はアントグループがこれまで中国人民銀行からの協力要求に応じているのは政府の規制緩和とのトレードオフに当たると指摘している。