新たな金融インフラに賭ける
米金融大手フィデリティの暗号資産(仮想通貨)事業部門、フィデリティ・デジタルアセット(FDA)を率いるトム・ジェソップ社長は、新たな金融インフラとしての仮想通貨の可能性に自信を持っているようだ。
ジェソップ氏は、新型コロナのパンデミックが、それまで仮想通貨に興味は持っていたものの、実際の投資には至っていなかった機関投資家の参入を後押ししたと考えている。
パンデミックがきっかけとなって、多くの人がどっちつかずの態度を改めた。その理由は、2,100万BTCしか発行されないという希少性の高い資産クラスに対し、大量の紙幣が印刷され、法定通貨が切り下げられる環境があるからだ。
さらに、昨年後半、スタンレー・ドッケンミラー氏やポール・チューダー・ジョーンズ氏などの著名投資家が、インフレヘッジとしてビットコイン投資について発言し始めたことが、「マッチで焚き火に火をつける」きっかけとなったとジェソップ氏は見ている。
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FDAは、先月発表した機関投資家を対象とした調査で、回答した半数以上はすでにデジタル資産に投資、また71%の投資家が、将来的に仮想通貨への投資を計画していることが明らかになっている。さらに、デジタル資産に関心のある機関投資家の90%は、2026年までに自社または顧客のポートフォリオに割り当てを行うと回答した。
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FDAの顧客の多くは「伝統的な投資家」であるため、仮想通貨分野への参入手段として、まず考慮するのがビットコイン(BTC)で、問い合わせの90%を占めるという。一方、ビットコインほどではないが、ここ数ヶ月でイーサリアム(ETH)への関心も高まっていると同社のマーケティング責任者は述べた。
FDAは現在、約150人の従業員を抱えているが、先月半ば、100人の新規雇用の募集をかけ、事業の拡大を目指しているようだ。
仮想通貨業界団体を設立
FDAは今年4月、決済サービスのSquare、大手仮想通貨取引所コインベース、投資企業Paradigmとともに、政策立案者にロビー活動を行う新たな業界団体「The Crypto Council for Innovation(イノベーションのための仮想通貨評議会、略称CCI)」を設立した。
ブロックチェーン技術を基盤とする金融システムは、オープンソースのコードやインターネットを介したネットワークが、企業の取締役会や定期的な監査に取って変わるなど、既存の銀行や証券会社の運営方法と大幅に異なる。そのため、CCIは、政策立案者や規制当局、市民に有益な情報提供を行い、誤った情報も正していく方針だという。
ジェソップ氏は、他の資産クラスと同等の規制導入を支持する立場を表明しているが、新しいテクノロジーの特性を踏まえた適切な規制を求めている。
スタートアップに投資
フィデリティのベンチャーキャピタル部門、デボンシャー・インベスターズ(Devonshire Investors)は、すでにErisXやTalos、Coin Metricsなどの仮想通貨スタートアップに投資している。
ジェソップ氏は、スタートアップに投資することにより、変化の速い仮想通貨分野で実際に何が起こっているかを、より正確に把握することができると述べている。フィデリティのアビゲイル・ジョンソン最高経営責任者も、スタートアップのプレゼンや講演会に頻繁に参加し、この新しい分野をサポートしているという。
7月末には、仮想通貨のマイニング企業Marathon Digital Holdings(以下、マラソン社)の株式の7.4%を2,000万ドル(約21.9億円)で取得した。マラソン社は、新たに3万台のマイニングマシン(132億円相当)をビットメイン社に発注したことが、今月はじめに報告されている。
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ビットコインETF申請
FDAの顧客のほとんどは富裕層の個人やヘッジファンドなどの機関投資家だが、今年3月に、ビットコインETF(上場投資信託)の目論見書を米証券取引委員会(SEC)に提出した。現在、当局の審査を待っている状況だが、承認されると一般の個人投資家へもサービス提供の門戸が開かれると考えられている。マーケティング責任者のサンドラー氏は、ビットコイン投資の入り口として「ETFはもっと身近な商品になるだろう」と述べている。