仮想通貨分野での取り組み
米決済大手マスターカードのMichael Miebach CEOは28日、第3四半期決算説明会で暗号資産(仮想通貨)サービスの提供、並びにCBDC(中央銀行デジタル通貨)の導入支援に注力していく姿勢を明らかにした。
Miebach氏は「仮想通貨について言及することなしに決算説明会は開けない」と語り、一般消費者による仮想通貨の売買や投資が拡大している現状に触れた。そして、マスターカードが果たすべき役割は消費者のニーズに応えることだと語った。
実際、マスターカードは25日、同社の決済ネットワークを利用する銀行や企業に対し、仮想通貨サービスを簡単に導入できるような仕組みを提供すると発表している。同社の新サービス「サービスとしての仮想通貨:Crypto-as-a-Service(CaaS)」により、一般消費者の仮想通貨分野へのアクセスが拡大すると見込まれている。
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また、Miebach氏は19日に完了したブロックチェーンデータ分析企業CipherTraceの買収に言及。900超の仮想通貨に対応し、取引のコンプライアンスとマネロン防止の監視を提供するCipherTrace社の技術は、データのプライバシーや顧客認証の疑問への回答だとして、マスターカードが仮想通貨決済においても「サービス提供する圧倒的なチャンスだ」と形容した。
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CBDCの導入支援
Miebach氏は、決済分野で機能する可能性が最も高いのは、仮想通貨技術がCBDC(中央銀行デジタル通貨)に使用された場合だろうと主張。北米やヨーロッパの中央銀行のCBDCへの取り組みは、まだ調査・研究の段階を脱していないが、発行する準備が整った際、つまり政府が実証実験を行う段階において、マスターカードのネットワークで対応可能な体制を提供すると意欲を見せた。
その時こそ、我々のサンドボックスの出番だ。(CBDCが)実際にどのように機能するかを、政府と民間銀行が把握するための安全な空間を提供することが可能だからだ。
Miebach氏は昨年来、各国政府と築き上げてきた強い信頼関係と、同社が保有する数々の仮想通貨・CBDC関連の特許が同社に価値をもたらし、CBDCとの共存共栄が可能だと繰り返し述べてきた経緯がある。同社は2020年9月にCBDCの実証プラットフォームの提供を発表。また、今年2月にはカリブ海の島嶼国バハマのCBDC「サンドドル」に対応したプリペイドカードを発表した。
その後も、Miebach氏は今年4月の決算説明会(第1四半期)で、CBDC関連のスマートコントラクトへの投資を発表し、CBDCを支える技術開発に継続的に取り組む姿勢を見せている。
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一方、民間企業発行のステーブルコインについては、対応するかどうか「非常に厳格な信条を持っている」として、Miebach氏は慎重な態度を見せるに留めた。
CBDCとは
CBDC(中央銀行デジタル通貨)とは、各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。
通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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