はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

プライバシー性の高い分散型アプリケーション「Snapps」とは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ゼロ知識証明でブロックチェーンの課題解消へ

日々発展を続けるブロックチェーン分野において、依然として課題だと考えられている点が、スケーラビリティの限界、およびプライバシーの欠如だ。

前者に関しては、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)ブームの舞台となったイーサリアム・ネットワークにて顕著に見られており、イーサリアム2.0やロールアップ技術の開発など、様々な対策が進められている。一方で後者のプライバシーについては、概してパブリックチェーンが機能するには、全てのトランザクションやアドレスが公開されている必要があると考えられてきたため、一部のプライバシー特化型チェーンを除き、焦点が当てられていないことがほとんどだ。

しかし、zk-SNARKsという技術を活用すれば、これら二つの課題を両方とも解決することができると言われている。

スケーラビリティー問題

スケーラビリティー問題とは、取引処理が遅延してしまうような「拡張性」の問題を指す。

仮想通貨用語集

zk-SNARKsとは

zk-SNARKsとは、証明方法の一種であり、「Zero Knowledge Succinct Non-Interactive Argument of Knowledge」の頭字語だ。ブロックチェーン領域では主に、レイヤー2技術や匿名性の高いブロックチェーン構築の際に活用されている。

前半部分の「Zero Knowledge」は、「ゼロ知識証明」と呼ばれる暗号学における証明メカニズムを指している。ゼロ知識証明とは、簡単に言えば、「ある情報が正しいということを証明したい人(=証明者)が、その情報自体の詳細は開示せずに、その情報は正しいということを他者(=検証者)に証明する方法」だ。

例えば、生年月日は開示せずに成人しているということを証明する、ある問題の答えは開示せずにその答えを知っているということを証明する、パスワード自体は開示せずにそのパスワードを知っているということを証明する、といった時に役立つ技術だ。これをブロックチェーン分野に応用すれば、トランザクションの内容(送受信者や金額等)を開示せずとも、そのトランザクションが実行されたということを証明できる。

関連:個人情報管理のカギとなる「ゼロ知識証明」とは|XSL Labs寄稿

次に続く「Succinct」は「簡潔な」という意味を持ち、要するに、証明結果のデータサイズが小さく簡単に検証可能ということを示している。また「Non-Interactive」とは、証明者および検証者が互いに直接やりとりしないということを、「Argument of Knowledge」とは、大まかに言えば「知識の証明」を意味している。

つまりzk-SNARKsとは、「証明者および検証者が直接的にやりとりせずに、簡潔な方法で、証明者が保有している情報が正しいということを検証者に証明する技術」と言える。

ブロックチェーンへの応用

ゼロ知識証明自体は、1980年代には既に確立されていた概念であり、ブロックチェーンに特有な技術ではないものの、現在ブロックチェーン領域では、スケーラビリティおよびプライバシーを改善する手法として、zk-SNARKsの活用が増加している。

例えば、データ量を小さく抑えられるというzk-SNARKsの特性に注目した「ZK Rollup」と呼ばれるロールアップ技術が、レイヤー2開発で利用されている。ZK Rollupでは、オフチェーンで複数のトランザクションをまとめた後、まとめられたトランザクションのデータ全てではなく、zk-SNARKsを用いた証明結果のみをメインのチェーン(レイヤー1)へ提出している。上述のようにzk-SNARKsを用いた証明結果は、簡潔でデータ量が少ないため、レイヤー1のネットワーク混雑解消、およびスケーラビリティ向上に繋がると言われている。

関連:高速かつガス代安価な分散型取引所「ZKSwap」がローンチ イーサリアム上でZK-Rollups技術を活用

また、トランザクションの内容自体を開示する必要がないという性質から、ZcashやMinaプロトコルといった、プライバシー保護に焦点を当てたブロックチェーンの設計にも、zk-SNARKsは組み込まれている。

関連:仮想通貨Zcash、アップグレードに向けて新たなプロダクトを発表

zk-SNARKs基盤のアプリ

zk-SNARKsを活用したブロックチェーン・プロジェクトのひとつ、Minaプロトコル(以下Mina)では、「Snapps」と呼ばれるzk-SNARKs基盤のdApps(分散型アプリケーション)作成が可能だ。Snappsは、表面上は通常のdAppsと同様に作動するが、zk-SNARKsを用いてスマートコントラクトが実行されるため、他のdAppsよりもスケーラビリティおよびプライバシー面で優れている。これは、根本のブロックチェーン設計にzk-SNARKsを採用しているMinaだからこそ可能になる技術だ。

関連:誰もがノードとして参加できる軽量型ブロックチェーン、Mina Protocolとは

多くのdAppsが構築されているイーサリアムにてdAppsを実行する場合、ネットワーク内にある全てのノード(マイナー)が同じ計算をしなければいけない。一方でMinaでSnappsを実行する場合、一度そのSnapps開発者がアプリを実行した後は、ノードは証明結果のみを検証すれば良いため、効率的なアプリ稼働が可能になる。

Minaいわく、以上の特性から、今後は以下のようなユースケースにおいてSnappsの発展が見込まれているという。

  • トレードの証明:内容を開示せずに仮想通貨のトレード履歴を証明
  • 資産の所有権の証明:特定のアドレスや残高を開示せずに仮想通貨資産の所有権を証明
  • 個人のID証明:身分証明書を再度提出せずに以前KYC(本人確認)プロセスを経たことを証明
  • 匿名性の高いシングルサインオン&デジタル・アイデンティティ:個人に関するデータの提供が必要だった既存のプラットフォームへのログイン方法(FacebookやGoogleなど)とは異なり、匿名のまま様々なプラットフォームへアクセス可能に
  • 匿名性の高いDAO投票:DAO(自律分散型組織)の投票において、どのアドレスが誰に投票したかが隠される
  • オラクル:HTTPSウェブサイトの認証されたデータをオンチェーンに持ち込み
  • オンチェーンで位置情報管理:デートアプリやSNS、住民票などを利用の際にGPSを介して位置情報を証明
  • 匿名性の高いDNSサービス:ウォレットのアドレスを開示しないDNS(ドメイン・ネーム・サービス)
  • 障害の証明:病気や障害の詳細を開示せずに障害者手当を受ける資格があることを証明
  • 実世界で鍵として利用:IoT(モノのインターネット)を利用してプライベートな空間(例:自宅、オフィス、友達の家、ホテル)へのアクセスを許可するスマートフォン用アプリ

Snapps活用のレンディング(貸付)市場

Minaエコシステム内では既に、いくつかのSnapps開発が進められている。そのうちの一つが、「Teller Finance」と呼ばれるDeFiレンディングプラットフォームだ。

zk-SNARKsを基盤にしているTellerでは、ユーザーは借入の際に、任意の金額を借りるのに十分な信用度があるかどうかを、個人情報を開示せずに証明できる。これは、信用要素ではなく、過剰担保(担保額が借入額よりも大きいこと)に依存して機能してきた既存のDeFiレンディングプラットフォームとは、全く異なる設計だ。

この仕組みによりTellerでは、ユーザーを個人情報漏洩やハッキングなどのリスクから守るというDeFiの利点を維持したまま、過剰担保の必要性を排除しているため、資金効率が良くなり、より多くの人がDeFiサービスを利用できるようになるだろうと考えられている。

関連:DeFi(分散型金融)とは|初心者でもわかるメリット・デメリット、重要点を徹底解説

Minaの開発に携わるMina財団は現在、Snappsも含むエコシステム全体の拡大に注力しているようで、9月には、助成金プログラムなどコミュニティの参加を促す複数のプログラムの実施を発表した。Minaはエコシステム拡大に関して、「これらのプログラムは、Minaコミュニティが健全かつ安全な場所であるための最初のステップであり、成功にはコミュニティの参加が不可欠だ」と述べている。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
08:25
NYSEがグレースケールのXRPとドージコインETF承認、25日上場予定
NYSEがグレースケールのドージコインとXRP ETFの上場を承認し、11月25日に取引を開始する。今週はビットワイズのXRP ETFやフィデリティのソラナETFも上場し、アルトコインETF市場が急拡大している。
07:45
「仮想通貨財務企業などの上場後の事業の大幅変更について対応を考える必要」JPXのCEO
日本取引所グループの山道CEOは、ビットコインなどを保有する仮想通貨財務企業への規制強化は現時点では検討していないと説明。一方で、事業の大幅変更については対応を考える必要があるとも述べている。
07:05
個人マイナーがビットコイン採掘に成功、1億8000万分の1の確率を克服
極めて小規模な個人マイナーがわずか6TH/sのパワーでビットコインブロックの採掘に成功し、約26万5000ドル相当を獲得した。確率は1億8000万分の1で、近年最も幸運なソロ採掘となった。
06:25
トム・リー率いるビットマイン、初の配当実施もイーサリアム保有の含み損は6250億円超 
イーサリアム最大の企業保有者ビットマイン・イマージョン・テクノロジーズが11月21日、2025年8月期通期で純利益3億2816万ドルを計上し、大手仮想通貨企業として初めて配当を実施すると発表した。しかしイーサリアム価格下落で含み損は40億ドル超に達している。
06:02
金持ち父さん著者キヨサキ、3.5億円分ビットコインを売却し広告事業投資へ 以前の姿勢から一転
『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏が11月22日、約225万ドル相当のビットコインを売却し、外科センターと看板広告事業に投資すると発表した。以前の「売らずに買い続ける」発言から一転した。
05:45
マイケル・セイラー、指数除外懸念に反論「ストラテジーはファンドではない」
ストラテジー社のマイケル・セイラー会長は主要株価指数からの除外懸念に対し「我々はファンドではなく上場事業会社だ」と反論した。
11/21 金曜日
17:25
米ビットコインETF、1週間で大規模な資金流出が2回
11月20日、米ビットコイン現物ETFは9億300万ドル(約1,395億円)の純流出を記録し、史上2番目の規模となった。1週間前の記録を更新。ブラックロック、グレースケール、フィデリティの主要3ファンドで流出の大部分を占め、全ETFで純流入ゼロという異例の事態に。
16:38
予測市場が急成長 カルシ(Kalshi)が1500億円調達と報道も
予測市場カルシが2ヶ月で評価額2倍超の110億ドルで10億ドル調達。取引量は10月に過去最高の44億ドルを記録。競合ポリマーケットも120億〜150億ドルでの追加調達を協議中で、予測市場への投資が加速。
16:33
暗号資産(仮想通貨)の申告分離課税が実現したら?押さえておきたい税務のポイント|Aerial Partners寄稿
仮想通貨の申告分離課税が現実味を帯びてきた今、投資家が知っておくべき税制変更のポイントを解説。税率の一定化、損益通算、特定口座の導入可能性など、制度導入後の注意点と準備すべきことをわかりやすく紹介します。
16:10
CAICAテクノロジーズ、JPYC決済ソリューションの提供を開始
CAICAテクノロジーズが日本円ステーブルコインJPYCの決済ソリューション提供を開始。企業向けにコンサルティングサービスと決済モジュールを提供し、ステーブルコイン決済の導入を支援する。
16:03
ナッジ、ステーブルコイン決済・還元対応クレカ「HashPortカード」発行開始
HashPortとナッジが日本初となる後払い型クリプトクレジットカード「HashPortカード」を発行開始。ステーブルコインJPYCで決済・還元が可能で、利用額の0.3%をJPYCで還元。年会費無料、カード発行手数料2,500円。
15:44
金融庁が語る暗号資産規制改革の全貌──銀行参入、インサイダー規制、DEX対応の狙い|独占取材
金融庁独占取材。暗号資産規制の金商法移行について、銀行グループ子会社の参入、インサイダー取引規制導入、分散型取引所(DEX)対応の狙いを詳しく聞く。投資家保護と健全なイノベーション両立への取り組みを解説。
13:55
Bitcoin Core、史上初の公開セキュリティ監査をクリア 「重大な脆弱性なし」
ビットコインの基盤ソフトウェアBitcoin Coreが16年の歴史で初となる第三者セキュリティ監査を完了した。Quarkslabによる4ヶ月間の徹底調査で致命的な脆弱性は発見されず、300兆円規模のネットワークの安全性が裏付けられた。
13:30
金融安定理事会、ステーブルコイン監視強化を表明 G20サミット前に警告
金融安定理事会(FSB)のベイリー議長がG20首脳会議を前にステーブルコイン規制強化を表明。市場規模3000億ドル突破を受け、ECBも警戒。2026年作業計画で国際協力推進。
13:05
仮想通貨団体ら、税制改正などをトランプ大統領に要望
ソラナ政策研究所など65以上の仮想通貨団体がトランプ大統領に書簡を提出。税制の改善、規制の明確化、イノベーションや開発者保護の取り組みを求めた。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧