CBDCとステーブルコインに焦点
世界経済フォーラム(WEF)のデジタル通貨ガバナンス・コンソーシアム(DCGC)は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)とステーブルコインに焦点を当てた一連のレポートを発表した。
これらのレポートはデジタル通貨政策やガバナンスの課題に対処するため、グローバルな視点を提供する第一段階としてDCGCが編纂したもので、以下の三つの分野にわたる八つのレポートから構成されている。
- 規制の選択肢
- 十分なサービスを受けていない層への価値提案
- テクノロジーの選択肢
DCGCは、公的機関や民間企業、市民団体や学界から様々な分野を代表する85以上の組織から構成されている。メンバーはアジア、アフリカ、欧州、中東、北米、中南米/カリブの6つの地域にまたがっている。
なお、暗号資産(仮想通貨)や分散型金融(DeFi)については2022年1月から始まる第二段階で、焦点を当てる予定だという。
世界経済フォーラム(WEF)とは
世界と地域の経済問題に取り組むことを目的とし、政治、経済、学術分野のリーダーの交流促進を図る非営利の国際団体。1971年、スイスの経済学者クラウス・シュワブが設立。
▶️仮想通貨用語集
CBDCとプライバシーの懸念
ここでは、テクノロジー分野からCBDCとプライバシーの関係に関するレポートを紹介したい。
レポートによると、欧州中央銀行(ECB)に寄せられた8,200件のパブリックコメントのうち、41%はプライバシーに関するものであったという。CBDCが一般に受け入れられるためには、CBDCが提供するプライバシーに対して、どれだけユーザーの信頼を得ることできるかが重要になる。
そのため、プライバシーのような主要なニーズがCBDC設計の中心となる可能性があると主張。
一方、プライバシーに対する考え方は、国や文化によって大きく異なるため、自国民が納得する基本的権利を考慮した上で、権利を保護するための政策の策定が必要になるとの認識を示した。
レポートでは、プライバシーや機密性の強化に活用できる最先端の暗号技術を紹介しているが、同時に、暗号技術だけでは、ハッキングやデータの漏洩、検閲など金融及び通信システムに影響する様々な問題を防ぐことはできないと指摘。セキュリティモデルの特性を保証するような堅牢で全体的な「動的かつ微妙なアプローチ」を用いて、プロトコルを設計することが必要とされるとした。
DCGCは、プライバシー設計とセキュリティ設計を統合することで、CBDCの採用率を高めつつ、信頼できる展開が期待できるとまとめた。
官民連携の重要性
中央銀行はプライバシー保護と、マネロンやテロ資金対策など金融犯罪防止のための規制のバランスを考慮した上で、CBDCの設計を行わなくてはならない。
マネロン防止のための一つのオプションとして、デジタルIDのインフラとCBDCの枠組みを統合することが議論されているが、その管理方法については、プライバシーの面から疑問視されているようだ。
そのような状況下では、プライバシー技術の進展に遅れを取らないことが必須であるとレポートは指摘。官民が連携してCBDCの設計問題に取り組むことの重要性を強調した。
政策立案者は、望まれるプライバシーとコンプライアンスの目標を正確に伝え、また技術的なソリューションについて適切な知見を得るため、開発者や企業との意見交換の場として、フォーラムを設置する必要があるとDCGCは提案した。