世界秩序の変化と仮想通貨
インドのナレンドラ・モディ首相は17日、オンラインで開催中の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で講演し、暗号資産(仮想通貨)がもたらす課題には世界的な取り組みが欠かせないと強調した。
「今日、世界秩序の変化に伴い、我々が直面する課題も増大している」と切り出したモディ首相は、サプライチェーンの混乱やインフレ、気候変動を例に取り、「すべての国と国際機関が、集団的かつ同期した行動を取る必要がある」と主張。そして、同様の課題のもう一つの例として、仮想通貨に矛先を向けた。
仮想通貨が基盤とする技術を考慮した場合、一国の判断だけでは、関連した課題に十分に対処しきれない。我々は統一されたアプローチを採用する必要がある。
さらにモディ首相は、多国籍組織の設立当時と現在の状況は大きく異なっていることから、新たな課題に対処する国際機関の能力についても疑問を投げかけた。そして、「今日と将来の課題」に対応するため、国際組織の制度改革に焦点を当てることは「すべての民主主義国の責任である」と呼びかけた。
ダボス会議とは
ダボス会議とは、世界経済フォーラムがスイスの保養地ダボスで開催する年次総会。世界各国から、国家元首をはじめ、政治家や企業経営者、学術関係者などが参加し、グローバルな課題について議論する場となっている。
▶️仮想通貨用語集
仮想通貨の世界的規範を作る
モディ首相の指摘は、同国のNirmala Sitharaman財務大臣が主張していた「グローバルな行動によるボーダーレス技術の管理」という考え方を反映しているようだ。Sitharaman氏は、仮想通貨や決済システム、データプライバシーなどに関して世界レベルでの「規制に対する集団的努力の必要性」を訴えていた。
また、モディ首相は先月開催されたバーチャルサミット「民主主義のためのサミット」(バイデン米大統領主催)でも、仮想通貨に対処するため、世界的な規範の必要性を主張している。
我々は、ソーシャルメディアや仮想通貨などの新技術について、民主主義を弱体化させるのではなく、強化するために使用されるような世界的な規範を共同でかたちづくっていかなければならない。
関連: インドのモディ首相、仮想通貨の世界的規範作成を呼びかけ
インドの仮想通貨規制状況
インドでは、政府が仮想通貨業界関係者と対話の機会を設けたりしているものの、仮想通貨規制の枠組みが整備されない状況が続いている。
仮想通貨規制法案は昨年の冬期国会に議題として上がっていたが、最終的には審議されることなく、国会は閉会した。来月から開かれる次期国会で議論されるかも不明だという。
地元メディア「The Economic Times」の報道によると、ある政府関係者は、仮想通貨関連の法律はグローバルな枠組みと連動することが重要だとの認識を示し、その枠組み自体が発展途上であることを、仮想通貨規制法案が議論されなかった理由としたようだ。
この分野が世界的にどのように発展していくかを観察しながら待つのが、より良い戦略かもしれない。そして待っている期間に、インド政府は消費者保護を確保するために活用できる既存の法律や規制、また、仮想通貨取引への課税について検討することもできるだろう。
WEFでのモディ首相の演説は、より大きな世界的な枠組みの整備を見据えた上で、時間をかけてインドの規制に反映させる流れに沿ったものだとも受け取れるのではないだろうか。