マルチチェーンの流動性プロトコル、Symbiosis Finance
昨年の10月、Symbiosis Financeはマルチチェーンの流動性プロトコルとして、Blockchain.com Ventures、アンバーグループ、Spartan、Avalancheなどから200万ドル(約2億3,000万円)を調達した。
現在、プロトコルはテスト段階にあるが、既にトークンのSISはOKExやBybit、Gate.ioなどの大手取引所にて取引を開始している。
CoinPostは昨年の12月にSymbiosis Financeの共同創設者兼CMO、Nick Avramov氏にインタビューを行った。インタビューで語られたプロジェクトチームやSymbiosisの特徴的な機能、プロトコルの正式ローンチなどについての内容をお伝えする。
仮想通貨業界に携わったきっかけは
Avramov氏)こんにちは!私は2016年にサンクトペテルブルグ国立大学の経営学科を卒業しましたが、その時に指導教員からブロックチェーンについての修士論文を書くようアドバイスされました。
ビットコインのホワイトペーパーを初めて読んだ時のことは覚えていて、楕円曲線に基づいた暗号がどのように機能しているのかを理解しようとしました。後々、修士論文の一部はMedium上で公開しています。
2017年にはFacebookとGoogle上のトラフィックを仲買する企業で働いていました。17年はICOの年だったので、私もブロックチェーンのプロジェクトを探して回り、その一つからコミュニティマネージャーの仕事を得ました。
数か月後には、仮想通貨業界が広告業界よりも遥かに面白いことに気づいて、この業界に完全に身を投じました。いくつかの中国の仮想通貨プロジェクトのロードショーに参加したり、Dgital Horizon Venture Fundでも働きました。
Symbiosis Financeのアイデアに至った経緯は
2020年の9月ごろ、私たちは、当時はまだ名前もついていなかった、ブロックチェーンにおける流動性の断片化問題について調べていました。2021年1月になって、私たちはプロジェクトのコードベースに取り掛かり、そして夏ごろには、投資家を探し始めました。
Blockchain.com Venturesなどの大手からどのようにサポートを得られたのでしょうか
昔ながらのベンチャーへのルートを辿りました。21年の6月ごろから、LinkedIn上でコールドレター(それまで繋がりのない人に送る手紙)を書き、プレゼンテーションを行い、投資家にレポジトリとプロジェクトの開発プランを見せました。彼らがビジネススクールで教えてくれたやり方です。
ブロックチェーン・ドットコム(Blockchain.com)は出資を集めるうえで、非常に重要でした。その他にもいくつかのポジティブな反応は貰っていましたが、決定的だったのは、Peter Smith(*1)とSam Harrison(*2)からのサポートがあったことです。彼らには、本当に感謝しています。
*1:Peter Smith:ブロックチェーン・ドットコムの共同創設者兼CEO
*2:Sam Harrison:ブロックチェーン・ドットコム・ベンチャーズのパートナー
Symbiosis Financeのチームについて教えてください
素晴らしいチームです。プロトコルのコアデベロッパーはお互いに知り合ってもう5年になる人たちで、Zerionやその他多くのプロジェクトからの人がいます。
また、Yandex(ロシアの検索エンジン)と日本のコングロマリット、楽天でチームリーダーを務めていた人間が、セキュリティを担当しています。リピーターネットワークの開発チームトップは、以前ロシアのIBMでオープンソースのプロジェクトを率いていました。
Symbiosis Financeは、ThorChainプロトコルとは何が違うのでしょうか
ThorChainとは異なり、私たちは古典的なAMMプールモデルを用いています。このアプローチによって、ThorChainのRUNEのように、ネイティブトークンをステークする必要は無くなります。Symbiosisの流動性提供者はそれぞれ、プールのペアのボラティリティリスクを評価します。
また、私たちは成長を続けるDeFiエコシステムにおいて、ネットワーク間におけるトークンの移転に焦点を置いていますが、ThorChainはネイティブトークンの移転にフォーカスしています。
Symbiosis FinanceはEVM非互換のブロックチェーンとも機能しますか
プロトコルはSolanaやNearのような、EdDSA/ECDSA鍵の生成が可能なスマートコントラクトを備えたブロックチェーンに対応しています。統合の難しさは、そういったブロックチェーンのバーチャルマシン(VM)に依存しています。
AMMロジックはビットコインのようなネットワークでは実行できません。しかし、Hashed Time Lock Contract(HTLC*3)に対応していれば、Symbiosis Financeはアセットを統合することができます。
*3:Hashed Time Lock Contract:ビットコインのライトニング・ネットワークなどで使用されている技術で、二者間での信用を必要としない送金を可能にする
プロトコルの流動性プールについて、詳しく教えてください
Symbiosisはステーブルコインのプールを利用します。例えばPancakeSwapとUniswap間で交換したいときは、BUSDとUSDCを用います。
プロトコルは、EVMネットワーク上の1inchの流動性アグリゲーターと、EVMの無いブロックチェーン上では自身のソリューションを用いて、分散型取引所上で最も効率良く交換する道を探ります。
このアプローチによって、特別なソフトウェアをインストールする必要もなく、Metamaskを介してワンクリックで済むようになっています。
ネットワーク間における片側のアセットの減少を引き起こす、不均衡な交換の問題をどう解決していますか
私たちは一方向へ高い需要が生じた際に、裁定取引者が価格を均衡させるための裁定取引のインセンティブをつくっています。
例えば、バイナンス・スマート・チェーンでは、ユーザーがイーサリアムからテザーへ頻繫に交換を行いますが、裁定取引者(鞘取り者)は反対の取引をプレミアムで行うことが出来ます。
リレーネットワークについて少し教えてください
これは分離されたネットワークで、ノードはブロックチェーン上のイベントを追跡し、署名して、トランザクションをSymbiosis Financeのユーザーに送ります。
ネットワークは段階的に実現していきます。早期バージョンでは15ノードあり、イーサリアムネットワーク上のスマートコントラクトを介して同期されています。その後、徐々にノードの数を増やして、リレーネットワークのロジックをサイドチェーンに移転します。
また、ノードを運営するには、SISトークンをステークする必要があります。ステークの量は他の参加者にも因りますが、最低で50,000SIS以上になります。
DAO(自律分散型組織)への移行は考えていますか
(移行は)実施しますが、直ぐにではありません。このような移行はプロトコルのアップグレードにおける意思決定のプロセスが複雑になります。そのため、これは長期的な目標になります。
分散化を含め、すべての物は価値を持っています。今の時点では、市場が活発で競合が増えているため、Symbiosis Financeはより素早く開発する必要があります。
Symbiosisの未来については
Symbiosisをクロスチェーン通信の標準にしたいと考えています。これは、チーム全員が胸に抱いている夢です。
将来的には、サードパーティーのプロジェクトが我々の成果を利用し、このプロトコルに基づいた更なるサービスを開発してくれることを望みます。