CoinPostで今最も読まれています

「日本で幅広いユースケースを作り、普及させていく」オントロジーGloria Wu氏インタビュー

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

オントロジーインタビュー

オントロジー(Ontology)は、「信用の再定義」をミッションに掲げ、Web3時代に向けた分散型アイデンティティ(DID)とデータソリューションを開発・提供する分散型プラットフォームだ。個人情報と資産を一元管理できるONTOアプリなど、信用問題を解決する様々なプロダクトを提供している。

今回、オントロジーのエコシステム・パートナーシップ担当チーフであるGloria Wu(グロリア・ウー)氏にインタビューを実施した。

Gloria Wu氏は、オントロジーで自己主権的なID、信用スコア、プライバシー、そしてデータ管理のための分散型テクノロジー領域において、これまで熱心な活動を行ってきた担当者だ。

目次
  1. 自己紹介
  2. オントロジー設立の背景
  3. 日本での上場について
  4. オントロジーのDIDについて
  5. オントロジーのDAO化はあるのか
  6. 日本の読者へのメッセージ

1)自己紹介

それでは、Gloriaさんのこれまでの経歴についてまず教えてください

まず私は、分散型IDとデータソリューションを通じて、Web3 に信頼・プライバシー・セキュリティをもたらすプロジェクトであるオントロジーのエコシステム・パートナーシップの担当チーフを務めています。

これまでにコンサルティング、プロダクトマーケティングやオペレーション、ソーシャルエンタープライズなどの業種を経験しました。またマーケットプレイス・レンディング投資のBlue Elephant Capitalで、投資およびアクセラレーション部門のVPを務めたこともあり、そこでは初期段階のEdTechインキュベーション、アクセラレーション、シード投資に力を注いできました。

また、世界最大の物流企業であるDHLや、世界最大の青少年育成組織であるアイセックでは、グローバル・プロダクトマネジメントおよびマーケティングのディレクターとして、上級職を歴任しました。他にも、未来志向をテーマとした思想家として、非階層的な組織の成功や分散型コラボレーションのエンパワーメントをテーマとした研究も行っています。

経営コンサルタントやグローバル非営利団体でのキャリアは、これらのテーマにおける重要な洞察力と経験をもたらしてくれました。また、アルゴリズムによる男女平等とプライバシーの保護を目指す「マナデータ財団」のアドバイザーも兼任しています。

2)オントロジー設立の背景

オントロジー設立の背景はどのようなものだったのでしょう?

リ・ジュンによって設立されたオントロジーは、Web3への信頼できるアクセスを提供するインフラを構築しています。技術者としてのバックグラウンドを持ち合せる哲学者リ・ジュンは、このオントロジー・プロジェクトの名付け親でもあります。

哲学用語では、オントロジーは「存在論」を指し、ものごとの存在そのものに関する現実的概念を追求する哲学の一分野です。また、セマンティックウェブの文脈でもオントロジーという根本的プロトコルが存在しています。オントロジーは技術や哲学の障壁を超えた物事の基本的なインフラのことを指しており、分散型かつ信用ベースのインフラを構築するという我々のビジョンとマッチしています。

セマンティックウェブとは

セマンティックウェブとは、ウェブサイト上の情報などに意味(Semantics)を持たせることで、コンピュータがより正確な情報を分析し、再利用や提供できるようになることを目指す構想やプロジェクトのこと。

仮想通貨用語集

関連:初心者でもわかるOntology(オントロジー)|仕組みや今後の将来性について

関連:10分で分かるオントロジーの全体像【CONNECTV・動画解説】

3)日本での上場について

次に、日本での上場についてお話を聞かせてください

ONT(オントロジーが発行する独自ユーティリティトークン)は、日本の暗号資産取引所ディーカレットに上場を果たしました。

関連:ディーカレット、国内初となる仮想通貨オントロジー(ONT)の上場予定を発表

これは、日本におけるONT初の上場であり、オントロジーと成長する日本のコミュニティにとって大きなマイルストーンとなりました。ONT/JPY取引ペアは2021年7月19日に稼働し、最初の数時間で40,000(当時のレートで約265万円)を超えるONT取引量が実現しました。2021年8月12日、ONTはもう一つの日本の取引所であるHuobi Japanにも上場されました。

関連:Huobi Japan、仮想通貨オントロジー(ONT)上場へ

日本での上場は、オントロジーのビジネスにどのような影響を与えたのでしょうか?

2021年に、オントロジーのONTトークンが2ヶ所の暗号資産取引所に上場したことは、日本の皆様が安心のできるプラットフォームでONTを取引できるようになったことを意味するだけでなく、日本の暗号資産に対する規制は比較的厳しいことから、オントロジーに信頼性と合法性を提供しています。

実際、市場に存在する数千ものコインやトークンの中で、ホワイトリストに登録されている仮想通貨はONTを含め、わずか約40種類に過ぎません。

日本でのユースケースを拡大する計画はありますか?

オントロジーはこれまでにも日本でのパートナーシップを成功させており、製品の実際のユースケースを示しました。例えば、ZAICO社(本社:山形県)とのパートナーシップは、同社の在庫管理システムを強化し、トレーサビリティ、透明性、信頼性を向上させることに成功しています。

関連:オントロジー、日本企業ZAICOへ技術提供を開始

この成功に基づき、日本で幅広いユースケースを作り、普及させていくため、いくつかの企業とパートナーシップの可能性について協議しているところです。

これからメディアなどを通じて共同でプロモーションを行い、ユーザーが実際にオントロジーの高性能でビジネスに適したパブリックブロックチェーンの恩恵を受けられる製品を開発・リリースしていきます。まずはオントロジーのユニークなDIDである「ONT ID」を法人の顧客に実装して頂き、より多くのユーザー層へ訴求していく予定です。

4)オントロジーのDIDについて

ONT IDについて言及されましたが、その特徴はどういったところにあるのでしょうか?

ONT IDは、オントロジーの分散型IDソリューションで、高い信頼性を持ちつつプライバシーを守る製品として設計されており、ユーザーに力を与えることが目的です。これは、分散型識別子と検証可能なクレデンシャルのためのW3Cの推奨規格に準拠した分散型IDフレームワークです。

関連:検証可能な資格情報(クレデンシャル)のユースケースとは=XSL Labs寄稿

ブロックチェーンおよび暗号技術に基づき、ONT IDは人・データ・サービスを迅速に識別し、結びつけることができます。ONT IDの主要な機能は、分散化、自己管理、プライバシー保護、および使いやすさを目指しており、ユーザーが自らのデータとアイデンティティを完全にコントロールすることを保証します。

拡大を続けるユーザーベースを促進するため、ONT IDは2021年9月にアップグレードを行い、ユーザー体験を改善し、開発者がONT IDを通じて洗練されたアプリや実世界でのユースケースを簡単に構築できるようにしました。これらには以下のようなものがあります。

  • ONT Loginは、ウェブサイトやアプリケーションで信頼性の高いユニバーサル認証を可能にする新機能で、ユーザーはパスワードを覚えることなく複数のプラットフォームにログインできるようになります。
  • ONT TAGは、オンラインID認証のためのオントロジーの新しい分散型ソリューションです。アプリケーションがKYC認証などのユーザーの検証可能な証明書にアクセスできるようにする一方、ユーザーが独立して情報を承認することでプライバシーを保護できるようにします。
  • OScoreは、DeFiの信用度を測るためのスコアで、さまざまな種類のオンチェーン取引データを用いて算出されます。
  • 関連:オントロジーが新たな分散型IDソリューションをリリース

    オントロジーのDIDは、今後どのような分野での活用・普及が期待されますか?

    ONT IDは、現在までにメルセデス・ベンツのメーカーであるダイムラー社傘下のダイムラーモビリティ、Microworkers、bloXmove、ROCKIなどとの提携により、多くの有力製品に実装されています。現在、150万人以上のユーザーがONT IDを利用してデジタルIDを管理しています。

    関連:オントロジー、モビリティ用ブロックチェーン開発のbloXmoveと提携

    3月2日に正式ローンチされたばかりの「オントロジーEVM」は、オントロジーの利点を多くのユーザーに新たに提供することになるでしょう。より多くのアプリケーションがオントロジーネットワーク上に構築され、開発者やユーザーの可能性が拡大されることになるはずです。オントロジーのアプローチの関連性と応用性は、チェーンや業界に関係なく、Web3全体に及ぶことになります。

    関連:オントロジー、イーサリアム仮想マシンを正式ローンチ

    5)オントロジーのDAO化はあるのか

    今後、オントロジーのDAO化はあるのしょうか?

    DAOは必然的に分散型世界の組織形態となり、より多くのブロックチェーン技術がDAOに吸収され、エコシステムの迅速かつ健全な発展が可能になります。

    分散型IDとデータソリューションを通じてWeb3に信頼、プライバシー、セキュリティをもたらすプロジェクトとして、オントロジーのDIDは、デジタル資産に基づく「中央集権性」をある程度排除することができるだけでなく、DAOメンバーの積極性を促し、開発チームと一般メンバーの意思決定のバランスを図ることができます。

    オントロジーを実装したクレジットベースのクロスチェーン分散型融資プラットフォームである「Wing Finance」は、そのDAOコミュニティをフルに活用しています。WINGトークン保有者は、新製品の発売、WINGトークンの製品適用ルール、Wing DAOコミュニティファンドの配分、そしてコミュニティが検討すべき新しいガバナンス提案の投票など、ガバナンスに参加することもできます。

    我々は、特にオントロジー・ブロックチェーン上のEVMの統合が来ることで、オントロジー上に構築するDAOがますます増えていくことを嬉しく思っています。

    DAOとは

    DAOは「Decentralized Autonomous Organization(自律分散型組織)」の略。一般的な企業などとは違い、経営者のような中央管理者が存在しない。参加メンバーやアルゴリズムによって運営管理が行われる。

    仮想通貨用語集

    6)日本の読者へのメッセージ

    最後に、日本の読者へのメッセージをお願いします

    日本市場はブロックチェーン業界に対して厳しいルールを設けており、オントロジーは関連するすべての規制を完全に遵守することを約束します。

    オントロジーチームは、日本におけるブロックチェーンエコシステムを可能な限り革新的なものにするために尽力しています。今後、より多くの日本の公的機関や民間企業に、オントロジー独自の分散型ソリューションを提供できることを楽しみにしています。

    さらに、より多くの日本の取引所にONTとONGを追加することにも取り組んでおり、暗号資産ネイティブと従来のビジネスベンチャーの両方に対し、さらに利益をもたらす新しいトークン使用事例を模索しています。言うまでもなく、日本におけるオントロジーの未来は明るいものであると確信しています。

    我々の各種ソーシャルメディアでは、最新の情報をお届けしています。また、日本語のTwitter、そしてMediumの専用アカウント上で、日本に合わせたコンテンツも配信しています。

    CoinPost App DL
    注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
    07/27 土曜日
    08:10
    マスク氏のX(旧ツイッター)、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除か
    イーロン・マスク氏がオーナーのX(旧ツイッター)は、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除した。ドージコイン擁護のためか。
    07:35
    BitwiseのETH現物ETFの横断幕、NYSEに掲揚
    仮想通貨運用企業Bitwiseのイーサリアム現物ETFの横断幕が、ニューヨーク証券取引所に掲げられた。同社は、取引終了のベルを鳴らすことも報告している。
    07:05
    野村傘下のレーザーデジタル、利回り提供のイーサリアムファンド販売予定か
    野村ホールディングスの仮想通貨資産子会社であるLaser Digital(レーザーデジタル)は、イーサリアム現物ETFの代替商品の導入を計画しているようだ。
    06:40
    米SEC、グレースケールのミニ版ビットコインETFを承認
    仮想通貨投資企業グレースケールが提供するGBTCは手数料(1.5%)が最も高く資金流出は続いていたが、新商品を導入し0.15%という業界最安の手数料設定で競争力を高める狙いだ。
    06:20
    ビットコイン価格が21年後に最大で75億円に到達か、マイケル・セイラー氏の強気予想
    ビットコインを最も保有する米上場企業マイクロストラテジーのマイケル・セイラー氏はカンファレンス「ビットコイン2024」で、BTCの今後の強気予想のプレゼンテーションを行った。
    07/26 金曜日
    17:10
    「米大統領選で価格変動 トランプやハリス由来のミームコインの買い方
    トランプトークンの概要 ドナルド・トランプ前米大統領とその「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)というスローガンからインスピレーションを得…
    17:10
    ヤマハ発動機が初のVTuberコラボNFTを発行、Yamaha E-Ride Baseを訪れて進化可能
    ヤマハ発動機が初のNFTデジタルステッカーを発行。横浜のYamaha E-Ride Baseで進化するダイナミックNFTを体験し、限定グッズをゲットできる。
    15:13
    ビットフライヤーがFTX Japan買収完了、カストディ事業展開へ
    株式会社bitFlyer HoldingsはFTX Japanの株式100%を取得し、完全子会社化を発表。8月26日までに社名を変更し、クリプトカストディ事業を展開予定。法制度整備後の暗号資産現物ETF関連サービス提供も視野に入れている。
    14:43
    Neo Xメインネットが正式稼働 EVM互換でネオのエコシステムを拡張
    Neoは高性能EVMベースのサイドチェーン「Neo X」のメインネット正式稼働を発表。クロスチェーンブリッジで流動性と互換性が向上し、エコシステムの可能性が広がる。
    14:15
    カマラ・ハリス氏のミームコインが過去最高値を記録、大統領候補指名の期待受け
    PolitiFiと呼ばれる政治パロディのミームコインが、仮想通貨領域で独自のジャンルを形成しており、カマラ・ハリス副大統領のパロディコイン「 Kamala Horris(KAMA)」が急騰し話題となっている。
    12:55
    アルトコインETFの未来、ブラックロックが語る現実と可能性
    ブラックロックのデジタル資産責任者は、イーサリアム現物ETFが承認されていても他のアルトコインETF誕生には困難があると話した。
    12:14
    仮想通貨相場反発、ビットコイン・カンファレンスのトランプ登壇に関心集まる
    昨日までの大幅下落とは打って変わり暗号資産(仮想通貨)相場は反発した。強気シグナルのハッシュリボンが点灯しているほか、今週末にはビットコインカンファレンスに米国のトランプ前大統領が登壇予定であり、投資家の関心が集まる。
    11:00
    トランプ前大統領の陣営、4〜6月期で仮想通貨で6億円の寄付金調達
    トランプ前大統領は、ビットコインなど仮想通貨で6億円以上の選挙資金を調達。「ビットコイン2024」でもさらに資金を集める予定だ。
    10:30
    BTCが290万ドルに到達するシナリオ、VanEckが公開
    仮想通貨ビットコインが2050年までに290万ドルに到達するシナリオをVanEckのアナリストが公開。このシナリオを実現するための条件を説明している。
    10:00
    ソラナ初事例、パラオ共和国がデジタルID発行
    主権国家が仮想通貨・ブロックチェーンであるソラナ上で、法的アイデンティティを発行する初めての事例となった。

    通貨データ

    グローバル情報
    一覧
    プロジェクト
    アナウンス
    上場/ペア