FTX破綻など背景にリスクを指摘
米連邦準備制度理事会(FRB)など3つの米当局は3日、暗号資産(仮想通貨)が銀行にもたらすリスクについて注意を促す声明を発表した。
FRBの他、米通貨監督庁(OCC)と米連邦預金保険公社(FDIC)も名前を連ねており、銀行セクターが仮想通貨について認識しておくべきリスクを列挙している。
背景としては、2022年に仮想通貨分野で「大きな変動と脆弱性の露呈」が見られたことがあると説明。5月以降の、旧テラエコシステム崩壊から、FTX破綻にいたる一連の出来事を念頭に置いている形だ。具体的には、主に以下のリスクを指摘した。
- 業界参加者が詐欺や不正を行うリスク
- カストディ業務、トークン償還、所有権に関する法的不確実性
- 仮想通貨市場のボラティリティ(価格変動)の大きさ
- ステーブルコインの暴落リスクと、暴落した際に、ステーブルコイン準備金を保有する銀行の預金が流出するリスク
- オープン、パブリックなネットワークに関するリスク
「オープン、パブリックなネットワーク」については、システム監視機構や、責任範囲などの基準の欠如、サイバー攻撃リスクやその他の脆弱性があるとしている。
その他に、仮想通貨企業の相互接続もリスクの一つに挙げた。セクター内企業の一部が、資金面などで相互に結びついているため、何か問題が起きた時に、仮想通貨セクター内で波及する可能性があることを問題視している。
このため、仮想通貨セクターへのエクスポージャー(ポートフォリオが価格変動の影響を受けること)を有する銀行にとって、こうした相互接続は、集中化リスクをもたらす可能性もあるとした。
実際に、5月の旧テラエコシステム崩壊以降は、テラのプロジェクトに出資を行っていたスリーアローズキャピタル(3AC)、さらにその3ACに巨額融資を行っていたVoyager Digitalなどが相次いで破産している。
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またFRBらは、一部の仮想通貨企業により、不正確または誤解を招く表現が行われ、投資家などに損害を与える可能性があるとも述べた。
具体的な事例としては、2022年8月、米連邦預金保険公社(FDIC)が米国版FTXなどに対して、FDIC保険が、仮想通貨関連の口座に適用されるかのような説明を行っていたとして、即座に是正するよう求めていたことがある。
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FTXとは
バンクマン=フリード被告が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、昨年11月に破産申請を行なっている。
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今後も監視を継続
こうしたリスクを踏まえて、FRBらは「仮想通貨を発行または保有することは、安全で健全な銀行業務と矛盾する可能性が高い」と結論しており、「銀行の仮想通貨関連エクスポージャーを注意深く監視していく」とも説明した。
今後も、銀行の仮想通貨セクター参加については、必要に応じて声明を発表し、他の関連当局とも連携していく予定だとしている。
12月には、国際決済銀行の中央銀行総裁・監督責任者グループ(GHOS)も、銀行の仮想通貨取り扱いに関する世界的な基準を発表。銀行の仮想通貨保有量上限を総資産量の2%までに設定したところだ。
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