金融庁の暗号資産ガイドライン
金融庁は24日、各種トークンの暗号資産該当性を巡る見解や、買収された暗号資産交換業者への監督対応等に関して、昨年12月に募集していたパブリックコメントに対する回答を公開した。
NFT(非代替性トークン)をはじめ、ブロックチェーン上で発行されるトークンの種類が多様化する中で、資金決済法上の暗号資産の解釈の明確化に取り組んでいる。
金融庁は23年12月16日に、「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」(16 暗号資産交換業者関係)の一部改正(案)を公開。その際にパブリックコメントを募集した経緯がある。なお、改正(案)は主に以下の内容に関連していた。
- ブロックチェーン上で発行されるアイテムやコンテンツ等の各種トークンの暗号資産該当性に関する解釈の明確化
- ビジネスモデルの多様化を踏まえた暗号資産交換業者への監督上の対応
- 暗号資産交換業者の主要株主が他の事業者に株主を譲渡することにより、暗号資産交換業者を売却・譲渡する場合等の、暗号資産交換業者への監督上の対応 等
以下では、事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)改正(案)と、パブリックコメントを踏まえて、NFTの暗号資産該当性に関する見解をまとめていく。
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NFTの暗号資産該当性
事前知識として、金融庁は「1号暗号資産」と「2号暗号資産」という用語を使用して、暗号資産の法規制を整備してきたことを押さえておきたい。
「1号暗号資産」とは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など、既に存在する代表的な暗号資産を想定したもの。「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる」こと、「不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる」等の要件がある。
これらの暗号資産は、資金決済法に基づく「資金決済手段」として扱われ、暗号資産交換業者は、登録やライセンスの取得など、資金決済法の規制を受ける。
一方、「2号暗号資産」は、既存の仮想通貨以外の新しい種類の暗号資産を指す。1号暗号資産と相互に交換できる市場が存在し、経済的な機能を有するものがこれに該当する。金融庁は2号暗号資産に対する具体的な規制を設けていないが、今後の規制強化も予想されている。
昨今、仮想通貨投資家や関係事業者の間では、NFTであっても仮に対価として使用でき、日本円や外貨と交換可能な場合、それは1号暗号資産に該当するのではないか、あるいは、トレーディングカードやデジタルアート、コレクタブルNFTについて2号暗号資産に該当するのではないか、といった疑問が上がっていた。
NFTが暗号資産に該当する場合、その売買や他の暗号資産との交換を行うことは暗号資産交換業に該当し、暗号資産交換業登録が必要となる。
以上を踏まえ、「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)」、及びパブリックコメントへの回答をまとめると、NFTの暗号資産該当性に関する判断基準については以下のように整理できる。
①NFTそれ自体に決済手段性がない場合は、1号暗号資産に該当しない。個別の実態調査を必要とし、以下2つの条件を満たすかが判断基準となる。
イ:発行者が決済手段としての使用の禁止の意図を明確にしている(利用規約等)
ロ:客観的性質が決済手段に不向き(例:発行数量が100万個以下、最小取引単位当た
りの価格が1000円以上)
②1号暗号資産の要件を満たさない財産的価値であっても、不特定の者を相手方として1号暗号資産と相互に交換できる場合には2号暗号資産に該当する。
③しかし、トレーディングカードやゲーム内アイテムなど、通常は1号暗号資産と同等の経済的機能(イ、ロ)を有しない場合は2号暗号資産に該当しないとされる。
この点について、金融庁はパブリックコメントへの回答、及びガイドラインを通して、一貫して以下のように述べている。
「1号暗号資産を用いて購入又は売却できる商品・権利等にとどまらず、当該暗号資産と同等の経済的機能を有するか」等を考慮する。
③また、アートNFTのように、それ自体高額で取引され、1号暗号資産と同等の経済的機能イ、ロ)を有しない場合、2号暗号資産に該当しないと考えられる
④ただし、NFTによって発行体の管理方法や利用用途に差異があるため、暗号資産として扱われるかどうかは実態に基づいた個別具体的な評価によって決まる。
例えば、NFTであっても、大量に発行され、現金のように支払いに使用される実態がある場合には、2号暗号資産に該当する可能性はあると推測される。
日本のWeb3政策
パブリックコメントでは、「DAOのメンバーシップのガバナンストークン」について、2号暗号資産に該当するか否かについて質問があった。金融庁はこれについても同様に、1号暗号資産と同等の経済的機能を有するかどうかを考慮すると述べている。
日本政府は、22年6月に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に、「Web3推進に向けた環境整備(税制)」と「メタバースやNFT(非代替性トークン)を用いたコンテンツの利用拡大」を含めていた。
同月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」においても、Web3(分散型ウェブ)の環境整備を本格化していく意思を示していた。
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