メタバース戦略設定のための協議
フランス経済・財務省の企業総局はメタバースに関する公開協議を行っている。企業や研究組織、市民などから、5月2日まで意見を募っている形だ。
企業総局は、背景について、メタバースの開発が最近、経済的分野でよく議論されており、多くの企業が自らをメタバース関連のソリューション・プロバイダーあるいはユーザーとして参加し始めていることがあると説明した。
ただの流行であることを超えて、没入型のデジタル化が台頭してきているとも続けている。今回の協議の目的については、次のように述べた。
協議により、様々な利害関係者(市民、企業、団体、研究者)が、メタバースという新たな領域への期待を表明し、重要な技術という角度から、仮想空間への移行がどのようなものになるのかを予測できるような戦略を考案することを目指す。
また、没入型仮想空間において、現在グローバルな巨大企業によって提供されているものの代替を提案する。
メタ社などのビッグテック企業のメタバースと比較しても競争力あるものを探っていこうとする姿勢を示した格好だ。
寡占リスク
欧州委員会も5日より、メタバース関連の意見募集を行っており、その中で少数の大企業による寡占のリスクを指摘していた。欧州委員会は、次のように述べている。
少数の大企業が、仮想世界のゲートキーパーとなって市場参入の障壁を作り、EUの新興企業や中小企業をこの新たな市場から締め出す危険性がある。
大手企業が独自に提供するシステムが普及することで、エコシステムが閉じたものとなり、個人情報やデータ保護、サイバーセキュリティ、仮想世界の自由度や開放性に悪影響を及ぼす可能性がある。
EUの新興企業や中小企業がイノベーションを支援するフレームワークの恩恵を受けること、ユーザーやコンテンツ制作者がオンラインで保護され、仮想世界で自信を持って活動できるようにすることが不可欠だ。
メタバースとは
インターネット上に構築された、多人数参加型の3次元仮想現実世界のこと。アバターを使い、様々な楽しみ方ができる。例えば、『The Sandbox』というゲーム内のメタバースでは、ボクセルアート制作ツールやゲーム制作ツールが提供されており、ユーザーはそのなかで自作のゲームや施設を作ることができる。
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文化省の提案
フランスでは、22年10月に文化省も「メタバース開発におけるミッション」についての報告書を発表していた。
アバターから、暗号資産(仮想通貨)、バーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットまで、「メタバース開発は大きなチャンス」としている。フランスおよび欧州におけるメタバース構想として、主に以下の事項を提案した。
- グローバルなデジタルサービスにおけるリーダー的地位を取り戻すために、メタバースの機会を捉える
- デジタル市場法など欧州の法律をメタバースの課題に適合させる作業を開始する
- 最適な戦略的投資を行うために、メタバースがもたらす様々な付加価値を分析する
- 2024年にパリで開催されるオリンピックの機会に、フランスのメタバース関連組織が具体的なプロジェクトを実施する
- 相互運用可能な複数のメタバース出現を可能にするための公的介入
この他にも、学際的な研究イニシアチブにより、健康や教育、環境など社会的ニーズに沿った実験的なメタバースと、それがもたらすリスクを評価する手段を同時に開発していくことも挙げた。
また、没入型アートの促進や、環境に配慮したメタバースのソリューションや、メタバースの環境負荷を測定するシステムを開発することも盛り込んでいる。
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