仮想通貨投資に加え、マイニング事業も
ブータン王国の投資部門は、2019年より暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)のマイニングを行っていることが分かった。
先月、複数銘柄の仮想通貨に数十億円規模で投資していたことが伝えられたばかりだが、投資だけではなくマイニングも行っていた格好だ。担当者によれば、2019年4月にビットコインの価格がまだ約69万円(約5,000ドル)だった時点でマイニングを開始していた。
ブータンの政府系投資ファンドDruk Holding & Investments(DHI)は、ヒマラヤ山脈に位置する同国の豊富な水力発電資源を利用してマイニングを行っている。DHIは、地元メディアThe Bhutaneseに対して、事業の採算は取れていると確言した。なお、マイニング事業の規模は明かされていない。
採掘したビットコインを販売することで、電力やマイニングマシンの支払いに充てているという。基本的には採掘したビットコインは販売しているが、特に2024年の半減期後に価格が上昇する可能性も念頭に置いて、長期的に保有している分もあると述べた。
また、DHIは、国内の電力需要にも配慮している。DHIによると、電力供給の優先順位は国内消費、地場産業、および民間部門だ。水力発電の生産量が少ない冬季には、マイニングマシンを停止したり、安価な場合には電力を輸入するとしている。
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半減期とは
ビットコインなど仮想通貨のマイニング報酬(=新規発行量)が半分に減るタイミングを指す。仮想通貨にはインフレを防ぐために「発行上限」が定められているものが多く、一定周期で訪れる半減期の度に、新規発行量が半分に減る仕組みになっている。供給量が減ることで希少価値が大幅に上昇し、価格が高騰しやすくなるため、仮想通貨特有の注目イベントでもある。
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新たなマイニング施設を建設へ
さらに、ブータンはナスダック上場の仮想通貨マイニング企業Bitdeerとも現在、マイニング規模拡張について交渉中だ。
Bitdeerは投資家向け情報で、今四半期(4~6月)にブータンでは新たなビットコインマイニング・データセンターが着工予定であり、Bitdeerは、この施設で100メガワット(MW)の電力アクセスを確保することを望んでいると明かした。
新たなマイニング施設は、2024年の第3四半期(7~9月)に完成する予定だとされている。現在のところ、誰がこの施設の所有権を持つことになるのかは明かされていない。
最新技術へ投資
DHIは、仮想通貨への投資は「FOMO(Fear of Missing Out:乗り遅れることへの恐れ)」からのものではなく、「テクノロジーを導入して、その恩恵を受けるための投資」だとも考えを示している。
未来を見据えた投資戦略を採用し、急速に進化するテクノロジーに携わることで、より持続可能なブータンを構築したいとも続けた。
人口80万人未満の小国で、山岳地帯の自然に囲まれたブータンは、ブロックチェーンなど最新技術への投資を進めている。
例えば、DHIは、ユーザーが自分でIDの管理を行うことができる自己主権型国民デジタルIDプラットフォームの構築に投資を行っているが、このプラットフォームはブータン国内で設計・構築されている。最新産業に携わる人的資源も育成している格好だ。
DHIは、ブータンは、デジタルイノベーションを進めており、世界のイノベーションの最前線に立つために関連分野に投資していると説明した。
同国は、リップル社と共同して、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の試験運用も行っている。
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