合意形成層のファイナライズ
イーサリアム(ETH)のコンセンサスレイヤー(合意形成層)で、一時的にファイナライズ(確定)の停止、あるいは遅延する事態が発生した。この状況は、5月12日3時(日本時間)ごろに発生し、約30分後に回復している。
The beacon chain stopped finalizing about thirty minutes ago. I don't know why yet, but in general the chain is designed to be resilient against this, transactions will continue as usual and finalization will kick in when the problem is resolved. pic.twitter.com/utAS0uAWpG
— superphiz.eth 🦇🔊🛡️ (@superphiz) May 11, 2023
合意形成層がファイナライズを停止するとは、提案された新規ブロックの確定ができない状態を指す。ファイナライズとは、ブロックが全ネットワークに認められ、以降変更不可能になること。これができないと、ダブルスペンディング(同じコインの二重使用)の試みがあったり、ネットワーク内に異なる取引履歴が生じて分裂(フォーク)するリスクが高まる。
イーサリアムのビーコンチェーン コンサルタントsuperphiz.ethがツイートしたところによれば、合意形成層で不調が生じた理由は明確ではないが、基本的に合意形成層はこのような問題に対して強い耐性を持って設計されている。つまり、問題が発生しても取引は通常通りに実行可能で、問題が解決した後に、ブロックの確定(ファイナライズ)も再開されるという主旨だ。
データプロバイダのBeaconcha.inによると、イーサリアムのエポック200,552から200,554では、Attestations(認証)数が急激に減少した。イーサリアムにおいて、1エポックは6.4分であるため、3エポックは19.2分。Attestationsがゼロにならなかったという点は、ネットワークが全体として依然として機能し、特定のブロックの確定が遅れただけで、新しいブロックの生成や取引の処理が続けられたという事実を示している。
実際、その25分後、メインネットは再びブロックのファイナライズを再開したとの報告がある。Prysmatic Labsの共同創設者Preston van Loon氏によれば、問題に対処するため、一部のコンピューターソフトウェア(クライアント)が通常以上の負荷を受けて動作したことで、イーサリアムの取引履歴(チェーン)を正確に記録し続けることができた、と指摘した
イーサリアムの合意形成層とは
2020年にビーコインチェーンとして開始されたイーサリアムのオリジナルのProof-of-Stake(PoS)ブロックチェーン。2022年9月15日には、イーサリアムのProof-of-Work(PoW)チェーンと「マージ」。現在はイーサリアムの「合意形成(Consensus)レイヤー」として機能している。
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クライアントの多様性
Blockworks Researchのシニアアナリスト Sam Martin氏は、一時的ではあるが大幅な検証者(バリデーター)の参加率が減少した結果、認証(Attestations)の数が急激に減少する事態が発生したとの見解を示している。
EthereumPools.infoはまた、「数エポックにわたり、我々が監視しているほぼすべてのプール/オペレータがオフラインになった」とツイートした。
🚨 For a couple of epochs almost every pool/operator that we monitor went offline 🧐
— ethereumpools.info (@EthereumPools) May 11, 2023
Any idea what happened? pic.twitter.com/3Q9BDFis1d
Martin氏はまた、検証者が使用できるソフトウェア(クライアント)の多様性により、この問題が広範囲に広がったり、長時間にわたって続くことを防いだという意見を示している。
イーサリアムのブロックが一時的にファイナライズされなくなる一方で、実行レイヤー(エグゼキューションレイヤー)では通常通りブロックが検証され続けた。これは、イーサリアムの検証者セットの中でのクライアントの多様性の重要性を再度示す事例となった。
つまり、様々な種類のソフトウェアが使用されていたために、一部に問題が発生したとしても、他のソフトウェアによってネットワーク全体の機能が維持され、早期の復旧に貢献したという。
「クライアントの多様性」は、イーサリアムの取引を検証するために使えるソフトウェアの種類のことを指す。様々な種類のソフトウェアが使われることで、ネットワーク全体の安全性や安定性が高まる。
Diversfy Nowのデータによると、イーサリアムの取引を確認するソフトウェア(クライアント)の中で、’Lighthouse’と’Prysm’がほぼ同じぐらい(38%前後)使われていて、その次に’Teku(16.9%)’がある。しかし、’Nimbus’や’Lodestar’というソフトウェアはあまり使われていない。
Superphizは、ある特定のソフトウェア(クライアント)が全体の33%以上を占めていない場合、つまりソフトウェアの使用が適度に分散されている状態であれば、今回のような「ファイナライティの喪失」という問題は起こらなかった可能性が高いと述べている。
検証者(バリデーター)とは
バリデータとは、ブロックチェーンに記録されるデータの妥当性を検証するノードのこと。取引履歴を検証する役割などを持ち、その役割を果たすと仮想通貨で報酬が与えられる。
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