ショッピングに使えるトークンの配布計画
タイの与党であるタイ貢献党は、デジタルウォレットを使って、景気対策としてタイ国民にそれぞれ約4万円(1万バーツ)を配布する計画だ。地元メディアが8月30日に報じた。
党関係者によると、タイ貢献党は、デジタルウォレットで支払い手段としてユーティリティトークンを用いることを考えており、これからタイ銀行(中央銀行)と協議する予定だ。
計画によると、16歳以上のすべてのタイ国民は、ユーティリティトークンの形でデジタルウォレットに1万バーツの資金を受け取る資格を持つ。なお、この資金を現金に換えたり、債務の清算に使用したりすることはできない。
ユーティリティトークンは、居住地から半径4km以内に位置する店舗で商品やサービスを購入するために使用可能となる。有効期限は、自分のアカウントに受け取ってから6ヶ月以内だ。
ユーティリティトークンとは
特定のサービスを利用するための権利として機能する、実用性のあるトークンのこと。商品や食事などの代金を現金に代わって決済できたり、保有していることでクラウドストレージにアクセスできるなどの例がある。
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財源やルール
党関係者によると、デジタルウォレットの立ち上げには、納税者に約2.3兆円(約5,600億バーツ)の負担がかかると推定されている。一方で、国家経済の刺激につながり、最大約7兆円(1兆6,800億バーツ)が流通することが期待されているところだ。
財源については、約1兆円(2,600億バーツ)の増加が見込まれる2024会計年度の税収、経済拡大により約4,100億円(約1,000億バーツ)増えると推定される税収増加分、国家予算からの約4,600億円(1,100億バーツ)、福祉予算からの約3,700億円(約900億バーツ)を充てることが考えられている。
他に財源の選択肢としては、政府が資金を借り入れることも検討されている。
現在、タイ中銀は、ユーティリティトークンを商品やサービスの法的な支払い手段としてはいないため、実施にあたってはルールの修正が必要となる見込みだ。
また関係者は、デジタルウォレットを支えるブロックチェーンエコシステムの構築や、口座開設時および定期的な顧客身元確認(KYC)のために時間が必要とされ、計画を6か月以内に開始することは難しいと述べている。
セーター・タウィーシン首相は、デジタルウォレットは2024年初頭のローンチを目指していると話した。
なお、ウォレットを使用する各個人に対してはKYCの手数料として約400円(100バーツ)が請求される見込みだ。ウォレットのKYC情報は、将来的には他のアプリケーションで使える可能性もあるとされている。
CBDCによる給付金
中央銀行デジタル通貨(CBDC)も、国の資金を国民へ配る際の手段として注目されている側面がある。
特に、COVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックが始まった当初は多くの国が特別給付金を国民に配布したが、この際、CBDCであれば手数料と時間をかけず迅速に配れると指摘された。
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すでに実施されている事例としては、中国がデジタル人民元の実証実験の一環として、ショッピングの補助金を一部消費者に配布している。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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