仮想通貨の信頼回復に貢献
世界4大会計・コンサルティング会社のプライス・ウォーターハウス・クーパース(PwC)は、世界の暗号資産(仮想通貨)の規制状況に関するレポートを公開。2023年を通して、世界の仮想通貨規制において注目すべき進展が見られたと総括した。
🪙 For those navigating #crypto in 2024, it’s not just about weathering the storm – but building a foundation for a thriving ecosystem, where clear regulatory guidance acts as the cornerstone of renewed stability.
— PwC (@PwC) December 22, 2023
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PwC米国のWeb3/デジタル資産リーダーのマット・ブルメンフェフド氏は、「この1年間の規制と法的枠組みの整備は、デジタル資産に対する信頼回復に貢献した」と指摘し、2024年の展望について、次のように述べた。
世界中の業界関係者にとって、2024年は単に難局を乗り越えることではない。明確な規制指針が新たな安定の礎として機能する、繁栄するエコシステムの基盤を構築することだ。
レポートでは、大きな進展の一つとして欧州連合(EU)の暗号資産市場規制「MiCAR 」(The Markets in Crypto-Assets Regulation)を取り上げている。MiCARは、EU加盟各国の法域を超えた、包括的な規制と監督の枠組みで、2023年6月に正式承認された。
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またレポートは世界43カ国の規制状況を評価するとともに、各国の状況について個別に概説した。
規制整備が進んでいる国々
PwCは、2024年1月時点の仮想通貨規制の枠組み、ライセンス/登録導入、トラベル・ルール、ステーブルコインの4項目について、43カ国の状況を一覧表にまとめた。なお、各国の状況にはEUのMiCARの影響が反映されている。
4項目全てをクリアした国は、日本を含む次の24カ国となっている。
オーストリア、バハマ、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ジブラルタル、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スエーデン、スイス
ステーブルコインに関する規制整備のみが確立していない国/地域は、香港、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、モーリシャスだった。
仮想通貨の世界的ハブを目指す香港は、ステーブルコイン発行者向けのガイドラインを2024年半ばまでには整えたい方針を示している。
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シンガポールでは中央銀行が今年8月に、ステーブルコインの最終的な規制のアプローチについて発表。シンガポールで発行されるシンガポールドル、あるいはG10通貨の価値と紐づけられた、単一通貨ステーブルコインに適用される。
上記のように香港、シンガポール、モーリシャスでは、すでにステーブルコイン規制についての議論や審議など、規制整備に向けての活動が行われている状況である一方、UAEでは、規制枠組みの策定や検討が開始されていないようだ。
なお、EUでは、MiCARのステーブルコインに関する規制は、2024年7月に発効される予定となっている。
G10通貨とは
国際的な金融市場でのトレードや為替取引、国際取引の決済などに最も使用されている通貨のこと。米ドル(USD)、ユーロ(EUR)、英国ポンド(GBP)、日本円(JPY)、豪ドル(AUD)、ニュージーランドドル(NZD)、カナダドル(CAD)、スイスフラン(CHF)、ノルウェークローネ(NOK)、スウェーデンクローナ(SEK)が挙げられる。
▶️仮想通貨用語集
遅れをとる米英、カナダ
PwCによると、米国、英国、カナダでは、大枠となる規制の枠組みおよびステーブルコイン規制が未整備の状況である。
米国には、包括的でまとまったデジタル資産の連邦免許・登録プロセスがない。免許および/または登録に関するガイダンスの多くは、訴訟が解決され判決が下されることで、裁判所によって提供されている。
米国では、特に規制当局である証券取引委員会(SEC)に対して、仮想通貨についての明確な規制ガイドラインを提供しないまま、取り締まりを行っているとの批判が高まっている。11月には、トム・エマー下院議員がSECの法的執行から仮想通貨業界を保護する法案を提出。下院を通過した。
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規制が整備されていない一方で、米ドル建てのステーブルコインは、仮想通貨市場の主要部分を構成しており、ステーブルコインの時価総額は、今年史上最高値を更新し18.6兆円(1,310億ドル)に達している。(Coingeckoデータ)
米国では今年7月に「決済用ステーブルコインの明確化に関する法案」が議会に提出され、同月末には下院金融サービス委員会を通過したが、連邦準備制度理事会(FRB)は8月、ステーブルコイン取扱について銀行に対する監督強化を発表。法案を提出した議員らが、FRBに抗議する書簡を送るなど、法案成立の見通しは立っていない。
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12月6日に発表された、2024会計年度(2023年10月~2024年9月)国防予算の枠組みを決める国防権限法では、仮想通貨に関する条項は一切含まれておらず、国防予算の割り当てから外される形となった。