ビットコイン半減期の影響
スイスを拠点にする資産運用会社21Sharesは、暗号資産(仮想通貨) ビットコイン(BTC)の半減期が市場やマイナー、エコシステム全体に及ぼす影響について分析したレポートを発表。ビットコインは現在、過去3回の半減期とは、「異なる市場ダイナミクスを経験している」と指摘した。
ビットコインの半減期は約4年周期で発生し、マイニング報酬が半分に減少することでBTCの発行ペースを鈍化させることで希少価値が高まる。次回のビットコイン半減期は、4月20日前後に発動する予定で、マイニング報酬は現在の6.25 BTCから3.125 BTCに削減される。
歴史的に見るとビットコインは、半減期によって引き起こされる供給ショックによって需要が上回って高騰する傾向にあり、過去の相場ではいずれも過去最高値を達成してきた。
しかし、現在ビットコインは半減期前の3月14日時点ですでに過去最高値を更新していることから、このサイクルは異なる展開になる可能性があると、21Sharesは予想している。
半減期の影響を評価するためには、現在の需要と供給の動態を見極めることが重要であるとレポートは指摘。これまでのサイクルと異なるだけではなく、早期の価格上昇につながる可能性のある要因として以下を取り上げ、考察した。
- 需要サイド:ビットコイン現物ETFとその購入圧力
- 供給サイド:低下する流動性
- 有利な市場構造
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ビットコイン現物ETFの購入圧力
今年1月に米国で承認されたビットコイン現物ETFは、投資家から大きな関心を集め、3月13日には1日で10億ドルを超える流入額となり、過去最高を更新。グレースケールを除く九つの発行機関は取引開始から、2ヶ月以内に約300億ドル(4兆5,500億円)の運用資産を積み上げた。
ビットコイン現物ETFにはこれまでに累計100億ドル以上の純流入があり、14日間の平均流入額が約1億5,000万ドルで、2,500BTCに相当する。このBTCの量は、現在の1日のマイニングからの供給量(900BTC)の約3倍で、半減期後(450BTC)には5.5倍近くなる。
さらに、ビットコイン現物ETFで40万BTC以上を保有しているが、これは半減期後のビットコインの年間供給量(約16万4,000 BTC)を約240%上回っている数字だという。
レポートによると、米国のETF市場規模は7兆ドル(1063兆円)だが、ETF承認以前は資産運用会社の77%はビットコイン投資に消極的だった。米国の公認投資アドバイザーは114兆ドル(1京7,315兆円)を監督しているが、新規の商品については、発売後90日間は投資できないルールがある。
これらの投資アドバイザーがビットコインへ1%の配分を行った場合、巨額資金流入の引き金となり、ビットコインは現在の時価総額の2倍近くになるとレポートは指摘。供給を圧迫する可能性が高いと予測した。
流動性の低下
ビットコインの長期保有者(155日以上保有)からの供給量は、昨年12月に過去最高の(1,490万 BTC)まで急増後、現在約1,429BTCまで減少している。この数字はビットコインの流通供給量の約70%にあたる。
一方、仮想通貨取引所が保有するビットコインの量は、5年間で最低の230万BTCとなっている。
この傾向が続くと、ビットコインの供給サイドでは、ますます流動性が低下し、供給が逼迫して「放物線状」の強気相場が始まる可能性の下地を作ることになるとレポートは指摘した。
その他の要因
レポートは、ビットコインの追い風要因として、マクロ環境の改善も挙げた。
FRB(米連邦準備制度)の金利は現在安定しているが、市場予想では2024年中に約4〜5割の確率で利下げが行われると織り込んでいる。利下げとなれば株やビットコイン(BTC)などのリスク資産が買われやすくなるほか、米ドルの価値の下落の可能性や見通せない金融政策に対するヘッジとして、ビットコインに安全な避難所としての価値を見出す投資家も少なくない。
また、1,000BTC以上を保有する大口投資家(クジラ)は、ビットコインが史上最高値をつけ、市場が好調な中でも、売らないことを選択している。ビットコインに対する自信の表れであり、現在の上昇相場には、大きな成長の余地があるとの投資家の考えを示唆するものだとレポートは指摘する。
以上のような要因をまとめて考察すると、ビットコインに対する強気な姿勢が明らかとなり、今回の半減期に向けての全体的な状況は良好であるとレポートはまとめた。