機関投資家向けDeFiインフラを拡充
デジタル資産の取引・保管インフラを提供するFireblocksと、分散型取引所プロトコルを運営するUniswap Labsは12月4日、戦略的提携を発表した。2024年に入り600億ドルのDeFi取引を記録したFireblocksが、大手金融機関へのDeFiサービス提供を本格化する。
Fireblocksは、銀行、資産運用会社、決済サービス事業者、トレーディングデスク、ヘッジファンドなど、世界の有力金融機関2,000社以上にサービスを提供する。同社は今回の提携を通じてUniswapの分散型取引サービスへの直接アクセスを顧客に提供する。
「機関投資家から、安全でスケーラブルな取引環境への需要が高まっている」と、FireblocksのMichael Shaulov CEOは語る。同社は4日の年次ユーザーカンファレンス「SPARK」でDeFiスイートの拡張を発表しており、Uniswapとの提携はその戦略の一環となる。分散型融資プロトコルAaveとも接続する。
Uniswapは、ブロックチェーン上で自動的に価格形成・取引を行う分散型取引所(DEX)の最大手だ。これまでに2.5兆ドルの取引高と4億6500万回の取引を記録し、セキュリティ面でもハッキング被害ゼロの実績を持つ。
注目すべきは、今回の提携でFireblocksが導入する新機能の数々だ。同社のMPC(マルチパーティ計算)技術を用いたウォレットに、Uniswapの取引機能を直接統合。従来の取引所と比べて4.6ベーシスポイントの価格改善を実現し、12の異なるブロックチェーン上での取引に対応する。
Fireblocks Swapsにより、従来必要だったdAppへの接続や取引所アカウントの利用が不要となり、プラットフォーム内で直接トークン取引が可能になる。これにより、セキュリティリスクの低減と運用効率の向上を同時に実現する。
「Fireblocks Swapsにより、運用チームは信頼できるプラットフォーム上で数分以内にトークン取引を実行できるようになった」と、決済サービス企業TakenosのJoaquîn Herrera COO兼創業者は評価する。
技術面では、次世代MPCプロトコル「MPC-BAM」の導入も発表された。署名速度とウォレット作成速度が従来比100倍に向上し、決済、ゲーム、ソーシャルネットワークなどの高パフォーマンスアプリケーションのスケーラビリティが大幅に改善される。
さらに両社は11月、次世代プロトコル「Unichain」の統合計画も発表。取引確定時間を1秒(将来的には200-250ミリ秒)まで短縮し、手数料を95%削減することを目指す。
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Fireblocksとは
Fireblocksは現在80以上のブロックチェーンに対応し、累計6兆ドル以上のデジタル資産取引を手掛けている。同社は資産の保管・移転時の保険も完備しており、機関投資家向けの包括的なインフラを提供している。
DeFi(分散型金融):ブロックチェーン上で金融サービスを提供する仕組み
DEX(分散型取引所):中央管理者なしにブロックチェーン上で運営される取引所
MPC(マルチパーティ計算):複数の当事者間で安全に計算を行う暗号技術
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