新体制SECがSAB121撤回
米証券取引委員会(SEC)は23日、暗号資産(仮想通貨)業界にとってハードルになることが懸念されていた職員会計公報121号(SAB121)を撤回した。トランプ新政権の下、業界に緩和的な姿勢を示したことになる。
SAB121は、顧客の仮想通貨を保管する企業に対して、それらの資産を貸借対照表に「負債」として計上するよう義務付けるものだった。銀行などが仮想通貨のカストディ(保管)事業を行う上での妨げになる可能性が指摘されていた。
今回SECが発行した新たな会計公報122号(SAB122)はこの内容を撤回し、該当する企業には、代わりに米国会計基準審議会のガイドラインなどを参照するよう指示している。
具体的には、「他者のために仮想通貨を保管する義務を負う企業」に対して、そうした事業に基づく損失リスクに関連する負債を計上するかどうかを判断する上で、米国会計基準審議会の会計基準編纂書または国際会計基準などを適用して考慮するよう促した。
一律に負債として計上させる方針を取りやめた格好だ。
またSECは、仮想通貨の保管を行う企業に対して、既存の規制に従って、仮想通貨の保管に関連するリスクと義務を開示することが必要なことを伝えるよう職員に促している。
これまでの経緯
米国の上院下院は昨年、SAB121の示すガイドラインを不承認とする決議案を可決したが、バイデン大統領が拒否権を発動。覆すことはできていなかった。
政権交代にともなって、仮想通貨に対して批判的だったゲンスラー前SEC委員長が退任し、撤回が実現したとみられる。
関連:バイデン大統領、SECの仮想通貨ガイドライン覆す決議案に拒否権発動
SEC(証券取引委員会)とは
株や債券などの証券の取引を監督する米国の政府機関のこと。1934年設立。公正な取引の確保と投資家保護を目的としており、インサイダー取引や企業の不正会計、相場操縦などを防止する。仮想通貨が有価証券に該当するかという判断も行う。
▶️仮想通貨用語集
SAB121に対しては、SEC内部からも反対の声があった。特に、ヘスター・パース委員は、SECが会計慣行の変更につながる「最終的な解釈指針」を、職員会計公報という形で公表したことを批判していた。
会計公報は、SECの公式な承認を得て発行されたものではないものの、企業や監査人が規制を遵守する際の重要な参考資料となるものだ。
SECの方針転換に期待
トランプ新政権では、仮想通貨の規制方針が大きく変わることが期待されている。SECは22日、仮想通貨業界向けの特別タスクフォースを立ち上げたところだ。
このタスクフォースは、明確な規則の策定や、開示要件の整備、法執行リソースの適切な配分に焦点を当てていくとしている。ゲンスラー前SEC委員長下で、SECはコインベースやリップル社など仮想通貨企業に対して活発に訴訟を起こしてきたが、こうした方針が変わる可能性もある。
さらに今後、SECは米商品先物取引委員会(CFTC)などの規制当局とも連携していく見込みだ。
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