- 仮想通貨市場
- ビットコインが再度急落、年初来安値を再度更新し、仮想通貨市場内には不安感が募っている。現在の状況を整理した上で、「ビットコイン暴落の要因3選」と「なぜSVがBitcoinCash(ABC)を抜いたのか」についてその背景を分析する。
仮想通貨市場
仮想通貨市場は12月7日、連日続く下落相場の中で、ビットコインが前日比10%安を超える急落、市場の状況悪化を見てか、アルトコインにも売りが相次いだ。
11月より連日続いた下落が一時的に一服したかのように思われていた仮想通貨市場は、大きなダメージを追った形だ。
本日のビットコイン急落の影響で、11月終わりに更新した年初来安値を更に下回るなど、仮想通貨市場の状況は極めて厳しい。
ビットコインキャッシュのコミュニティ分裂などを背景に下落した仮想通貨市場は、分散化ネットワークを支えているマイニング業者(特に中小企業)の状況を悪化、イーサリアムクラシックの開発会社の一社が当面事業を停止を発表するなど、相場下落が多くの仮想通貨関連企業などに影響、悪循環を作り出している。
相場の状況を見て行くと、昨年末のバブル相場や2018年の下落相場で形成した6000ドル付近の硬いサポートラインを割った後、約1月で44%の下落幅を記録した。
時価総額全体の推移では、ビットコインのドミナンスが本日再度55%台まで回復、ハイボラティリティによるリスク性の観点からもアルトコインがより厳しい状況に置かれていることが明らかになっている。
ビットコインのドミナンスを押し上げている要因の一つとして、時価総額上位通貨の下落率が大きいことが挙げられるが、特に11月の下落相場からイーサリアム(ETH)とビットコインキャッシュ(BCH)の時価総額低下が顕著に表れていることがデータから判明した。
仮想通貨の状況を示すドミナンスの推移について、専門家の意見の一つを取りあげると、ドミナンス推移に関する内容をレポートで記載したA.T. Kearneyは、75%まで上昇する可能性を予想しており、17年から増え続けた通貨の数が淘汰され、2極化して行く可能性も指摘されている。
では、本日のマーケットに話をうつして、「現在仮想通貨市場でなにが起きているのか」を以下の2点を焦点に当てて分析する。
- ビットコインがなぜ急落したのか?
- ドミナンスでも劣勢に立たされたビットコインキャッシュと分裂後に誕生したビットコインSVが時価総額でABCを抜いた背景には何があるか?
ビットコインがなぜ急落したのか?
まずビットコイン急落の背景は大きく分けて3点ある。
レンジを下抜け
ここ数日の仮想通貨市況でも伝えたレンジを下抜けし、重要サポートラインを割った。
下落トレンドにおける下降ペナントの可能性も指摘されていた値幅が狭くなるレンジパターンにあったビットコインは、トレンド転換の可能性もあったものの、市況感の悪さなども影響し、11月末から続くレジスタンスラインを抜けることができず、本日下方向への抜けが確認された。
6日夜から続いた攻防こそあったものの、売りの動きも強く、サポートラインを割ると大きな急落につながった。
問題となるのは、11月のビットコイン下落が下げ止まったラインを更に下回ったことで、明確なサポートラインが極端に少なくなってきたことにあり、より厳しい状況に追い込まれている点だろう。
来年年初に予定する複数の大手金融機関の動きや、直近でバイナンスなどが機関投資家向けアカウントサービスを始めた事など、今後の仮想通貨業界の足固めは整っていることから、長期的な見通しは立ち始めているものの、昨年末のICOブームの問題点が露呈したことや、コミュニティ分裂による混乱でPoWアルゴリズムに不信感が生まれた点、またこれらに関係するETHやBHCの下落が止まらない点などを踏まえても、現在の市況感の悪化は厳しいと言わざるを得ない。
一部の中国マイナーがビットコインを空売り
中国のニュースメディアの取材に応じた中国人マイナーJin Xin氏は、仮想通貨市場下落を受け、マイニング収益が厳しくなったことを背景に、ビットコインを空売り(ショート)している知り合いのマイナーが多くいる事、またショートをしていないと、おそらくマイニング活動を辞めざるを得なくなっていることを明らかにした。
Xin氏が話した重要点を以下の様にまとめた。
- 以前より中古のマシンを買い、損益分岐点を割ると部品を売却し、上昇相場が戻ってきたら、また買い戻すことを繰り返している。
- 中国における金融市場の空売りは2015年より禁止されているため、中国マイナーがショートすることは珍しく、現在中国のゴールドとシルバー市場は空売りが非常に多く記録されていることから、ベアマーケットが続く限り、ショートがしばらくマイナーの損失ヘッジとして利用されていく可能性が高い。
マイニング収益悪化によるマシン停止の影響で、現在ハッシュレートやデフィカルティは下落傾向にあるが、依然マイナーに厳しい状況にあり、マイナーによる通貨売却やヘッジショートによる影響が出てくる悪循環の状況にあることが明らかになった。
最重要ビットコインETFが最終可否判断日時まで延期
2つ目に挙げられるのはVanEck版ビットコインETF(現在最有力)の可否判断延期報道だ。
米国証券取引委員会(SEC)は米時間12月6日、VanEck版ビットコインETF(最有力とされている)の申請に対して、これ以上延期ができない最終日時まで可否判断を見合わせることを明らかにした。
延期の理由は、SECが審議・判断に十分な時間を設けるとしており、承認・非承認の最終判断期限は2019年2月27日となる予定だ(前後する可能性はある)。
仮に19年2月27日に非承認になった場合も、申請企業であるVanEck社は再審査を申し出ることは可能だが、これまでの事例上、再審査で否決された場合1から申請をし直す必要があり、事実上重要ETF申請が追い込まれた形だ。
しかし、これまでの専門家の予想でも、最終可否判断日時まで延期されることは予想されていたため、予想の範囲内ということが、粗方の見方であった。
ではなぜ下落を後押しした原因になったのか?という点だが、一つに今回の可否審査に携わったSECコミッショナーの一人Hester Peirce氏の弱気発言が背景にある。
今回のETF延期報道と同時期に、これまで強気のスタンスを保っていた彼女は突如、ビットコインETFの承認・非承認に関して、弱気と思われる不確実なスタンスを見せたことが明らかになった。
これまでETF申請に向けて積極的に動いてきた彼女だが、本日「ETFを待たないほうがいい」との発言を行い、市場に不安感が生まれた。
SEC Commissioner Hester Peirce on crypto ETF: "Don't hold your breath"
— Frank Chaparro (@fintechfrank) 2018年12月5日
It could come tomorrow or in 20 years, she said.
"I do caution people to not live or die on when a crypto or bitcoin ETF gets approved."
彼女は、仮想通貨業界の未来に高い期待感を持ち、仮想通貨コミュニティからは「クリプトママ」と呼ばれる仮想通貨推進派の中の一人であったことから、市場からの信頼性も高かったが、突然の弱気発言によって、市場のETF期待が薄れる原因になり、今回の下落にも影響した可能性がある。
以上3点が今回の下落の要因として挙げられるが、前述した通り、大手金融機関の動きなどから業界の足固めはできてきており、年末までの値動きが仮想通貨市場におけるターニングポイントとなりそうだ。
ビットコインSVが時価総額でABCを抜いた背景には何があるか?
ビットコインキャッシュのコミュニティ分裂によって、BitcoinABCとBitcoinSVが誕生し、ハッシュ戦争などが話題になったものの、多くの取引所がBitcoinABCをBCHティッカーに採用することで、BitcoinABCがBCH、BitcoinSVが分裂通貨として扱われることが、粗方スタンダードとなりつつあった。
しかし、ビットコインが急落した7日に相場が逆行高となったSVが、時価総額サイトでBitcoinCashとして明記されるBitcoinABCの価格を超え、時価総額で一時優位に立つ状況が確認された。
本記事執筆時(7日20時時点)でも下落を続けるBCHに対して、価格上昇を継続させるSVで更に差がつき始めており、時価総額サイトCoinMarketCap上では、BitcoinSVが5位、USDTを挟んでBitcoinCashが7位に位置している。
今回は、ビットコインキャッシュをめぐる両コミュニティの最新状況を追った。
BitcoinABCの問題点を指摘
BCHインフラプロジェクトの匿名開発者が、BitcoinABCの問題点を指摘、批判する内容をミディアムに投稿した。
同ミディアムでは、これまでビットコインキャッシュの開発に携わってきたことを踏まえ、ハードフォーク後に起きた状況を事細かに解説、BitcoinABCの問題点を指摘している。
まずビットコインキャッシュ分裂後、ハッシュ戦争にあったABCは、複数のアップデートを半独断的に実施、特にこれまでも問題視されていた「rolling 10 block checkpoints」の実装を批判し、非中央集権性に反してしまった事を問題視した。
BitcoinABCが、ビットコインキャッシュの確固たるクライアントになってしまったことで、許可制度がない(パーミッションレスな状況)独断的な存在になってしまったことを危惧した。
特にこのパーミッションレスの状況下で、新たな機能を続々と追加できる点は、安全性とスケールで定義されるビットコインにおいて、PoWの概念を無視してしまっていると言及した。
今回のハッシュ戦争を経て、BCHのブランドを獲得したABCは、開発側から見ても中央集権的になってしまったという指摘が行われた形だ。
Bitmainとロジャー・バー(BitcoinABC派)に対する訴訟について
複数メディアの報道によると、米フロリダ州のマイアミ市に本社を置くブロックチェーン企業United America Corporationが本日、仮想通貨マイニング最大手企業BitmainとCEOのジハン・ウー氏やビットコインキャッシュの提唱者ロジャー・バー氏、米仮想通貨取引所のCEOジェシー・パウエル氏等、ビットコインキャッシュの関連企業・個人に対し、フロリダの連邦裁判所にて訴訟を起こしたことが判明した。
訴訟文では、原告側のUnited America Corporation社がビットコインキャッシュ派のキープレイヤーが独断でビットコイン初期からのコミュニティ規範を破った影響で受けた損失額の賠償を請求している。
なお、今回の訴訟に関与していると訴訟で召喚状を受けた団体・グループは以下の通りだ。
- ビットメイン
- ビットメインテクノロジー
- ジハン・ウー(ビットメイン社CEO)
- Bitcoin.com(企業名:セイント・ビッツ)
- クラーケン(企業名:ペイフォワード・ベンチャーズ)
- Jesse Powell(クラーケンCEO)
- Amaury Sachet(ビットコインABC開発者)
- Jason B. Cox(ビットコインABC開発者)
- Shammah Chancellor(ビットコインABC開発者)
非中央集権が取り柄である仮想通貨、またビットコイン(ビットコインキャッシュ)において、被告人となった企業やグループが結託してネットワークを支配することは許せないとして今回の訴訟に至ったと説明している。
15日に発生したビットコインキャッシュのハードフォーク後、ビットコインABC側は人為的にハッシュレートを底上げして、いわゆるハッシュ戦争に勝とうとしたと主張する原告はCoin Danceに掲載されているハッシュレートチャート参照に、最低でも8度に渡り異常なレートで上昇した事例を挙げた。
CoinGeek社CEOもビットコインABC側の訴訟について言及
また今回のビットコインABC側に対する訴訟に関して、ビットコインSV派の中心人物の一人であるCalvin Ayre氏は以下のようなツイートを発信している。
I actually don't even have time to dig into this but anyone else who is interested might want to read all this crap. I have been clear all along that hash slamming was cheating and is likely illegal so this is no surprise:https://t.co/w4o9KRntTp
— Calvin Ayre (@CalvinAyre) 2018年12月7日
自分は時間が無いが、興味があればはこちらを読んでみるといい。
初めから私は「ハッシュ・スラミング」は狡く、恐らく違法である為、今回の訴訟は驚きではない。
ここでCoinGeek社のCEOであるAyre氏が紹介したサイトにはUnited American Corpが起こした訴訟や背景を入念に説明する資料が掲載されている。
サイト内には上述した訴訟の書類の他、ビットコインABC側が11月15日のハードフォーク後にハッシュパワーを釣り上げ、非中央集権に必須なコミュニティの了承を得ずアップデートを行なった行為を指摘している。
ビットコインABC側はハードフォーク後に通知を行わず、独断で 18.0 アップデートでリプレイプロテクションを導入した。
仮想通貨(ブロックチェーン)関連株
日経平均株価は、4営業日ぶりの上昇。短期的な割安感から買い戻しが入った。
日本市場は177円高と自律反発の範疇だが、米国市場では一時-785ドル付近の暴落から急反発して下げ幅を縮めるなど、一服している。
アナリストの間では、米中貿易摩擦に関する通商問題が、引き続き燻るのではないかと予想されている。
また、ビットコインが40万円台を明確に割り込み年初来安値を更新したことで、仮想通貨(ブロックチェーン)関連株にも波及することが予想されたが、日経の反発に合わせて多くの銘柄が微反発している。
直近で売られ過ぎ水準にあったGMO(9449)が3.01%高となった一方、マネーフォワード(3994)は続落した。
マネーフォワードは、公募増資で90億円調達し、調達資金は法人向けビジネスの強化やさらなるM&A(合併・買収)に向けた財務基盤の強化などに充てるとしており、来春の開設を目指す「仮想通貨取引所」の運営・展開も視野にあると考えられる。
新たに発行する株式は最大250万株で、発行済み株式数は13%増えることで、投資家に希薄化を嫌気された。
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— CoinPost -仮想通貨情報サイト- (@coin_post) 2018年10月12日
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