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ライセンス更新の審査で発覚
韓国の金融委員会(FSC)は、70万件を超える顧客確認義務(KYC)違反が発覚したことを受け、同国最大の暗号資産(仮想通貨)取引所Upbitに重い制裁を科す予定だ。
The Korea Timesの報道によると、金融当局は審査を間もなく終了し、制裁内容を決定する。KYC義務違反に対しては、1件につき最大1億ウォン(約1,100万円)の罰金が科される可能性があり、その行方に大きな関心が集まっている。また、最長6ヶ月の営業停止の可能性も考えられるという。
UpbitによるKYC違反は、ライセンス更新の審査の過程で明らかになった。韓国では特定金融取引情報法(特金法)により、仮想通貨事業者は3年ごとにライセンスを更新しなくてはならない。
Upbitは昨年10月に期限切れを迎えるライセンスの更新申請を行い、FSCが昨年8月末から現場検査を開始。すると、身分証明書上の名前や登録番号が不鮮明で本人確認が適切に行われていないにもかかわらず、口座が開設されていたケースなどが確認された。その数は70万件以上と膨大だ。
Upbitのライセンス更新手続きは、現在も審査中となっており、FSCの判断が待たれるところだ。
規制への対応
韓国では2018年1月以降、実名口座を通じた取引のみを許可する規制が導入され、すべての仮想通貨取引所に対してKYCとマネーロンダリング対策(AML)の厳格な遵守が義務付けられている。
AMLおよびテロ資金対策規制を担当するFSCの金融情報分析院(FIU)は1月9日、不適切なKYC手続きにより開設された口座が、マネーロンダリングや犯罪に悪用される可能性があるとして、Upbitに制裁に関する通知を発行。罰金に加え、新規ユーザー登録の一時停止や制限など、運用上の制限が検討されている。
2017年に創設されたUpbitは、仮想通貨投資家が多い韓国で、約70%のマーケットシェアを誇る最大の取引所。2021年に改定された仮想通貨規制の下、最初に登録に成功したこともあり、これまでUpbitはコンプライアンスの取り組みに優れている取引所の一つとみなされてきた。
Upbitは現在、市場優位性や不公正なビジネス手法に関しても、独占禁止法の捜査も受けているとThe Korea Timesは報じている。
関連:韓国大手仮想通貨取引所Upbit、KYC義務違反で新規ユーザー登録を制限へ=報道
規制のバランス
FSCはすでにKorbitとGOPAX取引所の現場検査を開始しており、BithumbとCoinoneも調査の対象となっている。
韓国当局は、特に昨年7月に仮想通貨利用者保護法が施行されて以来、仮想通貨規制を強化しており、多くの取引所は、コンプライアンス要件への対応にさらなる圧力がかかることを予想している。
こうした動きと並行して、FSCは8年間施行されてきた法人による仮想通貨取引の禁止を解除する計画を明らかにした。
FSCは、仮想通貨利用者保護法の施行により、利用者保護のための制度基盤が整ったこと、海外主要国における法人の市場参加などの市場環境の変化をその主な理由として挙げた。
2月13日に発表された新たな方針によると、FSCは今年上半期に一部の法人・機関に「実名口座」開設を許可する予定だ。
下半期には、リスク許容性のある一部の機関投資家による、実名口座での仮想通貨取引のパイロットテストが開始される。対象は金融企業を除く上場企業および専門投資家として登録している法人で、約3,500社になるという。
FSCは他の関連機関と連携し、「法人の仮想通貨市場参加ロードマップ」を履行するため、内部統制基準や売買に関するガイドラインなどを迅速に設定する。また仮想通貨事業者や業界専門家など、市場とのコミュニケーションも強化し、法人参加が円滑に行えるよう支援していく予定だと述べた。
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